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8 最悪な山と災厄なイノシシ

のぼら山における鉄則。それは、絶対に山道の上を歩かないことだ!


俺は同じ過ちを絶対に繰り返さない。これにはロートン店長高木も太鼓判を押している。

1度のミスは誰にだってある。それは仕方のないこと。大事なのはそのミスから学んで次に生かせるかどうかだ。これは俺がコンビニ店員として身をもって知ったことである。


のぼら山、初見殺しもいいところだ。事前情報なしでこの山に騙されない者などいないはずだ。絶対!!!

そしてこの山は登らせる気がないだけでなく、下らせる気もないというタチの悪さがある。


だが!


トリックが分かってしまえばいとも簡単な話である。

そう!山道だけ通らなければもう攻略したも同然なのだ。


山道から茂みへ1歩踏み出してみる。何も起こらない。

はぁぁ、まったく舐められたもんだ。この程度ではむしろ一度でも俺を騙せたことに称賛すべきである。


急がば回れ


この言葉の意味を俺は今まで理解していなかったが、まさにこの山のためにあるといっても過言ではない。

茂みが邪魔で進みにくいが問題ない。

俺は自信を持ってもう1歩踏み出したその時、足場が崩れて斜面を転がり落ちた。


運良く大木にぶつかって止まれたのだが、全身擦りむいた上に大木で背中を強打。

なんだこの体のそこかしこから滲み出てくるような痛みは。。。痛すぎて逆に痛いのか分からなくなりそうだ。

ていうか、夢なのに痛いのかよ。


大木がなければと思うとゾッとした。

とりあえずひと呼吸おこうと思った矢先、後頭部で鈍い音が響き渡った。


痛っってぇぇぇ。。。


頭に何かが当たった。後頭部を押さえながら手探りで辺りを触っていたら、そこにはゲンコツほどの大きさのドングリがあった。

俺が木にぶつかった衝撃で落ちてきたのだろう。泣きっ面にドングリだ。。。

軽く叩いてみるとぎっしりと身の詰まったような音がする。石のように硬いドングリだ。むしろこの程度の痛みで済んだのは幸いだったか。。。


こうなってしまったのは全て、俺の慢心が原因だ。勝手にこの山を攻略した気になって完全に舐めていた。。。

このドングリは俺の反省の証として持っておこう。破れていなかったポケットにドングリをしまった。ロートンの制服はかなり頑丈なんだなぁ。


この出来事で、なんだかどっと疲れを感じた気がする。転がり落ちたことではなく、これからどうするのかを考えて、だ。


この山の意地汚さは異常である。山道は通れないのに、そこを通らなくてもどんなトラップがあるか分からん。。。

最早、降りられるのかどうかすら疑わしい。


体以上に心をズタズタに砕かれているのだが、このまま動かずにいてもどうにもならないため、弱々しい足取りで歩みを進める。

地形は結構急峻である。ある意味平地よりは警戒して歩けるかもしれない。

もうどんなトラップがあっても不思議ではない。歩くだけでここまで注意を払うことになるとは。。。

ところどころ足を取られそうになる。これでは山道を進む方が良いのではないかと思いかねないが、それこそこの山の思惑にはまってしまうのだろう。もう騙されない!


しかし、今は完全に酔いが覚めたが、もしかすると茂みに入る前のときなら酔いの効果で草の幻に騙されず、普通に山道を通れたかもしれない。あくまで可能性だが。

それならはそれで腹立たしい。まじでこの山は嫌いだ。いつか消してやる。



どれほどの時間が経っただろうか。もう散々だ。。。

ちょうど足を置けそうなところに生えている弾力あるキノコ。踏むと捻挫しそうになる。あとは、見えにくいところにだけ張っている蔓。引っかけるためだけに存在しているとしか思えない。ホントこの山は性格悪いやつしかいないのか?


文句を垂れながらも着実に進む中、少しずつ目につくようになったものがある。大木に何かがぶつかったような跡があるのだ。それも進むにつれてだんだん増えてきている。なんなら折れている木が何本もある。。。まさか俺と同じような目に遭った先人たちのぶつかり跡か!?

そんなことを考えていたその時、少し下の方からガサガサと音がした。


人か!?と思わず見開いた目に映ったのは、、、


ワゴン車ぐらいのサイズの、金色に輝く牙を持ったイノシシだった。

こんなでかいイノシシが存在していいのか!?

こんなやつが突っ込んでくるようなことがあれば当然無事では済まないだろう。

俺は息を潜め、木と一体化するように気配を隠した


、、、はずだったがイノシシと目が合った。


あのイノシシは俺と同じように暗い中でもよく見えているとでも言うのか!?


あ。。。

俺は忘れていた。酔いはもう覚めているが、酒の臭いは残っているのだ。あのイノシシにとって見れば、目の前に立っているのと変わらないのだろう。。。


さてと、イノシシの次の動きが手に取るように分かるぞ!

距離は50mほどだろうか。なのに鼻息がフンフン聞こえる!ちょっとは落ち着いてくれよ。


ほらやっぱり走ってきたよ。。。

ドカドカ迫ってくるイノシシに突進される寸前、一か八かで俺は下に向かってジャンプした。

イノシシをギリギリでかわし、華麗に着地しようと足を伸ばした先には、例のキノコがあった。


あ、終わった。


キノコに足が乗るとトランポリンのように跳ね上がり、再び体勢を崩して斜面を転がり落ちた。激しいデジャブと痛みを感じる。

今度は大岩にぶつかって止まった。


あれ、痛いってなんだっけ?ここまでくると痛いということが何なのか分からなくなった。

ていうか、痛いというよりなんだか熱い。全身の傷口から熱でも発生しているのだろうか。結構、いやだいぶ熱い。何これ!?

イノシシはなんとか撒いたようだが、激しい熱が体全体を襲う。なんだか滅入ってきた。。。


もうこの夢、覚めていいですよ。。。

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