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一本角 4



「戻ったぞい、ラルゴ」


「いい加減ギルマスと呼べよネム爺」


「一本角討伐は成功じゃ。だがのう、一つ事件があっての」


「なに!一本角を倒したのかっ!」


ザワつくギルドのホール。喜ぶ者、疑う者、有り得ぬと食ってかかる者、いちいち説明した所で、誰も信じないだろう。ネム爺は敢えて口を噤んだ。


「で、事件とは?」


ギルマスが両手を広げ、冒険者達を制すると、ネム爺に話の続きを促す。


「ふむ。実はハンターも一本角を狙っておったようじゃ。まぁ、奴らが弱らせてくれていたおかげで、わしらも倒せたんじゃがの」


「ハンターが?」


「わしらが一本角を見つけたのは、ハンター共が全滅しかかった時じゃった。そこでわしらは一本角を倒し、生き残ったハンターを連れて来た。ざっくり言うと、そう言うことじゃ」


「ほう。そんじゃソイツを拷問でもして、背後の奴らを一網打尽って寸法か?」


「いんや。拷問の必要は無いぞ。お嬢が全部聞き出したからの」


「本当か!まどかは何処だ!」


「お前さんの執務室じゃ。ちと込み入った話もあるでの」


ギルマスは頷くと、ドカドカと階段を登った。乱暴にドアを開けると、


「よう。お邪魔してるよ」


と、お茶やクッキーを並べ、ソファーで寛ぐまどかがいた。


「突っ立ってないで座んなよ」


「いつの間に……って俺の部屋だぞ!」


まどかの膝が定位置のらっくが、カリカリとクッキーを齧りながら、珍しく牛の獣人にも手渡しで薦めている。道中で操獣士のスキルについて話が聞けたのが、余程嬉しかったようだ。


「で?そいつらが?」


「あぁ。そこに跪いてるのがハンターのリーダー。こっちの獣人さんは、スキルを見込まれて臨時で雇われたそうだ」


見れば確かに跪いている男がいる。まるで教会での懺悔を終え、晴れやかな気持ちになったかのように、崇拝者の目でまどかを見ている。


「……ほう。で?背後はわかったのか?」


一瞬顔を引き攣らせたギルマス。どうやら見なかった事にしたらしい。


「それはまだ。でも手掛かりは色々」


「教えてくれ」


「まず、捕獲した魔獣を受け渡す場所が指定されるらしい。その周辺で張り込めば、雇い主に辿り着けるかもな。あと、国絡みのヤツが仕事を依頼してきたらしい。聞いたところ、ハンターの仕事は情報が漏れないように、細心の注意がなされている。なのに国の奴から依頼が来たとなると……」


「元の雇い主も国絡みか」


「そう考えるのが自然だね」


「誰かが勝手にやってるのか、はたまた王自ら関わっているのか……」


「何方にせよ、放ってはおけないだろう。泣くのは民だよ?民を守ってこその国だろう」


「うむむ……デカい話になってきたなぁおい」


「そこでだ。ギルドには受け渡し場所の張り込みと、背後の捜査をお願いしたい。私達は新しい依頼主の方を探ってみる。まぁ、話がデカすぎてギルドが引くって言うなら、そっちもウチで調べるけど」


「お嬢ちゃん、舐めてもらっちゃ困るぜ。雁首揃えてガキの使いやってる訳じゃねぇんだ。ここで引いたらギルドの名折れよ。民の為となりゃ、尚更だ。こっちは任せろ。ここまでお膳立てされてしくじるようなら、俺はギルドを畳むぜ」


「この二人も預ける。万が一口封じなんて事にならないとも限らないからな」


「おう。そんな真似はさせねぇよ。逆にしっぽを掴んで引き摺り出してやらぁ」


ギルマスは獰猛な笑を浮かべた。まどか達は二人をギルドに預け、一度拠点へと戻るのだった。

次回投稿は、5日の予定です。

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