打ち明け話 2
それから、メグミもここでは無い世界からの生まれ変わりである事を話すが、
「へぇ、生まれ変わりって、結構いるんすね」
と、あっさり受け入れられた。三人の転生者がここに居るのだ。しかも執事とメイドは魔族、今この場に限定すれば、生粋のこの世界の人種の方が少ないのである。
「知らないだけで、結構そんなもんかもしれんな」
と、ラキュオスまで受け入れた。特殊すぎる環境は、人の思考を止めてしまうのかもしれない。まるで休み時間に、七不思議を語り合っている学生並の単純さだ。
「そ、そうかもな(そんなわけ無いだろ!)」
心の中で盛大にツッコミを入れる辰巳。その膝で、不思議そうに顔を見上げるらっく。
「たっちゃん、いっぱいお話してるにぃ。前は喋らない人って、しのぶさん言ってたにぃ」
「ん?あぁ、しのぶか……この姿でこっち来て、誰も知り合い居ないし、右も左も分からない。仕方なく喋っていたら、慣れたのかもね」
メグミが頷く。
「確かに。最初はまどか、あまり喋らない子だったかも」
「あれでも喋るようになった方だったと思う」
雑談モードに入りかけた所で、ラキュオスがスッと手を挙げる。
「せっかくまどかが自分の秘密を話してくれたんだ。私の事も話さねばならんだろうな」
「そう言えば、ギルマスのガルは、ウチのエースは旅ばかりしている……と言っていた。それに、さっき敵討ちと言ってたけど、その辺の話?」
「まぁ、関係ないことは無い。少し長くなるが、聞いてくれるか?」
ラキュオスは、皆が頷くのを見て、語り出した。
「私は帝国から少し離れた小国の出だ。父親は当時、剣聖と呼ばれた達人でな。私も騎士になるべく研鑽の毎日だった。だが、どこまで行っても父と比べられ、挙句私は、その重圧に耐えかね、拗ねものになった。
家を飛び出し、放浪している間に、私は帰る国を失ったのだ」
「国を?どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。この世から消えたんだよ。国が」
「「「!!」」」
「占領や滅亡と言う意味ではなく、消滅したんだ。一柱の狂った神によってな。そいつはわざわざ私に、惨殺される親兄弟を見せ付け、目の前で一国を燃やし尽くした。その神にとっては、お遊び程度なんだろう。私を弄ぶのに飽きたのか、その場に放り出し、神は姿を消した」
「は、話が大き過ぎて、ついていけないっす」
「趣味悪い」
「私の旅の目的は……その神を探すことだ」
「それはもう、敵討ちの範疇を超えてるわ」
「そうだな。仮に見つけたとしても、ランクB程度じゃ、太刀打ち出来ないだろう」
「それが、力を求める理由?」
「そうだ。その神がいる限り、いつまた気まぐれで国を滅ぼすか……この世界には、真の安寧など無いのだ」
「ラキュオス、この世界の人々は、その神の事を知らない。知らないからこそ、心安らかに生活出来るのではないか?」
「確かにな。私も、いたずらに触れて回るような真似はしないさ。ひとつのケジメとして、私一人で神に挑むつもりだ」
「愚かな……おそらくそうする事も、神の思惑だぞ!」
「気付いているよ。私が無謀にヤツに挑むのも、神の余興に過ぎないと……付き合ってやるさ。ただ……余興の駒に、私を選んだ事を後悔させてやる!」
「なぜそれを 私に話した?」
「そうだな……なぜだろう……ある冒険者が、旅の途中で野垂れ死んだ時、一人くらいは知っておいて欲しかったから……かもな」
「……死ぬなよ」
「あぁ。そう簡単に、ヤツの思い通りにはならないさ」
次回投稿は、21日の予定です。




