エピローグ
いよいよです。
アシムは狡猾な奴であった。
国王の獣人受け入れを利用し、半魔獣化した兵士達の隠れ蓑にしたのだ。
配下のカッツェ、ドルバーナを使い、実験に適した人達を集め、ハンターを組織し魔獣を集めた。
配下二人の隠れ家となっていた雑貨屋は、跡形もなく消え、二人の行方も不明である。こちらは引き続き捜索を行いたいと思う。
旅の冒険者まどか達一行により、アシムの企みは潰えたが、個人で国を凌駕する兵力を集めたこの者に、多少なりとも才を認めざるを得ないが、願わくばその才は、国家の発展にこそ使われて欲しく思う……
帝都ギルドマスターの手記には、そう綴られている。眉間を揉みほぐしながらギルマスは思う。
(まどかとは何者なのでしょうね……帝国で英雄と言われる強者冒険者。聖女と言われる癒し手。私には、全てを見通す賢者にも見える。
その全てが彼女を表す言葉でしょうが、その言葉が彼女の全てでは無い……)
そこまで考え、ギルマスは思考を止めた。その先に行き着く答えが、余りにも馬鹿げていたから……
「有り得ませんね」
まどかは漢女達の行方を追ったり、プラドによって囚われていた女性達の解放や、裏町の捜索などを片付けてから旅立つ予定だった。
が、漢女の店はもぬけの殻、女性達はゼロノスが、裏町はギルドが担当したため、やることが無い。
「ねぇまどか。だからってわんにゃんサーカスとスイーツ巡りって、なんか違くない?」
「だったらメグミは留守番してれば良かったのに」
「もう、私だって行きたいに決まってるでしょ!」
「なんだかんだで見れなかったからな。最終日間に合って良かったなぁ、らっく」
「やっと見れるにぃ!」
「またそうやってらっくちゃんを……それより、アイザック王の戴冠式、行かなくていいの?」
「私はこの国の人間じゃないし」
「でも、まどかの助言で実現したようなもんじゃない」
「それこそダメな理由だよ。貴族院の連中なんか、私が王を洗脳して、乗っ取りを企んでいる!とか言い出すし、これ以上関わらない方がいい」
「そっかぁ……」
「それよりさ、サーカスの人達、次は神国に向かうらしいよ。乗っけてって貰おうよ!」
「前から思ってたけど、まどかって楽しむ事に関しては天才だね」
「欲望に正直だと言ってくれ」
「普通逆だから。私一応褒めたから」
買い出しに出ていたジョーカー達と合流し、ハンスの戻りを待つ一行。
「まどか様ー!」
駆け戻るハンス。なぜかドヤ顔である。
「やったっす!サーカスの団長さん、一緒に連れてってくれるっすよ!」
「え、なに?私に言う前に、先に交渉してたの?まどか」
「まぁその……道中の護衛とか、色々どうかな?って。それに団長さんは操獣士だし、らっくの修行にもなるし……」
「だからまどかは、抜け目ないって言われるのよ」
「褒め言葉だよね?」
「度が過ぎると、あざといって言われるよ?嫌われるタイプだから」
「え、あ、うん。自重します」
「まぁまぁ、メグミお嬢様、それもまどかお嬢様のスキルの一つでございますよ」
「まぁ、私も楽しいし、助かってるけど……」
「そうだよメグミ。最近小言が増えたんじゃない?そのうちオカンとか、小姑って言われるよ」
「酷っ!」
「なんだかんだ楽しいっすね!家族って感じっす!」
「みんな家族にぃ!」
一同は皆頷いた。たぶんこういう時間を守る為に戦っているのだろう……とまどかは思う。これから向かうエレファス聖教国は、今までとは違う。強大な敵が、既に待ち構えているのだ。だからこそ今を大切にしたい……そう思うまどかだった。
これにて王国編、終了でございます。
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