表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

手配

「はあ、疲れた」


 フォンクはソルセに戻ると、そんな言葉ばかり口をついて出ていた。


「来たときも同じこと言ってましたよ」


 街の入口でリコルが待っていた。


「待ってたのか? 期限の1日内には間に合ったな」と沈む夕陽を見ながらフォンクが言う。

「どうでした?」

「5日後にピュイサン城に入る。で、頼みがある。城の構造、特に家具家財のディテールまで知っているヤツ、もしくはその情報が欲しい。できれば城から剣ごと盗ってこれるヤツがいいけど、いないよな、そんなの」


 リコルは、意味が分からないといわんばかりに額に皺を寄せる。


「雷鳴剣はピュイサンにあるんですか」

「と、ペティフィスは言っている」

「信用できますか」

「これしかない。どのみち、手詰まりさ」とフォンクは左手を顔の横でひらひらさせる。


 リコルも腹をくくったように、

「ここから中央まで、速達で1日半かかります。今から連絡所に行っても発送は明日ですから、往復じゃギリギリですよ。私たちもすぐに支度して出ないと……お金足りるのかな」

「同じ文面の手紙をピュイサンのよろず屋にも出そう。俺の指示でやったと言え。住所はーーーいや、俺も連絡所まで行こう」


―――


 ピュイサンの王都シャトーのよろず屋では、店主が棚の品物の向きを少し動かしては、納得いかない様子でまた動かしてを繰り返している。


 店内に現れたフォンクとリコルを見つけると、店主は作業の手を止め、義足を踏み鳴らして近寄ってきた。


「そう間の空かない再会だったな、フォンク。ここじゃなんだ、店の奥で話そう」


 3人はカウンターの奥にある部屋に入った。


 店主はしばし記憶を辿るようにリコルを見て、

「この子は?」とフォンクに尋ねる。

「助手、……助手? 何だろう。相棒?」

「なんだそりゃ。ハハハ、面倒だろう、この男は」

「ほんと、そうですよ」とリコルが口をとがらせる。


 笑顔でリコルを労わる店主に、フォンクがリコルを指して言う。


「今回コイツがここに来たのは、あくまでイレギュラーだ」

「わかっているさ。人の手配だったな。明日の夜ーーー諜報部で城の情報を持っているヤツを手配しよう。候補は二人いるが、まだどちらが行けるか確定していないんだ。今の任務次第だな」

「よし、明日来れるなら問題ない。どんなやつだ?」

「本人に聞くべきだ」と店主。

「スキルじゃない、人間性の問題だ」

「なるほど、エギューの旦那の言う通りらしいな。明日向かうヤツに、それとなく諭しておこう」


 店主はあえて固有名詞を出さず、ペティフィスが同行する旨に理解を示した。フォンクは手紙にペティフィスの名こそ出さなかったが、協力者の存在を匂わせた。頭の働く者なら、それがペティフィスと気づくように。



 店を出るとき、店主がリコルを呼び止める。


「お嬢さん。……この男に金を管理させるなよ」


 リコルは何か言いかけたが、思い直して懐から金貨の入った皮袋を取り出す。


「大丈夫です。でも、もうちょっと早く言っといてもらいたかったですね」


 店主は店内のカウンターに戻りながら、親指を立てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ