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激突



銅鑼を打ち鳴らし、陣形を整える王国軍。

万を超える軍勢が丘の上に居並び、先にある帝都の防壁を見下ろしている。数の暴力による囲い込みと殲滅なのだろう。核激魔術に対する備えの結界も、二重三重に張り巡らされている。


「なるほどの。情け容赦無しじゃな」


ジャンを筆頭に、魔導師達が補助魔術を全隊に重ね掛けする。肉体強化や知覚強化、魔術防御がメインである。


「男爵様、どのように行かれる?」


「まずは敵方の陣形を崩したい」


「なるほど。では中央を行きなされ」


「相手は丘の上、面で来られては、すぐに囲まれるであろう?」


「なぁに、地形が不利ならば、有利な地形を作るまでじゃ。魔術も使い方じゃよ」


「ほう。ではお手並み拝見」


ゴルメスは馬に跨り、槍を頭上に掲げる。


「一番槍、参る!」


馬の腹を蹴り、一気呵成に駆ける。ジャンが杖を掲げ、短い詠唱を唱えると、ふわりと宙に浮き、ゴルメスの横についた。続く魔導師達も両脇に並び、馬の速度に負けぬ速さで、滑るように進む。


「全く、男爵様は枷が外れて自由だな!騎馬隊続け!」


騎士団長ロイドが、半ば呆れながらも、それでこそ自分の憧れた武人ゴルメスだと、獰猛な笑みを浮かべ追従する。こちらの数は他貴族の軍を合わせても五千に満たない。だがゴルメスを見ていると、負ける気がしないのだ。


「せいぜい暴れますか」




丘の上、王国軍騎士団長は、帝国の無謀な突撃を鼻で笑った。


「高々千にも満たぬ兵で突撃だと?帝国が弱っておるのは聞いていたが、これほどとはな……第一から第五部隊、突撃!面で推し潰せ!」


雄叫びを上げ、一気に駆ける王国軍。丘の斜面を利用し、ぐんぐんとその速度を上げる!


「やはり来おったか。魔導師共、手筈通りに」


ジャンの合図で、ゴルメスと横一線だった魔導師達が更に加速する。


「正面からぶつかる気か?」


「ぶつかるのは我らでは無いぞい」


丘の麓まで移動した魔導師達が詠唱を始める。王国軍が迫る中、一斉に術を発動した。


「「「ストーンウォール!」」」


突如聳える五メートル程の石壁。勢いの止まらぬ王国軍が、次々と激突する!馬を止めようとするも、後続に押し潰され、或いは転倒して折り重なり、一気に数を減らす。

中央だけは壁を開けており、そこを一番に抜けて来た者はゴルメスの剛槍に貫かれ、狭い隙間に押し合いながら抜けようとする者を まとめて横薙ぎにした。


「極大魔術や核激魔術など使わずとも、戦い方などいくらでもあるのじゃ」


丘の上に控える王国軍の魔導師は、壁を破壊しようにも、自軍の兵士が邪魔で魔術を放てずにいる。


「えぇい、忌々しい!小細工をしおって」


苛立つ王国騎士団長。そこに獣人の一団が現れた。


「なにやってるんです?あんな壁、さっさと吹き飛ばぜはいいじゃないですか」


「自軍の兵士で埋まっておるのだぞ!」


「あんなの、邪魔なだけでしょ?まぁいいや。最初からあてにしてなかったし」


そう言うと獣人達は、どす黒いオーラを放ち始める。


「グルルルル……」


人の姿を捨てた異形の一団。そのプレッシャーは、個々が災害級の魔物に匹敵する。それもそのはず、この一団は獣人では無い。重騎士団長ファルカンを筆頭に、自ら魔物となることに志願した、実験体達なのだ。


「巻き込まれたく無いなら、道を空けろ」


一団は跳躍するように一気に丘を下り、王国兵ごと石壁を突き破る!瓦礫となった石壁の上に立ち、ゴルメス達に視線を向けた。


「さぁ、蹂躙を開始する」

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