ギルドの目覚め 2
メグミの向かった先は、荒野だ。
岩だらけの一見歩き辛そうな土地だが、本来は商人達の行き交う貿易路である。なぜこのような悪路を と思うのであるが、
「以前は平坦な、何も無い道だったのですが、ある日突然岩だらけになったんです。しかもこの岩、全部爆弾岩なんです」
某ファンタジーでお馴染みの爆弾岩。下手な攻撃をすると爆発し、近くにいる岩に連鎖する。
「これだけの数が誘爆したら……」
「街にまで影響があるでしょうな」
爆弾岩の攻略方法は一つだけ。魔術による攻撃と、物理攻撃を交互に当てる事。そうやって一定のダメージを与えると、砂のように崩れ去る特徴を持つ。
「なるほど。どれか一つ、一手間違えただけで、お終いでございますか」
「そうなんです。例えば、魔術によるダメージを与えた後、誤って足で踏んで、そいつに物理攻撃を当ててもダメなんです」
「私達も、一体ずつ地道に倒すしか無くて」
「対処が追い付かないんですね……それにしても、いったいどれくらい居るのかしら?」
「メグミお嬢様、でしたらわたくしが、何体居るのか、数えて見ることにいたしましょう」
ジョーカーはそう告げると、まるでボランティアが公園のゴミを拾うかのように、一体、また一体と、時空の歪みへと放り込む。
「二十九、三十……今の所、三十でございます」
「まだ半分も数えて無いですね」
時間にして約二時間、辺りを埋めつくしていた爆弾岩は、全てジョーカーに数えられた。
「全部で九十六体でございます」
ジョーカーは魔眼を発動し、一体も漏らさず回収した。
「うん!綺麗になった。これで安心してみんなが使えるね!」
メグミが、公園を管理する自治会長のような感想を述べる。これが公園のゴミ拾いなら、集めたゴミを一箇所に集めて、収拾車を待つのだろうが、
「ジョーカーさん、数えた爆弾岩、どうする?」
「そうでございますね、このまま誘爆させるのも、些か勿体ない気も致します。戦闘手段の一つとして、このまま持ち帰ろうと思います」
こうして爆弾岩は、リサイクルゴミに分別されたのだった。
ギルドのホールは、いつになく活気に溢れていた。
中央には、突き出た腹を抱え、でんと座っている狸……もといギルマス。ひっきりなしに報告に来る冒険者の話を いちいち執務室で聞いている手間を惜しんで、ここに構えているらしい。
ハンターの情報を 些細な事まで集め、パズルのように組み立てている。そこに数人の冒険者が、曇り顔で入って来た。討伐随行組である。
「なんだ、浮かない顔だな」
「ギルマス、ありゃ無理だ」
「技を盗めるレベルじゃねぇよ」
「ウチなんか、戦闘すら無かったんだぞ」
「終いには、テーブル出してお茶してたし」
「なんだそりゃ?討伐に行ったんじゃないのか?」
「いやいや、結果を言えば、討伐成功なんだが」
「こっちが魔物の特徴を 説明してる間に、ファイヤーバードの首が刈り取られてた。しかも三体」
「ウチなんか、爆弾岩を拾い集めてお茶会だぞ」
「一言で言えば、非常識だ。あれ見てスキルアップなんか、出切っこねぇ」
「けっ!情けねえ……そう言や、何人か足りねぇな」
「ん?あぁ、あのまどかってヤツについてった連中が、まだみたいだな」
「揃いも揃って収穫無しじゃ、お前らを割り振った意味がねぇぞ。ちったぁマシな報告が聞きてぇもんだ」
次回投稿は、27日の予定です。




