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再会の……



皇城。まどかがゴルメスと盟友となるきっかけになった、帝都騒乱事件の時、前の皇城は吹き飛び、その後の長雨により池となった。今ではそこに忠霊塔が建ち、その隣に新たな皇城が建てられた。


とはいえ、現皇帝の意志に従い、簡素な造りとなっている。勿論、防衛の面では堅固な城壁と結界により、皇城と呼ぶに相応しい造りではあるのだが、両端に尖塔が聳え、その間の屋根には砲門を備えた、実用性重視の建造物である。


謁見の間にて、中央に鎮座するのは現皇帝アレクセイ。隣にはまどかと縁の深いエンフィー伯爵と、政治顧問のケーニッヒ卿が控えている。


「お姉ちゃん!」


まどかの来訪に、思わずエンフィーが呼び、


「エンフィーよ、公の場であるぞ。まどか殿とお呼びしろ」


と、兄であるアレクセイに諌められる。もっとも、堅苦しい挨拶を形式的にするつもりなど無いアレクセイは、すぐに本題に入る。


「まどか、息災か?此度はよく知らせてくれた。してまどかよ、王国の戦力をどう見る?」


「以前子爵が皇子様になりすまし、果てに魔物と化した事を覚えていらっしゃいますか?」


「うむ。ゴルメスが討ち取った者であるな」


「はい。全ての王国兵では無いでしょうが、あのような者の一団が紛れているでしょう。数にして二百余」


「まことか」


「はい。加えてゴーレムの兵も居ると思われます」


「左様か」


「騎士団の方々を見ました。人間の王国兵であれば、討ち漏らしは無いかと思われますが、相手が人外の者となりますと……」


「勝てぬ、と申すか」


「恐れながら」


まどかは評価に過大も過少もなく、ありのままを話した。アレクセイは頷き、


「ジャンを呼べ」


「陛下、こちらに」


入って来たのは見覚えのある老人。草臥れたローブを纏い、木の根のような杖をついているが、眼光鋭く、驚く程に隙がない。


「まどか、コクシン島以来じゃな」


元帝国筆頭魔導師ジャン。国を思うあまり、人命を弄ぶ実験に手を染め、まどかの手により投獄された死霊魔術のエキスパート。その後コクシン島にて、真祖の吸血鬼を封印すべく、まどか達と共闘した事もある。


「ジャンよ、お主の推測、的を射ておったな」


「はい。長きを生きておりますゆえ」


「まどかよ、ジャンには戦時に限り、魔導兵団を指揮するように命じた」


「そういうことでしたか。その魔導兵団が、極秘戦力だと?」


「そうじゃな、その一部とだけ言っておこう」


「おね……まどか殿、僕も戦うよ」


「エンフィー伯爵が?」


「それもまた、極秘戦力じゃて。儂が友と作り上げた最高傑作じゃよ。楽しみにしておれ」




その後まどか達は、ケーニッヒ卿と挨拶をし、エンフィーとの再会を喜び合い、軍事会議に顔を出す。貴族の中には、自軍にまどか達を取り入れようとする者も居たのだが、


「普段から有事に備え、練兵を怠ることの無い方々であれば、まどか殿を当てにせずとも問題無かろう」


と、近衛兵士長に言われれば、皆諦めるほか無かった。この兵士長も、まどかと共に戦い、命を救われた事のある一人だ。まどかが戦争を嫌い、貴族に利用されるのを嫌うことを知っている者である。


まどかは会議を切り上げ、魔導兵団との顔合わせを行った後、メグミ達と合流し、駅へと向かった。

王国に対する備えは、良いだろう。後は住民の避難をどうするかである。巡回の警備兵と冒険者、それにナツを加えても、人手が足りているとは言い難い。そしてそれは、帝都を混乱に貶める事になるのだった。

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