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人でも魔物でも無いモノ



「おのれぇっ!、さっきの爆発で封印が……」


「おい、ニンゲン!勘違いしているようだから教えてやる。まず一つ、お前は私を封印したつもりのようだが、あの程度、玩具に等しい。

私はお前が欲望に歪む姿が、面白そうだったので見ていただけだ。出ようと思えば何時でも出て来れたのだ。」


「ば、馬鹿な!最上級の対魔封印術だぞ!」


「もう一つ。対魔封印術など効くものか。私は魔族では無いからな。勿論、人でも無い。私は混沌の神の使徒、アニマ様だぁ」


そういうと国王は、背中に灰銀色の翼を広げた。天使と呼ぶに相応しい神々しさ、アシムは心奪われそうになる。


「か、神の使徒、だと?」


「お前達の言うところの亜神。神に準ずるものだ。良いぞ良いぞ。絶望しろ。それが神の供物となろう」


「う、煩い!邪神の使徒の思い通りになどなるものか!」


「邪神とは罰当たりな。混沌を司る神は邪神では無いぞ!混沌とは刺激だ。退屈な停滞した人の世に刺激を与え、進化と文明を齎す。仮にニンゲン共が滅ぶのであれば、生きる価値の無い、矮小な種であった……それだけのことよ」


「わ、矮小……」


「そう言えばこの身は、ニンゲンの長、国王であったな。喜べ!今から加護を与える。王権発動!」


それは絶対支配のスキル。今より王国に属する者は、アニマの指示には絶対服従となる。そしてアニマの下した命令は……


『敵対する者は全て殺せ』


沈静化しつつあった戦場に、再び純粋な殺意が湧き上がった。




「今の爆発は?」

「水晶の樹海……か?」


帝国貴族達は状況判断に迷っていた。らっくは直感的に、ジョーカーは状況分析により同じ答えに辿り着く。


……まどかがゼロと共に水晶の森へ転移し、ゼロのマナが圧縮爆発した……


「たっちゃん!」

「らっく様、大丈夫でございます。まどかお嬢様はきっと……」


ジョーカーはらっくを抑えながら、自分が出した答えに頭を振る。

水晶の森に漂う霞はマナ阻害の効果があり、それが樹海と呼ばれる所以でもある。多彩な術を操り、底無しのマナを有するまどか。その術を封じられ、あまつさえ街を消し去る程の爆発に呑まれたのだ。

仮に命を取り留めたとしても、治癒や回復が出来ない。転移術も一方通行であろう。まどかが無事生還する確率は、限りなく低いのだ。


「「信じましょう」」

「まどかお嬢様は、信ずるに価する主でございますれば」


「そ……そうね。私も信じるって、決めたもん」


「「「メグミお嬢様!」」もうよろしいのですか?」


「平気よ、ジョーカーさん。らっくちゃん、きっとまどかは帰ってくる。らっくちゃんを置いて行くもんですか!」


「……そうだにぃ。帰ってくるにぃ!そんでいっぱい褒めてもらうにぃ!」


「そのためには、ここをなんとかしないとね」


「あいさー!なんか気持ち悪いが飛んできたにぃ。やっつけるにぃ!」


メグミが立ち上がる。心力も少し回復したが、マナは枯渇状態。


「でも私には、ジーナがいる!」


メグミに使命を託し、弓に宿ったエルフ、ジーニアス。メグミに応えるように、輝きを放つエルフィンボウ!矢を番え、意識を集中する。


(意志なき魔物は、冒険者のみなさんに任せても大丈夫でしょう。ならば私達が狙うのは、リーダー格の十体)


「エクスキュージョンアロー!」


それはジーニアスが得意とした弓術の奥義。メグミがこちらの世界で、初めて体得した技である。一条の光となり、全てを貫く必殺の矢!

実験体の魔人が二体、まとめて貫かれた。

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