狐と狸
久しぶりの更新です
「君は他の仕事をしに来たのだろ?自分のやるべき事をしたまえ。くれぐれも私達の邪魔だけはしないでくれよ」
「てめぇ」
「貴方もギルドを預かる身。ならば、自分のギルドが大事でしょう。たまたま立ち寄った旅の冒険者など、使えるなら使い、使えぬなら放置、害をなすならば速やかにご退場いただく。当たり前のことではありませんか。貴方がどういう理由で彼女達に肩入れするのか知りませんが、私は何一つ間違ったことはしていませんよ」
「ぐぬぬ……相変わらず正論並べ立て腐って、口の減らない野郎だ!よし、わかった。俺は俺のやり方で、俺の仕事をさせてもらう。そっちこそ、邪魔すんなよ!」
ラルゴは、立ち上る湯気が幻視出来る程頭に血を上らせ、思案顔のネム爺を引き連れてギルドを出ていった。それをつり上がった目で見つめるファガット。
「やれやれ。狡猾を気取るなら、もう少し冷静な判断をすべきでしょうに。そう、あの人の様にね……」
ファーのギルドが目星を付けたのは、王国最強の呼び声高い、重騎士団団長、ファルカンという人物。出自不明だが、先代の王に見出され騎士団に入隊。破竹の勢いで一隊を任されるまでに登り詰めた。
話によると、森へ狩りに出掛けた王が、魔獣に襲われた所を助け、森を出るまで身辺警護をしたのがきっかけだと伝わっている。
「嬢ちゃんにも報告がてら、意見を聞きてぇところだったが、まさか囚われの身とはな」
「……のう、ラルゴ、ついでじゃ。その嬢ちゃん達が襲撃した屋敷っちゅうのを 覗いて行かんか?」
「そうしてぇのも山々だが、俺はファーに戻らねぇとな。マスターの長期不在は、カッコがつかねぇ。ネム爺、そっちは任せるぜ」
「ふぇっふぇっふぇっ……ハンターの件は若い奴らを回してくれ。わしゃ少し別行動じゃ」
「そのつもりだ。あの狐野郎が何を企んでやがるか、しっぽ掴んで引きずり回してやる!」
さて、当の本人、囚われのまどかはというと、
「もむもむもむ……んぐっんぐっんぐっ……ぷはぁ……ご馳走様でした!」
「まどかぁ、はむはむはむ……呑気にご飯、コクコク……ふぅ……食べてる場合なの?」
「ガツガツガツ……ふぉっふよ」
「メグミも食べてるじゃん。それからハンス、口に物入れたまま喋らない!なんか飛んで来たし」
鉄格子の中でテーブルを広げ、食事中であった。こういう状況でも、否こういう状況だからこそ、ジョーカーの【執事の嗜み】は発揮される。
「宿で食べ損なったからな。腹が減ってはなんとやら……だよ」
「なんすか?それ」
「そっかぁ、そういった言い回し、通じないんだ……それよりまどか、戦うつもりなの?」
「お!やるっすか?」
「らっくも暴れたいにぃ!」
「待て待てハンス、らっくもな……メグミ、言葉通りに取らないでよ。今はとりあえず腹ごしらえをして、ゆっくり考えようってこと」
(とはいえ、見事に嵌められたな。相手はこちらの素性を知っている……私達が嗅ぎ回っていることも……ギルドでもらった地図を足がかりに、調査を進めてきたが、最初から仕組まれていたのか?いや、あれが無ければ未だに取っ掛りも掴めていないだろ……わざわざ自分達に辿り着くような真似はしないか……)
「どうしたの?まどか」
「ん?いや、なんとなく読めてきた。あとは私達を投獄した理由だな。私達が邪魔なんだろうけど、何故刺客を送るでも無く、牢に閉じ込めたのか?それが解れば」




