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田んぼ作っぺ!  作者: 樹本 茂
23/40

23 処刑

 次の日の夜明け前、皆の衆5名と涼香殿を連れ、手際よく磔柱を俺達は代官所の門の前5m、陸前浜街道のど真ん中に立ててやった。その柱には白の死に装束を着た俺が縛られ、首から、『松井村の用水路工事が許可されないのでは死ぬよりほかは無い。どうせ後から死ぬのなら、いつ死んでも同じ。山縣様、さあ、一思いにやってください』


デカデカと書いた看板を晒して、脇に二名、槍を待たせて立っている。


「何をしておるのだ!!」


見て見ぬふりをする代官所の門に入って行く奴らの中にあって、そいつは、あの小役人は、顔を赤くして頭の上の方から、かなぎり声をあげて、俺達の前に駆け寄ってきた。


「この通り、我らの村の意思をあなた様にお見せしておるのです」


涼香殿がしれっと言い放った。

初対面のくせに俺の言っていた特徴から、そいつがその小役人だと涼香殿は察したようで、言い放って口元に少し笑みを漏らしている。俺の言った小役人ぶりがあまりに的を得ていたので腹の中で大爆笑中なのであろう。この妹殿なら、そんなところだ。


「あなた様は、ご自身の才覚が、村の500名以上の命運を握っていると理解しておいでなのか! それを知った上でやっているのなら、こうして磔柱、500本を用意して、あなた様のお宅の前で我ら全員、死ぬ覚悟! 知ってか知らずか返答願います!!」


涼香殿の通る高い声が朝の街道に響き渡り、門の前には数十人の代官所の者と街道を歩いていた野次馬がとりまいて、涼香殿の動きと磔柱の前で小刻みに震える小役人の動きに注目が集まる中、野次馬の中を分け入ってきた男が、


「お嬢さん、この喧嘩、私が受けましょう。どうか、槍をお納め願いませんか?」


片手を上げて悠然と凍り付く場に割って入って来た。


喧嘩か……喧嘩両成敗。一方が悪者にならぬように、あえてそんな言い方を選んでおられるのか?高位のお方のように見受けられる。


そして、涼香殿は、いつの間にか槍装備していたよ。桃色の小袖を着た、可憐な容姿とは裏腹の知恵者はいつの間にか最適な機会を狙って、この場の主役に躍り出ていた。


その場が自分に傾いたのを確信した涼香殿は、柱に括り付けられた俺の方にクルリと向き直ると、嬉しそうに良い笑顔を見せていた。


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