人として 1
翌朝。
らっくが目覚める前に、ラキュオスは旅立った。ジョーカーがまどかに問う。
「宜しかったのですか?」
「ん?あぁ。私も最初彼の話を聞いて、死に急いでいるのかと思ったが……だから、らっくや私達を巻き込まないように、身軽になって旅立つだろうと。だがどうやら、そうでも無いらしい。彼は、この世界の人として、大事を成そうとしている」
「わたくしは、お嬢様ならば、彼に手を貸す判断を為さるのではと」
「そうだな。らっくが世話になった人だし、考えないでは無かったよ。まぁ、とりあえず今の所は……って感じかな」
「ではお嬢様」
「そうだな、ジョーカーには話しておこう。私が生まれ変わりだと言ったが、実はこの世界に私を呼んだのは、一柱の女神なんだ」
「なんと!」
「多分、彼の言う神とは、同一では無いと思うけど、色々確認は必要だろうな」
「左様でございますか。わたくし共に、何かお手伝い出来る事はございますか?」
「今の所はわからないなぁ。だが、必ずその時が来ると思うよ」
「かしこまりました。このジョーカー、必ずやお役に立ってご覧にいれましょう」
「あぁ、そん時は頼む」
ジョーカーは丁寧に頭を下げると、朝食の仕度へと向かった。
「さて、後はらっくだな」
部屋へ戻ると、メグミがらっくの髪をといていた。寝ぼけ眼で椅子に座らされているらっくの後ろで、丁寧に櫛を通している。
「あ、まどか、おはよう」
「たっちゃん!おはようだにゅ……」
振り返るらっくの頭をガッして椅子に戻し、再び櫛でとかすメグミ。
「あ、うん、おはよう」
ちょっと引くまどか。女の子なんだから、綺麗にしないとね。動いちゃダメよーなどと言いつつ、言葉以上に圧がすごい。
「あ、そのままで、そのまま動かないで聞いてくれ、らっく。お前は、これからどうしたい?」
「に?たっちゃんとずーっと一緒だにぃ!」
「あ、うん。ラキュオスは、どうする?」
「ラキ様も一緒がいいにぃ。ラキ様も好きだにぃ」
「そっか……なぁらっく、ラキュオスは、どうしてもやらなきゃいけない仕事がある。私は、みんなが居るし、ラキュオスとは一緒に行けない。どっちかしか一緒に居れないんだ。あぁ、でも、もう会えなくなる訳じゃないんだ。ちょっとの間だけだ」
「んじゃあ、たっちゃんだにぃ……たっちゃんと一緒に、ラキ様を待ってるにぃ」
らっくは少し寂しそうである。ラキュオスにも情が移っていることは明らかだ。
「そ、そうか……よし。じゃあ、一緒にギルドへ行こう。らっくもウチの家族だよ!って証明書を貰うんだ。らっくも欲しいだろ?」
「しょーめーしょ?」
「あぁ、家族のしるしだ。誰が見ても家族だってわかる」
「欲しいにぃ!」
「よし。ご飯食べたら、行こうな」
まどかは、既にラキュオスが旅立った事を言えなかった。誤魔化すように、ギルド行きを決めてしまったのだ。いつになく焦りの見えるまどかに、メグミはあえて見て見ぬふりをした。
バタバタと朝食を済ませ、全員でギルドへ向かう。メグミに綺麗にして貰った髪をまどかが褒めると、らっくは顔をふにゃりとさせ、まどかにまとわりついた。
ハンスは羨ましそうにジト目で見ている。それをまぁまぁと慰めるチェリーとコバルト。子供に嫉妬するなんて……と呆れるメグミ。まどかは少し歩き辛そうにしながら、ギルドに着いた。
次回投稿は、22日の予定です。




