歪み
「なるほど。ティンク、繋がったよ」
「え?まどか、わかったの?」
まどかは頷くと、頭の中を整理する。
「私がこの街に感じた違和感、それは、ある一定の範囲だけ、建物や石畳が新しいんだよ。その範囲の内と外に、隠しきれていないズレがあるんだ」
「それが、まどかが見つけた違和感?傷んで張り替えたとかじゃ無いの?」
「メグミ、まどかは感じたんだよ。空気感の違いをね。まぁ、あたしクラスになれば、色がついたみたいに、空気の淀みを見つけられるんだけどねっ!どう、凄いでしょ。やっぱりあたしがリーダーでしょ」
「それ言わなきゃね」
まどかがティンクを呼び出した理由、それは正にティンクの言った【淀み】である。
人では感じる事が出来ないこの淀みを確認し、まどかは地図に書き込む。思わぬヒントも得られたことで、次の行動が明確になった。ティンク様様である。
「まぁまぁ、だからこの街が上書きされる前の、本来あるべき姿がわかれば」
「もう一枚の図の秘密がわかる……ってこと?でもどうやって調べるの?」
「うーん、日本なら、国立図書館とかで調べるのだろうけど、この国がそんな資料、一般公開してるわけないし」
「お年寄りに聞く……とか?」
「お年寄りねぇ……あぁ、そう言えばいたわ。情報通のお年寄り」
「ねぇ、さっきから何の話してんのさ!あたしの知らない話しないでくれる?」
「あぁ、ティンク。いたんだっけ」
「メグミが呼んだんだよ!」
「あ、そうだ。ティンクが知らないこと、もう一つ。新しい仲間が増えたんだよ。今度紹介するね」
「へぇ、あたしの後輩かぁ……その子、使えんの?」
「自分で確かめてみなよ」
「なるほど。わかった、皆まで言うな。あたしにその子を鍛えて欲しいのね。うんうん、あたしの指導は、厳しいけど効果抜群だからねっ!あんた達も、あたしが鍛えたんだし」
「あぁ、あはは、そういうこともあったね……」
確かに厳しい指導だった。バーンとかズバババとか、擬音ばっかりで理解が難しいから。
効果抜群だった。ジョーカーの補足が的確で、連携の基礎が身に付いたから。
ティンクの言ってることに、間違いは無い……事になっている。
「んじゃ、次にあたしを呼ぶ時は、その子に覚悟しとくように言っといてね。そろそろ時間だから、まったねー」
ティンクは光の粒子になって消えて行った。
「んじゃ、私達はネム爺さんところに行くか」
「うん!」
ハンスは今、どうやったららっくを手懐ける事が出来るか、そのことばかり考えている。
(うむ。方法としては三つっすね。一つはエサで釣る。美味しい物をくれる人と印象付ければ、懐いてくれるっす。
一つは、冒険者の先輩として、かっこいい所を見せる。さすがハンスさん!って、尊敬されるっす。
もう一つは、厳しく育てる。飴と鞭っすね。師匠と弟子の関係を築くっすよ!)
「ハンス、早く行くにぃ!らっくの凄いとこ、見せてやるにぃ!」
「あ、うん……」
(いきなり呼び捨てかよ!これはまず、上下関係をはっきりさせるのが先決っすね)
「な、なぁらっく、俺の事は、ハンス様って呼ぶっすよ」
「にゅ?どして?たっちゃんはハンスって呼ぶにぃ」
「俺の方が年上だし、パーティの先輩っすよ。先輩には、【さん】とか【様】とか、付けて呼ぶのが礼儀っす。俺をハンスと呼んでいいのは、まどか様だけっす」
「ふーん。ハンス強い?ハンスえらい?たっちゃんは、らっくえらいぞーって言ったにぃ!」
次回投稿は、21日の予定です。




