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遭遇 2



ネム爺が周囲の足跡を探る。踏み荒らされた草原に、何かを引きずった跡、そして、人の頭程の蹄の跡がある。


「一本角じゃ。ハンター共は、一本角を捕獲しようとしとるのか」


「ちっ、めんどくせぇ……追うよ!チェリー、コバルト、先行して!」


「「かしこまりました」」


随行の冒険者にハンターの遺体を任せ、一行は、引きずった跡を追う。ハンスとネム爺に左右それぞれの索敵を任せ、らっくは匂いを探りながら、四足スタイルで駆ける。


「ちょっと、ハァハァ、みんな、早すぎ、ハァハァ……」


斥候でならしたハンスとネム爺は勿論、野生の走りのらっく、後方に爆風を放出し加速するまどかには、メグミはついて行く事が出来ない。


「メグミお嬢様、失礼致します」


ジョーカーはメグミを抱えると、背中に漆黒の翼を展開し、バサリと一打ち翔く。


「すいません、ジョーカーさん」

「お気になさらず」


突然そんなジョーカーの姿を見せられたネム爺はたまったものでは無い。瞬きを忘れたその目で、すぃーっとまどかを見る。


「お嬢の仲間は、人外なのか?まさかお嬢も」


「まぁ、色々かな。爺さんも冒険者なら、わかるだろ?隠すつもりは無いけど、ふれて回るつもりも無い」


「あぁ、誰にも言わんよ。どおりで強い訳じゃて」


腑に落ちたと独り頷くネム爺。その横で、耳に手を当て、虚空を見つめるまどか。


『『まどかお嬢様、見えました』』


『位置把握した。すぐ行く』

「爺さん、ハンス、掴まって。らっく、おいで!ジョーカー、飛ぶよ!」


「かしこまりました」


まどかは二人に腕を掴ませ、らっくを抱くとメイド達の位置まで転移する。


「なんじゃこの術は!それに……」


「あのー、爺さん、もう手を離していいから」


「ふむ。なんとも柔らかいのう……筋肉でガチガチという訳では無いのか」


「このエロ爺!まどか様から離れるっす!」


「お前もな、ハンス」


両二の腕をぷにぷにしている二人を土魔術の柱でぶっ飛ばし、前方を見つめるまどか。


「デカいな。それに、様子が変だ」


体長六メートル、錆色の体毛は所々剥げ、斑になっている。充血した眼は妖しく光り、口からは泡混じりの涎を垂らし、鼻は蒸気を吹き出す程息が荒い。

一本角と呼ばれるロングホーンバイソンは今、首や角、手足を捕縛のロープで絡められ、その先を握りしめた十五人程のハンターに、必死に押さえ付けられていた。


「おい!まだか!早く従わせろ!」


声を荒げるリーダー風の男。怒鳴られた牛の獣人は、玉の汗を流しながらスキルを発動している。


「む、無理です。こんな強引なやり方では……」


「うるさい!さっさとグハッ!」


頭を大きく振った一本角に跳ね上げられたハンターに、運悪く横振りされた角が打ち据えられる!必死に押さえ付けていたハンター達は力のバランスが崩れ、次々と振りほどかれ、蹴られ、押し潰された。


「まずいな。まるで薬物中毒者だ。あんな興奮状態で街に突っ込まれたら、只事では済まない。ハンスと爺さんは、あの獣人とリーダーを捕まえて避難。ジョーカー、守ってあげて。らっく、チェリー、コバルト、街へ行かないように、一本角を撹乱、誘導して」


「「倒してしまってもよろしいので?」」


「任せる」


「「かしこまりました」」


この一瞬のやり取りの間に、らっくが一人飛び出した。


「らっくが倒して、褒めて貰うにぃ!」


ネム爺は走りながら思う。


(殺意高けぇなぁ、おい)

次回投稿は、5/1の予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] だんだんまどかの口調がおっさんに戻っていく、、、。
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