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手掛かり 1



「依頼として届いている人探しは六件か」


この世界において、行方不明者探しはギルドに依頼するのが常識となっている。貴族や一部の豪商など、自前で兵士を抱えている者は、その範疇では無いが、それでも見つからない場合、ギルドに話が回ってくるのだ。

例え親兄弟の居ない、天涯孤独の身の上でも、近隣住民や仕事仲間が依頼を出すのが常である。国内外に独自のネットワークを持つ冒険者ギルドには、大概の情報は集まるからだ。

逆に言えば、ギルドが掴めない程の情報であるなら、余程の大きな力……それこそ国家レベルの隠蔽工作が為されていると言えよう。


「って言っても、まどかが言ってた、戦闘経験が豊富そうな人、居ないね」


「うーん、そうなんだよなぁ……子供、若い女性が二件ずつ、後は老人と猫か」


「その老人が元戦士とか、無いっすかね?」


「いや、普通の農家の人だ」


「「「うーん……」」」


正直、あてが外れたまどか達。ジョーカー達の情報に期待するしかないと、座り込んでため息をつく。


「……よし、何もしないでただ座っててもしょうがない。せっかく目を通した依頼書だ。捜索がてら街を廻ってみよう」




情報を集めるため、まずは依頼主を訪ねる。若い女性の捜索を依頼したそれぞれの家には、共通点があった。借金を抱えており、やむにやまれず娘を売ったのだ。

人買いと呼ばれる者がいて、奴隷売買ほど悪辣では無いが、娼婦館から奉公人、メイド見習いまで、様々な仕事の斡旋を行う。売られた娘達には、きっちりと給金が支払われ、手紙のやり取りや、数日の里帰りも許可されている。


それが何故ギルドへ依頼を出すこととなったのか?

それは、奉公先から姿を消したからであった。頻繁に送って来ていた手紙が、ある日ぱったりと来なくなり、安否を気にした家族が問い合わせると、出かけたまま行方がわからないと言う。

仕事が嫌になり里へ逃げ帰り、親に説得され数日で戻ってくるケースもよくあるので、今回もそれだろうと思っていたが、里にも帰っていない……そこで心配して依頼を出すことにしたらしい。


「んで、雇い主が何か隠しているってことも無いんですね?」


「はい。ギルドに依頼すると伝えましたら、あちらの旦那様が依頼金まで出してくださいました。」


「なるほど。娘さんが他に行きそうな所とか、ありますか?」


「幼なじみの家くらいですが、そこにも来ていないようです」


「ふむ。あ、ちなみにその人買い、なんて人ですか?」


「確か……プラド紹介所と言う、最近勢力を拡大している所で、他所には無い人脈で、紹介出来る仕事が豊富なのだとか」


「どっかで聞いた名だな……わかった。調べてみます」


「お願いします!」


依頼主の家を出て、真っ先に口を開いたのはメグミだった。


「ねぇ、まどか、プラドって……」


「確かに。私もあのキモい男爵の顔が浮かんだよ」


プラド男爵。帝国の鉱山を独り占めし、奴隷街を作り私腹を肥やしていた男。まどか、メグミを精神支配の術にかけ、お持ち帰りしようとした変態悪党である。


「でもまどか様、アイツ確か、爵位剥奪で財産没収、身柄も拘束されたんじゃなかったっすか?」


「あぁ。でも独自のコネとか、人買いって仕事の内容とか、どっちも若い女性ってあたり、聞けば聞くほどアイツっぽいんだよなぁ。別人かもしれないけど、一応調べてみるか」

次回投稿は、9日の予定です。

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