巨人VS巨人
王国軍も帝国軍も、一旦引いて戦況を見つめている。
下手に足を踏み入れれば、巻き添えで肉片すら残らぬ程の暴威。正に神話級、元の世界で言うなら、怪獣大戦争かウルトラな人の戦いである。
まぁタイタンが顕現出来るのは、メグミの心力が尽きるまでの間なので、後者の方に近いのだが。
手四つの力比べは互角。今は拳のぶつけ合いになっている。だがタイタンがゴーレムの拳を打ち砕いても、すぐに再生してしまう。
「ならば頭だ」
タイタンが地面を打つ。地響きと共に走る亀裂に、ゴーレムが足を取られる!腰まで埋まったゴーレムの頭をタイタンの剛拳で打ち砕く!
だらりと下がるゴーレムの腕。トドメを刺そうと近付くタイタン。まるで見えているかのようにタイタンの脚に抱きつくゴーレム!そのまま抱え上げ、地面に強か打ち付ける!
亀裂から這い上がるゴーレム、頭は既に再生している……
「このままではメグミお嬢様が時間切れで……」
「相手も気付いているのでしょうか?」
見守るメイド達。ジョーカーはタイタンの動きから目を逸らさず、
「そろそろですな」
不利に見える現状も、ジョーカーには違って見えるようだ。その表情は、既に勝敗は決したと言っている。
ゆるりと立ち上がったタイタン。メグミに指示を出す。
『メグミよ。我が棍棒に心力を注ぎ込むのだ』
怒涛の殴り合いへと様相を変えるタイタンとゴーレム。拳のぶつかる衝撃が、落雷のような音を出す。一旦距離を置き、砲弾のような体当たりを見せるゴーレム!正面から受け止めるタイタン。そのまま両拳を背中に叩き付ける!
「ゆくぞ!」
腰の棍棒を両手で持ち、地に伏したゴーレムに叩き付ける!
「大地の怒り!」
本来であれば大地を揺るがし、天変地異を起こす波動。その全てが、ゴーレムの身体を捉えた!その波動はコアに達し、全ての結合を破壊する!
爆散するゴーレム。コアに内包していたマナが溢れ、一気に破裂したのだ!
「いけません!チェリー、コバルト、結界を」
瞬時に張り巡らす次元結界。通常の結界では防ぎきれない圧力である。三人は荒れ狂うマナを 空間を切り取る事で防いだ。
「メグミお嬢様!」
タイタンの身体でギリギリ耐えきったメグミだが、相当のダメージを受けたようだ。光の粒子となり消えたタイタンの中から、崩れるように倒れたメグミ。
バハムートに次ぐ力を持つ精霊タイタン。その顕現により心力も尽き、肉体的にも損傷が酷い。ジョーカーは急いでメグミを抱え、ジャンの元へ飛ぶ。
「至急治癒と回復を」
ジャンは配下の術師を呼び、数人がかりで治療にあたらせる。
「救国の英雄じゃ!死なせてはならぬ!ゴルメス様!」
「うむ」
「この者の治療の間、何人も近付けてはなりませんぞ!」
「委細承知!皆に告ぐ!蹴散らせ!この機を与えてくれた者に報いよ!」
震えているのは大地か、はたまた魂か。それが雄叫びとなり、物理的な圧力を感じる程に大気を震わせる。
兵士は護る為、騎士はその誇りにかけて、冒険者は仲間の為に……思いは違えども、全ての者が目に焼き付けた少女の奮戦。
「少女に報いる!」「必ず守り抜く!」「今度は俺達の番だ!」「理屈じゃねぇんだよ!」
呆然としていたアシムも、鬼気迫る帝国軍にハッと我に返る。
「皆の者!気圧されるな!」
実験体の魔人達も吼える!その声にようやく呪縛から解き放たれたが如く、王国兵も雄叫びを上げたのだった。




