7 夢の世界へもう一度!
夢の続きを見てみたい。
今までにもそんな経験はある。どんな内容だったかなんて覚えていないけど。
しかし、今の俺の気持ちは今までに経験したそれとは比べ物にならないほど高まっている。
俺はおかしくなってしまったのか?もともとおかしいのか??
これほど何かに心を打たれたことはない。そもそも心を打たれることがなかったから今の生活に満足していたのだ。
感覚的にはたった数時間ほどの出来事が、俺の生きてきた人生全てを否定するかのようだ。
知らない方が良いこともある
その言葉はまさに今の俺だろうか。知らなければずっとこのまま特に不満もなく過ごせただろう。人は掴めないはずのものを掴めるかもと知ってしまうと、それまでと全く人が変わってしまうのだと分かった。
でも、知ってしまった以上は知らなかったままの俺より良くなりたいのだ。
1番厄介なのは「掴めるかも」が「掴めなかった」ときだが、その時はその時に考えよう。。。
とにかくあの世界にもう一度行ってみたい。
そのためのトリガーが寝ることなのは明白だ。だが、今は目がパッチリしている。。。
そりゃそうだ。さっきまで寝てたんだから。
とりあえず今腹が減っているが家に飯がない。バイト終わりに眠すぎてどこも寄らなかったからなぁ。
このままいても仕方がないから飯を買いに行こう。
部屋を出ると辺りはもう暗くなっている。いつもならバイトに行く景色だ。やや違和感を覚えながら、バイト先と反対方向にあるドラッグストアへと向かった。
ドラッグストアまでの道中で、すんなり寝るための方法を考えた結論が、悪魔の力を借りることだ。
ドラッグストアに入ると、悪魔達が調和を乱さず整列している。
マキシマムゼロ、マキ缶だ!
まさしく悪魔の飲み物というか悪魔そのものだ。俺は基本酒は飲まないが、夜中にマキ缶を買いに来る輩をたくさん見てきた。ウザ絡みしてくるやつもいれば、店先で酔いつぶれるやつもいる。
俺からすれば敵そのものだが利用する価値は十分ある。
悪魔とつまみをテキトーに買って店を後にした。
アパートまで普通にたどり着いた。当たり前に普通にたどり着くことが少し嬉しく感じる。何でもないことが幸せだったんだなぁ。
殺風景な部屋で黙々と悪魔を取り込む。
普段飲まないせいなのか、単純にマキ缶の実力なのか、半分も飲まないうちに顔が火照ってきた。
大学入学早々、何だかんだ飲む機会があったりするものだが、そもそもサークルやらに入っていなかったりしてまともに飲んだ記憶はない。
自分の酒の弱さを思うと、マキ缶を無駄買いしすぎた。すでに悪魔の手の内にあったということか。。。
コンビニより安いし、バイト先に顔出すのもなんか恥ずかしかったからドラッグストアにしたのだが、安さにつられついつい買いすぎたな。まるで宅飲みパーティーのような光景だ、、、俺には無縁の世界。
一体何本飲んだだろうか、、、何本も飲んではなかった。
だが酒が回り眠くなってきた気がする。すぐさま横になった。
眠気は間違いなくあるのだが、寝ることを少し躊躇っている自分がいる。先ほどまでは1秒でも早く寝たがっていたはずなのに。
目を閉じれば確実に眠れそうだが、まさか寝てしまったらもうこの世界に戻って来られないとでも思っているのか?
夢を見ようとしているだけなのにおかしな話である。
非日常すぎる世界に触れて、思考が歪んでしまったのかも。。。
目覚めれば当然、いつもの世界が待っているはずだ。それに向こうの世界に心を奪われているはず。
何か心残りでもあるのだろうか。。。マキ缶を片手にズキズキする頭で考える。
1つだけ見つかった。咲ちゃんだ!
もし向こうの世界から戻れなくなったら咲ちゃんと会えなくなる。もうそれくらいしか考えられない。自分でも情けなく感じる話だ。。。
つーか、そもそも俺は咲ちゃんの連絡先すら知らないのに何を図々しいことを思ってるんだ。何だか泣けてきた。。。
何回か同じシフトに入ったのに連絡先すら聞けないヘタレだよ俺は!!
今の状況も含め、こーゆー決断力のなさが俺の大嫌いなところだ。
あれ??
そういえば夢で最初にビンタされたような覚えがある。咲ちゃんっぽかった人に。咲ちゃんはそんなことする子に見えないから恐らく他人の空似だとは思うが。
そのあとの記憶が濃すぎるのであれだが、もしかすると向こうの世界でも良い出会いが待っているかもしれない!
そう考えたら気持ちがすっと軽くなった気がした。(チョロいな俺)
俺は仮定の想像に仮定を重ね、勝手に解釈して満足し目をつむった。
ズキズキしながらもゆっくりと意識が遠くなっていった。
瞼を開くと、そこには数時間前に見た山道の景色が広がっている。空は暗いのだが、はっきりと目に映っている。
本当に続きを見ることができたのだ!よっしゃあ!!!!!
身体中が髪の毛の先まで歓喜に打ち震えている!鳥肌が止まらなくてそろそろ鳥になりそうだ。
直後、強烈な頭痛と吐き気を催した。
どういうことだろう。まるで飲み過ぎたあとのようだ
。。。
飲み過ぎたあとだった!
でもそれは現実世界の話のはずだ。なんで引き継がれているんだよ。。。
そういえば伊藤の姿がない。前回の夢では伊藤の馬鹿車に乗っていたはずだがどうなっているのだろうか。夢が覚める前より時間が経っているのか?
前回の夢と似た別の世界に来たのか??
ふと自分の服を見てみると、やはりロートンの制服だった。
てか、夜であるはずが昼間と変わらないように目が見えているのは何でだ?これも信仰の力が働いているのだろうか?
とにかく、景色も服装も同じなら、同じ世界だと信じるしかないだろう。伊藤のいる村は山道を降りていく途中にあると言っていたはずだ。そこを目指して下山することにした。
もちろん山道は通らない。草ごときにこれ以上草生やさせるつもりはない。




