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総力戦



続々と皇城へ入る伝令。

王国の兵数と、その内訳、侵攻速度。こちらの準備も、王国軍到着までには、なんとか間に合いそうだとケーニッヒ卿は胸を撫で下ろす。

そこに冒険者ギルドのマスターからの伝令が現れた。


「マスターよりご報告がございます。都内悪所より膨大なマナを感知。調査により、王国のゴーレムが暴れている模様。数は一体なれど、巡回の兵士では抑えられません」


「どうやって侵入した」「門番は何をやっておるのだ」「数で抑えれば良いであろう」


「お静かに願おう!」


騒ぎ立てる貴族達を一喝するゴルメス。帝都騒乱で命を落とした貴族の、跡目を継いだ若い者達である。


「詰まるところ、雑兵では束でかかっても相手にならぬ強者……ということだな。まどか殿より聞き及んでおるが、王国には人と見分けのつかぬゴーレムがおるらしい。門番を責めるのは酷であろう」


「仰る通りで。現在その、まどか一行がゴーレムにあたっております」


「まことか!」


「はい。まどかより、ゴルメス男爵様に伝言です。相手が魔物ならば、冒険者の仕事だ。心置き無く、戦に励まれよ……と」


ゴルメスは身震いする。血が滾るのを抑えきれない。グッと拳を握ると、


(まどか殿……貴女という人は……)

「民の避難を優先させよ!巡回の兵士共も使え!ゴルメスの命であると。私兵を持つ商人にも協力を要請。そうマスターに伝えるが良い!」


伝令を帰し、ゴルメスは皇帝へと正対する。


「これで後顧の憂い無し。陛下、このゴルメス、先陣をつとめさせて頂きとうございます!」


皇帝アレクセイは頷く。


「そこまで言われて滾らぬ者は、武人ではあるまいよ。存分に励め!ジャン、魔導兵団を率い、ゴルメスを援護せよ!」


「「御意!」」




帝都の裏町、通称【悪所】と言われた場所は、土埃と血の臭い漂う瓦礫と化している。

もはやここには、人の形を残した者は無かった。魔鋼の拳を打ち付けられ、或いは引き裂かれ、踏み付けられて肉片すら残っていない。時折放つ魔弾に地面はめくれ上がり、所々で火の手が上がり始めた。


「ちっ!めんどくせぇ」


力ではゴーレムが上、速度ではまどかが上回る。コバルトの打ち下ろす鉄球を軽々と弾き、チェリーの大鎌と同等以上の強度を持つゴーレム。

毒や麻痺といったような攻撃は効かず、雷も地面に逃がしてしまう。今のところ、まどかとらっくのスピードで翻弄し、帝都の中央へ向かわないように足止めするしか手は無かった。




一方、冒険者ギルドのホールでは、人員の振り分けと細かな指示が飛んでいた。


「ランクDに満たない者は、住民の誘導に回れ。上位の冒険者は三人以上のパーティを組め。普通の兵士は無視して構わん。私達が相手するのは、魔物と化した者達だ。忌諱する事は無い。人の身を捨て、理から外れたものを解放してやれ!」


ギルマスが、いつもの丁寧な口調を辞め、檄を飛ばす。驚くことに、まどかより王国の内情を聞き、人の尊厳を無視した王国の有り様に憤っていたのだ。

魔物とはいえ、冒険者はその命を奪う。だからこそ、命の尊さを忘れてはならないとギルマスは考えている。それは自身や仲間、街の人々の命にも言えることであり、冒険者の共通認識であるべきだろう。


「準備が出来た者から行動開始。行け!帝都の冒険者の誇りを胸に!」


地鳴りするギルドホール。帝都が持てる全戦力が、今動き出した。

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