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救出?回収?強奪?



こんなはすじゃなかった。

いや、確かに予想通り、地下通路はあったし、極力戦闘を避けてコバルトの身体を回収したいと言いましたよ?

まぁ結果を言えば、無事回収出来たのだ。まどか達がほとんど戦闘をすること無く……


まどかの感想

(怒ってたね、チェリー。我慢の限界だったのかな……まぁ、我慢させたのは私だけど、こんなことなら、少しガス抜きしとくんだった)

メグミの感想

(あんな姿のコバルト見ちゃったら、そりゃキレるよね。でも、まどかが言ってた、誰かが代わりに怒ってくれたら冷静になるってこと、少しわかったよ)

ハンスの感想

(俺、チェリーだけは怒らせないようにするっす。肉片も残らないっすよ)

ジョーカーの感想

(やれやれ……まどかお嬢様は不問にされましたが、チェリーには再教育が必要ですね)

コバルトの感想

(溜飲が下がりました。流石はチェリーです)

チェリーの感想

(今日の所は、これくらいにしといて差し上げます)


つまりは、まどか達には出番が無かったのである。否、全く無かったわけではない。建物の崩壊や、コバルトの身体が灰にならぬように、結界を張ったり、柱の修復をしたり、それなりの事はやった。だがそれだけである。


空き家になっている民家の、納屋の地下に、通路の入口を発見した。このような入口が、他にも数箇所確認出来た。つまりは現在も、何者かが使用しているということである。

気配察知を最大限使い、こちらの気配を魔術にて遮断して、慎重に地下道を進む。脳内マップに従い、コバルトの身体があるであろう地下室へと辿り着く。

トラップの解除と結界の無効化、手分けして迅速に対応する。ここで役立ったのはメグミの新たなスキル、精霊使役である。

下級精霊を使役し、周囲の状況を探るのだ。範囲は限定されるが、魔術より詳細な情報を把握することが出来、精霊が結界やトラップに引っかかる事は無い。


ここまでは完璧な潜入だった。しかし、実験室の扉を開け、まるで標本のように杭を打たれ、弄ばれたコバルトの悲惨な身体を目にした瞬間、


「……わ、わたくし達の身体に触れて良いのは、創造主たるまどかお嬢様のみ……それを……触れましたね……触れやがったなクソ虫どもぉっっ!!」


実験室に充満する黒く濃い瘴気。雷雲の如くスパークが走る!

そのどす黒い部屋に浮かぶ、赤い光が二つ、チェリーの眼である。

騒ぎを聞きつけた屋敷の衛兵や術師達が、勇んで部屋に飛び込んで来るも、物理的な圧を感じる程の瘴気に二の足を踏む。その僅かな躊躇が、彼等の運命を決めてしまった。


「我が身に触れる者に地獄の責め苦を」


二つの光がゆらりと揺れた。瘴気がチェリーを覆い、その姿を鎧へと変える。至る所から刃が突き出し、その表面には血管のように巡るマナが脈動する。チェリーは愛用の武器デスサイズと同化し、その身に纏ったのだ。


「し、侵入者を生かして帰すな!かかれぇ!」


我に返った術師から、数多の火球が放たれる!チェリーは羽虫でも払うように火球を捌き、次の瞬間姿を消した!

否、床に亀裂が入る程の踏み込みから、目に追えぬ速度で一気に術師の間を駆け抜けたのだ!


鎧の刃に切り裂かれた術師達は、まるで魂を直接切られたような、激しい痛みに襲われる!


「「「ぐあぁぁっっ!!」」」


「終わる事なき痛みに、悶え苦しむがいい」


壁を蹴り天井を駆け、チェリーが走る度に痛みを激化され、死してなお痛みは消えず……屋敷にいた者全てが蹂躙されるまで、チェリーの乱舞は止まることは無かった。

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