MJ2始動
拠点の家。メイド達がテーブルをセッティングし、ジョーカーの料理をメグミが手伝っている。ハンスは義手の手入れと回収した魔晶石の確認。それを珍しそうに見ているらっく。ハンスが魔晶石を一つ転がしてやると、らっくはすかさず飛び付いた。ボールを追いかける猫そのものである。
まどかは一人椅子に腰掛け、状況の整理をしている。
(ギルドにはゴーレムの情報は無かった。人の姿をしているとなると、もう街中に潜んでいるかもしれない。意思ある魔物なのか、命令に従うだけの人形か……容姿がわからない以上、男か女かも不明か。情報が少なすぎる。依頼主に接触する必要があるか……)
「なぁ、逃げ出したゴーレムって、自分の意思だと思う?単なる暴走?」
「どっちも考えられるっすね」
「でも、それって重要だよね」
「わたくしは、前者だと愚考します」
「ジョーカー、理由は?」
「はい。仮に暴走であるならば、既に被害が及んでいるものと思われます。ギルドに依頼が来ていない事を考えますと、ゴーレムが暴れた形跡は、今のところ無いのかと」
「でもジョーカーさん、逃げ出した所でマナが切れて、機能停止してるってこと無いのかな?」
「メグミお嬢様、それでしたら既に発見されているはずでございます。いまだに見つからないと言うことは、潜伏していると考えるべきかと」
「そっかぁ」
「ふむ。目的はわからないけど、人と魔物を掛け合わせる研究をしているのは、間違い無さそうだ。一本角は、言わば失敗作だろう。そのゴーレムってのが人をベースに作られたとしたら、逃げ出した理由は……」
「その人物の意思、でございましょうな」
「だよな。ベースになった人物が特定出来れば、手掛かりになると思うけど、依頼主に聞いた所で、素直に教えてくれるとも思えない。なんせ隠れてコソコソ実験している奴らだからね」
「そんな実験に、好き好んで材料になる奴なんているんすかね?」
「!!ハンス、それだ!」
「へ?」
「ここ最近で、急に姿を消した人物……行方不明者の捜索なら、ギルドに依頼が来てるかもしれない!」
「なるほど。姿を消す前に、国の誰かが接触した人物とか?」
「そうだなメグミ。それに、一本角の時に思ったけど、ある程度の戦闘経験者がベースにされているんじゃないかと思う」
「となると……騎士、兵士、冒険者、ハンターっすか?」
「後は、元戦士の奴隷辺りか」
「たっちゃん……お腹空いたにぃ」
「ん?あぁ、よしよし。明日はもう一度ギルドに行こう。ジョーカー、チェリー、コバルトは奴隷商をあたって。他はみんなで手分けして行方不明者の捜索。これで行こう」
「「「かしこまりました」」」
「えぇ」
「承知」
「では、お食事に致しましょう」
団欒の夕餉。まどか曰く「ご飯は楽しく美味しく食べないと、ご飯に失礼」
故に作戦会議などは、食事中にはしないがモットーである。
「あのでっかい牛、食べてみたかったにぃ」
「らっく、あれは食べちゃダメなやつ」
「そっかぁ、残念だにぃ」
「らっくちゃん、まじりっけのない野生の牛なら、食べてもいいわよ」
「んじゃ、それを探すにぃ!」
食に対する貪欲さは、飼い主に似たのだろうか。皆同じように思ったらしく、視線がまどかに集中する。これにはまどかも、苦笑いを隠せなかった。
「あは、あはは……」
次回投稿は、7日の予定です。




