16 商人の街
林は山道に比べ、かなり進みやすい。というか、あの山がゴミすぎただけだ。
。。。結構長いな。
それにしてもつぼみは不思議なくらいスタスタついてくる。てっきりこの性格なら疲れた~とか言って駄々こねてくるかと思っていた(ちょっと期待してた。ちょっとだけね)。
走るのもやたら速かったけど太もも隆々って感じでもないんだよな~。性格以外は完璧なんだよな~性格以外は。
ほんとは、強がってたのが急に弱くなるみたいなギャップや、ドジったところを助ける的なイベントがあって然るべきなんだよ!つくづく俺の理想を裏切ってくるのがつぼみである。
ところで、とにかく金を調達せねばと思っていたが、そもそもこの国?世界?の通貨はどうなっているのだろうか??
つぼみに聞いてみた。
「え。まだごっこ遊び継続中だったの?それとも記憶喪失にでもなってんの?まぁどうでもいいけど」
どうでもいいならいちいち言うなよ!
「まぁそういうことにしといてくれ。」
俺は続きを促した。いちいち目くじら立ててたら話進まないしな。。。
つぼみいわく、この世界は街等がそれぞれ独立してはいるものの、宗教連合と呼ばれる国連的なものがあり、利便性向上のため共通通貨というのが導入されている。ただし、小さな村等では共通通貨を使う機会がほとんどないため、独自の手段で生活しているらしい。つぼみのいるウリボ村ではほとんどが物々交換で成り立っているそうだ。
「ちなみにお金は、銅貨→銀貨→ユキチ→金貨→大金貨よ!」
ちょい待て!どう考えても仲間外れな通貨名混ざってるだろ!確実に浮いてんじゃん!
やべぇユキチがすごく気になる。ユキチめっちゃほしい。あ、現実でも諭吉は欲しかったな。
つぼみが銅貨だけ少し持っていたので見せてもらうと、大きさは10円玉ほどで顔のようなデザインが刻まれている。頭を抱えているように見えるが、のっぺらぼうになっていて何だか不気味だ。やっぱりユキチがどうなっているのか気になるな。何としてもユキチがほしい。
さて、通貨に思いを馳せている間に林の終わりが見えてきた。
中々に長い道のりだった。疲れはほとんどない。なんせ俺はイノシシを食ってからスタミナお化けになったのだ。
つぼみに目をやるとほとんど息が上がっていない!なんなんだこのスタミナバカは。
どうやら俺らは文無し戦闘力無しスタミナ半端なしというヘンテコパーティーのようだ。
林を出ると、少し先に街があった!林を突っ切って正解だったようだ。グッジョブ俺!
後ろを振り返ると岸壁を伴った広大なのぼら山がどっしりと構えている。どっかの誰かさんの態度のように無駄にでかい山だ。忌々しい。
黒服達の気配はない。ていうかそもそも気配というものがほとんど感じられなくなった。なんでだろ。
まぁ考えてもどうせ分かんないし、せっかく町を見つけたのだからそこを目指そう!!!
ん?
なんかつぼみがやたら冷静だ。俺だけテンション上がってバカみたいじゃん。
「ガキかよ」
冷めた目のつぼみから鋭い言葉の矢が放たれた。
ま、まぁ気を取り直して街に行こう!
念のため確認したが、ここはつぼみがジェー教に騙された街ではないらしい。てか、つぼみがいた街がどこなのか知らない。聞くとつぼみは嫌々そうに教えてくれた。
「夢の街・フゾック」
フゾックって、、、もうほぼ確でそういう街じゃん!完全に自業自得としか思えない。
「あからさまに怪しいのに騙されたお前も悪い!」
言えば絶対ぶちギレると分かってて言った。さっきバカにされた仕返しなのだ!
「うっさい」
え。。。俺の予想に反して、つぼみは小さく呟いた。
なんか、、、てっきり息つく間もなく悪口を叩き込んでくるかと思っていたから、この反応されると急に罪悪感が。。。
なんか俺めっちゃ意地悪なやつみたいじゃん。やだこれ。
まさかここまで計算通りだったりするのか!?それだったらまじで恐ろしいよこの子、、、って、そんなことなさそうだよなぁ~。。。
謝るのも何か違う気もするしな~。決して意地張ってるわけではない!と信じたい。
「まっ、まぁとりあえずこの街に入ってみようぜ?もし怪しい街ならすぐ出ていけばいいし!」
自分の顔を知る手段がないが、きっと引きつった笑顔になっているだろう。
つぼみはホントに色々と読めない。
とりあえず金を手に入れたら何か奢って謝罪に代えよう。。。
街に近づいていくと看板が見えてきた。
ネイギル
この街の名前だ。明らかに低いテンションで歩くつぼみとの空気感に耐えかねて、俺は話しかけた。
「つぼみは、その~、、、この街に来たことはある?」
「ない」
めっちゃ即答だよ。。。やっぱり機嫌悪いよね。謝る?謝る??
「けど、名前は聞いたことある。商人の街・ネイギル。特定の宗教はなく、商人達が集まった活気ある街だったはず。」
ちゃんと教えてくれた!ますます読めん。
どうやら通行税的なものも取られないらしい。良い街見つけたな。
服を調達するために金はいるが、ちゃんと働いて稼ぐべきだ。その点をつぼみにはきちんと言っておく必要がある。
「詐欺、窃盗、恐喝はなしだぞ!」
「はぁ?人を勝手に犯罪者予備軍にしないで!覗きの犯罪者が!」
やっと普通のつぼみらしくしてくれた!!!
って、なんで喜んでるんだよ。でもなんか安心したわ。俺の罪悪感が一気に解消された!
街の雰囲気は中世的なのを期待していたが、アジア系の国の屋台街みたいな感じだ。行ったことないからよく分かんないけど。
歩いているとそこかしこから賑やかな声が聞こえてくる。
「いらっしゃいいらっしゃい!今日はりんごが安いよー!」
「2つ購入で1つおまけだ!持ってけドロボー!」
「お姉さん、ちょっとお茶してかない?」
おい、ナチュラルな感じでナンパ師混ざってんな。
働き口を探したいが、求人募集的なのはあるだろうか??
キョロキョロ辺りを見回していたら、つぼみが何かに気付いたようだ。
つぼみは路地の一角に貼ってある紙の前にいる。
「ねぇ!これなんかすごく稼げそうじゃない!?」
えーと何々、依頼者へ荷物を渡すだけの簡単な仕事です、1日ユキチ5枚~。。。
って、おい!これ絶対ダメなやつだろ!反省しねぇのか!バカなの!?バカだろ!!




