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人として 2



ギルドは相変わらず暇そうだった。

まどかがハンター達を黒焦げにした事件は、当然ギルドにも伝わっている。もちろん、ハンターの元締にも。

ただ、たった一人の、しかも女の子にやられたとあっては、ハンター側も怒鳴り込んで来るような真似は出来なかった。メンツというヤツだろう。

ギルドも、例え怒鳴り込まれた所で、ウチとは関係ない旅人だととぼけるつもりでいたが、今の所は来ていないらしい。


「マスターいる?パーティ登録の事で、お願いがあるんだけど」


「ひぃっ!」


カウンターのお姉さんは、まだ少し緊張するらしい。ハンターをまとめて黒焦げにしたと聞かされれば、それも仕方ないとは思うが……


慌てて呼びに行くお姉さん。くれぐれも階段は気を付けて欲しい。


「こ、今度は何の用だ」


「あぁ、らっくをパーティに追加登録したい。カードを発行して」


「わかった。水晶の部屋に案内しよう」


マスターは、ハンターとの一件を聞きたそうにしているが、らっくを愛でるのに忙しいまどかに、話を切り出すタイミングを逃した。


らっくの種族名はやはり亜人、猫の獣人と分類された。職業は操獣士そうじゅうし。獣人特有の職業で、メグミの精霊使いに近い。動物を操り、物量戦で相手を押し潰す。レベルが上がれば、魔獣も従えるらしい。もっとも、


「らっく、お友達を沢山作る職業だ」


と、まどかに言われ、気に入ったからコレにしたらしい。まどか自身も、らっくを戦闘の頭数には入れないつもりのようで、本気で友達作り程度にしか思っていないのだが……


「家族だにぃ!ずっと一緒だにぃ!友達もいっぱいにぃ!」


カードを発行してもらい、らっくはしばらくスリスリしたり、ニヤニヤと眺めたあと、無くさないように大切にしまった。皆でその様を眺めてほっこりしていたが、マスターの表情は曇っている。


「まどかと言ったか、今更言うのもなんだが、その操獣士ってのは、一番ハンターに狙われ易い職業でもある」


「どういう意味だ?」


「知っての通り、ハンターってのは、魔獣を生け捕りにして、高値で売り捌いている。貴族の趣味なのか、何かの研究なのかは知らんが、ここ数年で湧いてきた仕事だ。」


「ん?そうか!」


「気付いたか。獣を従える力、奴らが一番欲しい能力だろう」


「奴らの事を ギルドは調べないのか?」


「表立っては無理だ。法に触れている訳でも無い。個人的に調べてはいるんだが、正直行き詰まっている。どうやら、デカい後ろ盾があるようだ」


「……ようやく読めたよ。マスター、わざとだろ」


「な、なんの事だ!」


「最初にハンターの話を私に教えたのも、奴らが屯している飯屋を教えたのも、らっくのカードが出来上がったタイミングで、操獣士の力をハンターが狙っている事を告げたのも……

旅人の私達に、ハンターの後ろ盾を調べさせ、あわよくば潰そうって魂胆なんだろ?」


「何を馬鹿な事を!俺はただ……」


「先に言っておく。私は遠回しな駆け引きや、謀の類いが嫌いだ。白を切るならそれでもいいよ。私はらっくの安全の為に、早々にこの国を出る。世話になったな」


「ま、待て!待ってくれ!」


「やはりな。ハンターに狙われると言ったアンタなら、私達が旅立つのを止めはしないだろ。むしろ早くこの国を出ろと言う筈だ。違うか?」


「ちっ……流石は高ランクの冒険者と言うべきか。そうだよ、その通りだ。ギルドの危機だ、手段なんざ選んでられるかよ」

次回投稿は、23日の予定です。

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