出会い、再会 1
「まどか様ー、なんなんっすかね、ハンターって」
「さぁね。そのうちわかるよ」
「ねぇまどか、なんで生け捕りなんてするんだろうね?」
「まぁ、それもそのうち……ここだね、評判の美味い店!」
「でも……なんか高そう」
高級レストランといった雰囲気の落ち着いた外観、手入れの行き届いた、塵一つ無い店内。パリッとした制服に身を包み、テキパキと仕事をこなす店員。噂の王国一の店、キングダムである。
「ただなぁ……」
店内の客は、店の雰囲気に似つかわしくない、傷だらけのむさくるしい男達。食べ方はガサツ、酒をあおり、馬鹿笑いをしながらガシャガシャと音を立てている。
「いらっしゃいませ。三名様ですか?どうぞ」
店員は、うるさい男達から少し離れた席へまどか達を案内する。気を使ってくれたらしい。
「この店が、王国で一番だって聞いて来たんだ。この国らしい、おすすめを三人分頼むよ」
「旅のお方ですか。かしこまりました。自慢の逸品を御用意いたしましょう」
まどか達は静かに料理を待つ。
「な、なんか、緊張するっすね」
ハンスは落ち着かないらしい。ソワソワと周りを見て、ちびちびと水を飲んでいる。
「おい!酒はまだか!全然足りねぇぞ!樽ごと持ってこい!」
むさくるしい男ががなっている。店員が慌ててジョッキを持っていくと、
「にしても、この店は女の店員が居ねぇな。飯はうめぇが、色気も大事だそ!なぁ!」
「全くだ!」
「申し訳ございません。以前は居たのですが、事情で皆辞めてしまいまして」
「なんだ?俺達のせいだとでも言いてぇのか、あぁ?」
「いえ、決してそのような事は」
「けっ!」
事実、ここに屯する連中にからかわれて、女性店員は耐えきれず、皆辞めている。店としても追い出したいのだが、毎回大金を落としてくれる客でもあり、対処に困っていた。
「おい!そこのお嬢ちゃん!」
男、の一人が声をかける。メグミは一瞬身体を硬直させ、ハンスが身構えるが、男の視線の先は、別のテーブルにあった。
「にぃ?」
そこには獣人の子供、首を傾げる仕草が愛くるしい。
「ちょっとこっちでお話でもしようぜ!俺達を楽しませてくれたら、好きなもん食わせてやるぜ」
「うーん、もうお腹いっぱいだにぃ!おじさんうるさいし、お酒臭いから嫌だにぃ」
「生意気なガキが!ふんじばって魔物と一緒に売り飛ばすぞ!いいから来い!」
「やだにぃ!おじさんじゃ捕まえられないにぃ!」
「この、猫ガキが!」
男は立ち上がり、獣人の子供の首を掴もうとする。子供はするりと躱し、ピョンと後ろへ跳ぶと、両手を付いてシャーッ!と威嚇する。
追いかける男、右に左に、時には壁を蹴って天井を翔ける子供。フラフラになりながら追い回す男に、子供はべぇーと舌を出し、くるりと宙返りをする。
頭に血が上った男は、腰の剣に手をかけ、空中の子供を抜き打ちにする。子供は爪を出し、剣を外らすが、反動でまどかの席まで飛ばされる。胸でポフンと受け止め、子供はそのまままどかの膝の上に収まった。
「よ、ようやく大人しくなりやがったか。」
子供は既に男のことは眼中にない。スンスンとしきりに匂いを嗅いで、まどかの膝の上で丸くなった。
「やれやれ。落ち着いてご飯も食べれないのか……」
「んを?なんだ、こっちに可愛いお嬢ちゃんが居るじゃねぇか!おう、ガキはもういい、姉ちゃん達、酒の相手をしてくれよ。楽しいお話しようぜ!」
「話?話ねぇ……子猫を追っかけ回してヘロヘロになった情けない男っていう、つまんない話があるんだけど、聞く?」
次回投稿は、13日の予定です。