そうだ、王都へ行こう
遅れてしまいました。
ファーの町を出て、まどか達は大都市へと馬車で向かっていた。
「こういう旅も、いいもんだ」
「ねぇまどか、ホントに情報集めに行くんだよね?」
「ん?そだよ。あ、あそこのカフェ、雰囲気いいね」
「ほんとだ!ミルクレープだって……じゃなくて」
「見て見て、わんにゃんサーカスだって!らっく、後で行くか?」
「行きたいにぃ!」
「わぁ!なんか楽しそう……ってまどか!絶対観光だよね?よね?」
今回の観光……ではなく情報収集は、女性陣だけでやって来た。まどか、メグミ、らっく、チェリー、コバルトの五人である。
「心配性だなぁメグミは。脅威になる魔物は粗方倒したし、プラドはハンスが見張ってる。ジョーカーにも別で動いてもらってるから、私達はこっちだよ」
「でも、まどかさっきから……」
「メグミ、メリハリって大事だよ。移動中くらいは楽しまないと。馬車を降りたら仕事モードになるから」
「ホントかなぁ……」
停車場に着き、一行は周囲を見回す。石畳の綺麗に整備された道が、前王を讃える石像がある中央広場から放射線状に広がり、一番幅のある道の先が王城であるらしい。
道の両側には、北欧風の二階建ての建物が隙間なく並び、傾斜のキツめな屋根には、明かり取りの窓がある。
「綺麗な街ね、まどか」
「うん。スンスン……串焼きの匂いだ!行くぞらっく!」
メグミの振り返った場所には、既にまどかはいなかった。人混みをすり抜け、串焼き肉の屋台に並んでいる。
「もう!仕事モードはどうしたのよーっ!」
メグミがやっとの思いでまどかのいる屋台にたどり着くと、既に紙で包んだ串焼きを二袋抱えている。
「メグミならわかると思うけど、私はコンビニのレジ前でホットスナック揚げたてですよーとか言われたら、買っちゃうたちなんだよ」
「う、ちょっとわかるけど……」
「コレ食べたらギルドに顔出して、地図もらって、それから王都内で活動する為の拠点探しかな。後は王城に出入りしている商人の洗い出し。それらが出来る人脈豊富な人でも居れば最高なんだけど」
「なんだ、ちゃんと考えてるのね。安心した」
「当然!だからこそ、わんにゃんサーカス見に行くんだよ」
「そこが上手く繋がらないんだけど……まぁいいや。まどかがそう言うなら」
いまいち腑に落ちないメグミだったが、まどかの勢いと、らっくの懇願の上目遣いに堕ちたらしい。
人混みの中、こういう雑談中も、周囲の警戒を怠らないチェリーとコバルト。今も二人のチャラそうな男が、まどか達に声をかける直前に姿を消した。
「ねぇ、彼女たち、どっから来たの?」
「お茶でもどうかな?いい店知ってんだけど」
二人の男の目の前には、前王の石像。コバルトが転移で飛ばしたらしい。周囲の人々に危害を加えないように、まどかに注意されたため、こういう排除手段にしたようだ。
「ねぇ、何あれ、石像口説いてる」
「モテないからって、無いわー」
「ママー、お兄ちゃん達、石とお話してるよー?」
「しーっ!ダメよ。可哀想な人なんだから。見ちゃいけません。あ、こら、指ささないの」
「クスクス……」
他にも、ガチムチな漢女に声をかけ、連れ去られる若い男や、巡回の兵士をお茶に誘い説教される者など、街のあちこちでカオスな雰囲気になっているが、自業自得というものである。
「まどかお嬢様、今の所、殺意を持って近付く者はいません」
「お嬢様に快楽や性的欲求を主目的に近付く者が殆どでございます」
「ふむ。今度からそういう報告は、声に出さずに頼むよ。メグミがあわわしてるから」
「「かしこまりました」」
次回投稿は、14日の予定です。




