表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/86

本能



らっくの捕獲とデザートワームの討伐を同時進行することになったまどか達。

状況は、思わしくない展開であった。らっくが暴走したのである。禍々しいオーラに包まれ、攻撃の矛先をまどか達に向け始めた。


らっくの職業、操獣士が持つ固有スキル、操獣によって、デザートワームがらっくに付き従っているのだ。新たに二体のデザートワームが参戦し、らっく捕獲の邪魔をしている。


ヘタに威力の大きい魔術や攻撃では、らっくまで巻き込んでしまう。なにより、デザートワームに攻撃を仕掛けると、らっくが庇うのである。ジョーカー達は、らっくを躱しつつ小技で削る方法しか取れないでいた。


「ずっと練習していた操獣のスキルが、霞の影響で底上げされたのか……」


事実らっくは、理性が希薄になり、本能的にスキルを使っているのだ。理論や術式など一切関係ない、当人でさえ意識しないまま、スキルを行使している。


「出来るようになったのは喜ばしいけど、今はちょっとな……反抗期かな」


「まどか、親バカやってないで、なんとかしてよっ!」


「お、おぅ……ちょっと加減すればいけるかな……雷陣、スタンボルト!」


まどかは雷を身に纏い、肉の柱へと飛翔する。落雷のような大気の爆ぜる音が、一瞬遅れて届いた。

手当り次第にデザートワームに拳を突き立て、蹴りを放つ!それを庇うように割り込んだらっくを まどかは正面から抱き止めた。

放電により一時行動不能になるデザートワーム。まどかはそれを蹴りつけ、らっくを抱いたまま距離をとった。


「メグミ!ハンス!」


蔦拘束バインド!」

「スパイダーネット!」


まどかの着地と同時に、メグミの樹木魔術で拘束し、ハンスがネットを重ねがけしてマナを吸い取る。そこに操獣のスキルが解除されたのか、スタン状態から回復したデザートワームが、一斉に襲いかかる!


「「「させません!」」」


瞬間移動で割って入るジョーカー、チェリー、コバルト。


「夢幻剣舞!」「魂の収穫!」「メテオストライク!」


残像を引き連れ、エストック二刀流で舞うように切り刻むジョーカー。黒刃に紅の紋様を纏うデスサイズにて、魂ごと刈り取るチェリー。振り出された鉄球が大気との摩擦で灼熱を帯び、降り注ぐ隕石の如く打ち付け粉砕するコバルト。

先程までの小手先のものでは無い、確殺の攻撃を叩き込む三人。デザートワームは、砂漠地帯の僅かな養分となった。


ハンスは、藻掻くらっくの動きに合わせて、糸が切れないように調整している。大物を釣り上げる釣り師のように、緩め過ぎず張り過ぎず、絶妙なバランスである。


「らっく、もう少しの辛抱っすよ」

「らっく、獣身化を解くんだ!」

「「「らっく様」」」

「らっく、頑張って!」


それぞれがらっくに呼びかける。その声が届いたのか、らっくの瘴気が霧散し、その身体を次第に縮めていく。


「……にぃ」


元の姿になったらっくは、力尽きたように倒れた。キャパオーバーの力を使い、身体が追いつかなかったのだろう、らっくは所謂、酷い筋肉痛の状態にあるようだ。


「らっく、よく頑張った。偉いぞ」


まどかはらっくに駆け寄り、膝の上に抱き上げると、優しく撫でながらそう呟く。


「たっちゃん……」


力無く答えたらっくは、安心したのか、まどかの膝の上でその意識を手放した。


「おやすみ、らっく」


寝息をたてるらっくに、まどかは優しく声をかけるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ