19 窃盗?いえ、違います。
異世界コンビニ生活を始めて早くも3日目だ。
「七光り」騒動後、俺の待遇は大分変わった。
なぜかつぼみとモンクは気を遣ってか、俺に定期的な休憩をちゃんと与えてくれる。深夜帯だけは、眠気を感じない俺が全て担っている。
というか、意識を失って以後、1度も眠れていない。日中の休憩時間に目をつむったりしてみたが、一切眠気を催さなかった。
ちなみにファミカは驚くほどすぐに客が来なくなったので実質ほとんど何もしていない。騒動の話題で、ついでに買い物されていた程度だったのだ。
飯についてはファミカの商品で賄っている。どうせ売れないからとモンクが許可してくれたのだ。つぼみは必ずモンクと銭湯へ行き、どこかで飯を食って帰ってくる。俺の銭湯代もモンクが出してくれているのだが、つぼみは飯も奢らせているようだ。
そして日に日につぼみの笑みが怪しさを帯びてきた。こいつは何を考えているのか。単に金づるを見つけたという感じなのか。
今は午後2時すぎだ。ちなみにこの世界にも時計はある。なんでも、特定非営利活動宗教法人「はとぽっぽ」が定めた時間を基準としているらしい。時差があっても時間表記は変わらないため、朝が0時となるところもあるそうだ。
そういえば、ファミカは俺が働き出してから1度も商品を補充していないな。モンクは面倒くさいからほとんどなくなってから補充していると言っていた。こいつはどこまでもコンビニを舐めてやがる。
そろそろ補充をと勧める前に、やたらニヤニヤしているつぼみがモンクに話しかけた。
「モンクさんはやっぱり商才あると思うの!この前だって凄い売上だったし!だからもう1度お父様と話してみるべきよ!モンクさんなら絶対跡を継がせてもらえるわ!」
聖女のような風格である。
「つぼみちゃんがそこまで言ってくれるならもう1度だけ親父に思いを伝えてみるよ!でっでも、もし親父が認めてくれて後継ぐ話になったらファミカは続けられないからな~」
「モンクさんの意志はすでに私が預かりました!モンクさんがいなくても頑張ってみせます!だからモンクさんも頑張ってくださいっ!」
屈託のない笑顔でつぼみは言う。まるで光のオーラでも纏っているようだ。
「つ、つぼみちゃんありがとう!優くんもありがとね!俺頑張ってみる!もしダメだったら、必ず戻ってくるよ!」
モンクは涙腺を緩ませながら街を去っていった。
つぼみは最後まで満面の笑みで見送っていた。
、、、
モンクの姿が見えなくなったところで、天使のような笑顔からいきなり真顔になったつぼみが言った。
「さぁ、とっとと荷車引いて街を出ましょ」
え、今何て言った!?
いや、言葉ははっきり聞き取れたが意味が理解出来なかったのだ。
「あれはもう用済みよ。ボンボンだから金づるになるかと思っていたけど、資金源の親と喧嘩した息子の財布は悲惨なものだった。ほとんど持ち金は使い切らしちゃったから仕方ないわ。」
とんでもねぇなコイツ!!
金づると思ってはいるだろうとは予想してたが、そこまであっさり切り捨てるとは。。。
見た目と雰囲気だけは美味そうなチョコケーキが、食ってみたらただのう○こだったぐらいの鬼畜さだ。
おそらくコイツは最初からそのつもりだったかもしれない。ファミカでのバイト代は7日ごと支払いだと言われたが、つぼみは気にしていなかった。コイツのことだから働く前から前金寄越せぐらいのことを言いそうなのにと思っていたが、そもそもモンクから搾り取るつもりだったんだろう。
「詐欺でも窃盗でもない。ファミカをこの場所で続けるなんて一言も言ってない。何か問題ある?」
つぼみの方が1枚上手だった。。。頭のキレるゴミだ。
「行商しながらウリボ村へ向かえるわ。行商なら身分に変な疑いをかけられることもないし好都合。何か反論は?」
何も言えなかった。。。ま、まぁモンクとバッタリ出会う機会だってあるかもしれないし裏切ってはないことにしよう。
つぼみの悪知恵により、一旦の目的であった服と金(正確には金稼ぎの手段)を得た。失ったものといえばモンクだけなので、つまり何も失わず得るものを得た。
ジェー教の黒服達からは完全に撒けたようで、比較的安全にウリボ村を目指せそうだ。
本人には言えないというか言うべきではないが、良い仕事をしたな。。。
ただし重要なのはここからだ!
どっちがこの荷車を動かすか。この荷車は馬使って運ぶサイズだ。だがしかし、俺は普通に動かせる。そして、おそらくつぼみも動かせる。コイツは華奢な見た目とは裏腹に、相当足腰が強い。
「どっちが動かすかじゃんけんで決めるぞ!」
つぼみは完全に俺にやらせるつもりだったらしく意表を突かれたという表情だ。俺の思考を察したのか、大人しく観念したようだ。
じゃんけん、、、
俺の勝ちである。
ブツブツ言っていたつぼみだったが、諦めて進みだした。
普通に進むことについては驚きはない。そんなことよりも、つぼみを馬車馬のように使い、1人荷車の中で景色を眺める。なんと清々しい気分だ!
感傷に浸っていると、何やら声が聞こえてきた。ちょっと覗いてみる。
「ねぇ、あの子奴隷かしら?」
「可哀想に。あんな子に馬車引かせるなんて。。。」
「あんな苦しそうなのに。主はなんてゲス野郎なのかしら」
やべぇ、とんでもねぇ場面になってる!
つぼみのやつ、対して辛いわけじゃないはずなのにめちゃくちゃ辛そうな表情でゆっくり進んでいる。。。
「おい!わざと遅くするな!お前ならこんなの辛くねぇだろ!」
馬に鞭をいれるように足で背中を小突いてみるが一切効果がない。
待てよ。この絵面と発言、傍から見たらより奴隷を冷遇しているように見えるのでは?
。。。
結局俺が荷車を引くことにした。さすがに風評被害が心配だからな。これはしてやられた。つぼみは満面の笑みである。
気づかぬうちにファミカの看板はなくなっていた。つぼみがとっくに片付けたようだ。つぼみの中ではファミカは続けるつもりがなく、雑貨はテキトーに売って、食品は自分達の飯にするとのこと。ウリボ村なら通貨自体ほとんどいらないし、必要になれば御者でもやればいいだろうという話だ、
ホントにコイツはバカだが頭は回る。バカのくせに。
構成再考のためしばらく更新できないと思います。
大幅改変含め検討中です。




