表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/86

水晶の森



まどか達は牢獄を抜け出し、地上へと出る。

周囲は霞が掛かり、その中に巨大な建造物と思われる影があった。


「あれは……お城っすか?」


ハンスの言う通り、そこにあったのは、朽ちてなお荘厳な城であった。


「これは……戦の跡?いや、魔獣の爪跡か?」


周りに漂う霞は、僅かだがマナの反応がある。まどか達が本拠地としている、名も無き島に漂う、蜃の吐き出す蜃気に近いガスのようだ。

侵入した者の方向感覚を狂わす働きがある。


「城から魔物の気配がある。戦闘の準備だけはしておこうか」


「お嬢様、城だけではございません。どうやら囲まれたようでございます」


霧のマナに紛れて、まどかは気付かなかったが、ジョーカーの魔眼は捉えたらしい。おびただしい数の魔物が、包囲網をジリジリと狭めて来ている。


「メグミ、先制攻撃だ」


「わかったわ」


メグミはエルフィンボウを構えると、矢を番え空を仰ぐ。イメージは流星群。マナを込め光を帯びた矢を放つ!


「スターダストレイン!」


矢は天空にて千本の矢となり、篠突く雨の如く降り注ぐ。しかし、


「ガキン、キン、カキキキキン!」


金属を打ち鳴らすような、甲高い音が響く!幾らかの魔物の悲鳴は聞こえるものの、思った程の気配の消失は無い。


「霞でよく見えないなぁ……吹き飛ばすか。風陣!サイクロン!」


まどかを中心に逆巻く風。その輪は次第に範囲を拡大し、半径五十メートルの霞を吹き飛ばす。


「なに、これ……」


霞の中から現れたのは、透き通る木々。枝の一本、葉の一枚に至るまで、水晶の輝きを放っていた。

それは長年マナの霞に晒され、魔水晶と化した森であった。

魔石程では無いが、魔晶石よりも純度が高く、圧縮されたマナの結晶である。


「あれに弾かれたのか」


「まどか様、どうするっすか?」


「お嬢様、群れの数が増え続けております」


まどかは周辺にあるモノを見て、瞬時に思考をまとめる。


「城の中も調べたいけど、それどころじゃないね。まずは少しでも速く、この森を抜ける!話はそれからだ」


木々の根元に、人型の水晶があったのだ。おそらくこの森で迷い、力尽きた旅人だろう。つまりは水晶化するのは、木々だけでは無いと言うことだ。常から体内にマナを宿す、まどか達亜人種やジョーカー達魔族ならば問題ないが、ハンスには耐えられないだろう。あまり霞を吸い込むべきではない。


「ハンス!マナ吸収用のネットで、自分の鼻と口を覆うんだ」


これで多少は体内での蓄積を遅らせることは出来るだろう。後は速やかに、この迷いの森を脱出しなければ。


「たっちゃん!スピードなら任せるにぃ!牛のおじさんに教わった新しいスキルを使うにぃ!」


そう言えば、一本角討伐の帰りに、保護した牛の獣人と仲良くなり、色々教わっていた……ここしばらく、そのスキルの制御を頑張っていたようだが、ようやく身についたらしい。


「いくにぃ!獣身化!」


らっくの身体をマナが包む!この環境下でらっくは、周囲のマナも吸収し、四つん這いになって唸っている。体長は見る見る大きくなり、三メートル程の獣姿になった。

それは子猫と言うには余りにも荒々しく、獰猛な獣。霞を取り込みすぎた所以なのだろうか、内なる衝動を らっくは必死に抑えていた。


「早くっ、背中にっ!」


らっくは皆を乗せると、咆哮を放ち一気に駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ