ギルドの目覚め 4
その日の夕方。
まどかに随行していた冒険者が、ギルドへ戻った。
「ギルマス、戻りました」
「おぉ、で?アリゲニアは?」
「美味かったです」
「は?」
「唐揚げという調理法らしいのですが、香辛料と麦の粉をまぶして、熱した油で……」
「そうじゃねぇ!討伐は?お前らのスキルアップは?」
「討伐は成功です。あとスキルの方は、解体と料理が少し上がりました」
「驚きました。素材をベストの状態で確保する為に、魔獣の倒し方にまで工夫をするとは……」
「もういい、下がれ」
頭を抱えるギルマス。そこにネム爺がやって来た。どうやら話を聞いていたようだ。
「ふぇっふぇっふぇっ……あてが外れたようじゃな、ラルゴ」
「ネム爺、ギルドではマスターと呼んでくれよ。しかし、こうもボンクラ揃いとは……」
「勘所ってヤツは、実戦を重ねたモンしか修得出来まいて。元々ぬるま湯に浸かっていた連中に、上位者の戦いを見て感じ取るなど、ちと荷が重過ぎたんじゃろ」
「ネム爺が彼奴らを鍛えてくれても良いんだぞ?普段日向ぼっこしかしない好々爺が、あのお嬢ちゃん達が現れて、ヤケにお喋りになったじゃねぇか。滾ってるんだろ?」
「ふぇっふぇっふぇっ、年寄りを揶揄うな。こんな回りくどい事をせんでも、あのお嬢ならば、頼めば鍛えてくれるじゃろうて。あの若さで、あれだけの強者を従える者、面倒見は良さそうじゃぞ」
そこへ、合流したまどか一行が、談笑しながら入って来る。随行の冒険者達から、依頼達成の報告は聞いているが、その見た目からは、とても魔獣を駆逐してきた様子は伺えない。傷や汚れ一つ無く、まるで行楽帰りの家族である。
「なんだ?今日はギルマス、ホールにでてるの?」
「あぁ、のべつ報告が来るからな。この方が早い、お嬢ちゃん達が依頼達成したのも聞いてるよ。報酬も用意してある」
「確かに早いな。んじゃ、貰って帰るか」
「な、なぁ、まどかさんよ、もう一つ頼まれちゃくれねぇか?」
ギルマスのラルゴは、ネム爺に言われた通り、若手の冒険者に、稽古をつけてくれないか?と率直に頼んでみることにしたようだ。言葉の足りない部分は、ネム爺が補足する。流石は年の功と言ったところだ。対するまどかは、
「うーん、やだ。めんどくせぇ」
「ちょ、まどか様ー、そんなバッサリと」
「ね、ねぇ、もう少し考えてあげたら?」
ハンスやメグミも、ラルゴの刺すような目線に、取り繕うように口を出すが、まどかは首を横に振ると、
「なぁギルマス、自分から強くなりたいと思ってるヤツしか、強くはなれないと思う。ギルマスに行けと言われたから、私達についてきた、それじゃ意味は無かっただろ?」
「あぁ、散々だ」
「その気も無いのに、これも仕事だからと嫌々ついてきても、道案内以上の事は出来ないさ。
最初にここに来た時に思ったんだよ。ギルマスと、そこの爺さん、あと数人くらいは、ハンターに対する怒りや、ギルドの将来を憂う気持ちが見て取れた。
それ以外は、諦めて現状維持ってヤツか、若すぎて実感が無いまま流されているヤツかな。まぁ、討伐依頼もまだまだ残ってるんだろ?明日も出るから、来たいヤツだけ来ればいいよ」
「ふぇっふぇっふぇっ、こりゃたまらんわい。見透かされておる。ラルゴ、明日はワシが随行するぞい」
「だからマスターと呼べよ」
「へぇ、ギルマスの名前、ラルゴって言うのか。初めて知った。にしても爺さん、ホントに来るの?」
「なぁに、足手まといにゃならんよ」
ネム爺の眼を見て、まどかは笑顔で頷いた。
次回投稿は、29日の予定です。
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