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奇襲



帝都の裏町。人は少なくなったものの、その深い根は途絶えることは無かった。今も犯罪者が隠れ住み、帝都の闇として残っている。


そこに今、脱獄犯であるプラドが舞い戻っていた。ゼロを引き連れ、嘗て目をかけていた裏組織の人間を束ね、まどか達の噂を流した張本人である。


「よし、粗方仕事は終わった。儂は王国に戻るが、お前達はどうする?ついて来るならば、儂の仕事を手伝わしてやるぞ」


「プラド様、こちらにも拠点は必要でございましょう?私共は残ります。またいつでもお戻りください」


「それもそうだな。うむ。しかと拠点を守るがよい」


元男爵であるプラドは、貴族のプライドを捨てきれていない。横柄な態度に、裏組織の人間達は辟易していたのだ。体のいい理由を付けて拒んだ。


「ではプラド様、道中お気を付けください」


「うむ」


プラドはアシムに持たされた、連絡用の魔道具を懐から取り出す。これを発動させれば、直ちに迎えを寄越す手筈になっているのだ。

今回の仕事を無事こなせば、王国の中枢に席を設け、そこに推挙する約束も交わされていた。貴族社会への復帰である。


「儂を軽んじるからじゃ。王国の者は、人を見る目があるわい」


帝国に一泡吹かせ、王国で貴族に返り咲く。プラドは全て思い通りに行ったと歪な笑みを浮かべ、魔道具を起動した。それがプラドにとっての、人生最後の仕事であった。




同時刻。駅でハンスとナツ、荷役達と合流したまどか一行。メグミと面識のある荷役の男は、喜色を浮かべ再会を喜んでいる。まるでアイドルのファンや親衛隊並の歓迎だ。


「メグミ、モテモテだね」


「もう!まどか、からかわないで!」


照れて赤くなるメグミと、それを見て「フゥ!」と声を上げるむさい男達。その時、


「ゴゴゴゴゴ……」


地揺れと共に、遠くから土煙が上がる。


「お嬢様!」


いつも冷静なジョーカーが、険しい顔で警戒を促す。土煙の方角から、膨れ上がる膨大なマナを感じ、肌が粟立つ。


「ハンス、ナツ達を連れてギルドに行って!住民の避難を最優先とギルマスに伝えて」


「承知!ナツさん、急ぐっす!」


「ジョーカー、メグミをお願い。みんな、飛ぶよ!」


まどか達は、土煙の方角へ飛翔した。




アシムは、国王の乗る馬車に同乗している。計画は概ね順調であった。

帝都に騒乱を起こし、疲弊させるのが第一段階。あえて王国が関わっていることを匂わせ、潜入調査に王国へ来るものを 侵略行為に仕立て上げるのが第二段階。

そして今起きているであろう第三段階。特殊なゴーレムを使い、帝都の内部で暴走させ、その混乱に乗じて軍を投入する……つまりゴーレムを奇襲の先陣とし、軍を後詰として帝国を蹂躙するのだ。


ゴーレム研究を任せていたロマーノは、小心者であった。アシムが作らせていたゴーレムの危険性に気付き、研究施設ごと地下に埋め、破棄しようとしたのだ。

そこでアシムはゴーレムを一時的に暴走させ、施設を脱出させた。ロマーノは施設を破棄し、ハンターを使って逃亡したゴーレムの捕獲を目論む。


そこに都合良くまどか達の襲撃があったのだ。アシムはこれを利用し、ロマーノの口封じと、まどか達にその罪を着せ、国敵に仕立て上げたのである。


「多少強引ではあったが、王国の戦力を見れば、誰も口出し出来ないだろう。さぁ、仕上げと行こうか!」


アシムはそう呟き、懐の魔導具を手の中で弄ぶのだった。

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