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そうやって、三人の共同生生活が始まった。

 共同生活が始まり、二人はすぐに働き始めた。

 ダイヤは、大手の企業に入社。ルビは、モデルの仕事を始めた。

 私が、二人にお金がない事を言ったのもあるかもしれない。

「任せて」

 と二人は言ったかと思うと、本当に仕事に就いてしまった

 私が、会社を終えて、家に帰ろうとしていると声を掛けられた。

「ねぇ、そこのお嬢さん」

 顔を上げると、ルビがそこに立っていた。

「何してるの? こんな所で」

「ちょっと……京香さんの会社を見ておきたくて」

 私は、申し遅れたけど、杉塚京香。二十四歳。独身、彼氏なし。

「モデルの撮影の仕事が、この近くだったので」

 ルビは、ちょっと照れたように、恥ずかしそうに言った。

「もしかして、会えるかな……と思って」

 いつも部屋では、会ってるのにおかしい人だわ。

 私は、それくらいにしか思わなかった。

「どこかで、お茶していかないですか?」

「うん……いいけど」

 ルビは、それを聞いて目を輝かせている。

「本当にいいの?」

 ルビが、私の手を取った。二人並んで歩く。

 モデルの仕事に就いただけあって、ルビはスラリとした長身だ。

 彼は、古風な感じの喫茶店に私を連れて行った。

「撮影の合間に、ここで休憩しているのですよ」

 ルビは、喫茶店のドアを開けた。

「どうぞ」

 私は、中に入って、店内を見渡した。

 アンティーク調のカウンターや家具などが置かれている。

 とてもいい感じだった。

「素敵でしよう」

 ルビが、マスターらしき男性に挨拶をしている。

 二人で、席に座り注文をする。

「こちらの紅茶が、オススメですね」

「私も同じものを……」

 向かい側に座ったルビが、眩しく感じた。

(どうしたんだろう……いつもと同じルビなのに)

 彼は、マスターに紅茶を注文した。

 しばらく、私が黙っていると、彼は私の顔を覗き込んできた。

「どこか、具合でも悪いのですか?」

「ううん……そうじゃなくて」

「なら、いいのですが」

 私は、胸がドキドキするのを感じた。

 なんだろう。まるでネットで注文する時と同じくらいドキドキする。

 現物が届くまでのドキドキ感が、堪らなくてやめられないのもあった。

 私の買い物依存症……。

 紅茶が運ばれてきて、私達は一口飲んだ。

「美味しい」

 私は、感動に似た美味しさを感じた。

「そうでしよう。私もお気に入りなのです」

 ルビは、香りも楽しむように優雅に紅茶を飲んでいる。

(絵になるな……さすが、王子だわ)

 私は、内心そう思いながら見ているのに気が付かれないようにした。

「大事な話があるのです」

「なに? 大事な話って?」

「私のお后になって欲しいのですが」

「……え?」

「つまり、私の妻になって欲しいという事です」

 冗談だと思った。それか馬鹿にされているのか。

「私の事、何も知らないくせに……」

「それは、これからもっと知っていきます」

「冗談はやめて欲しいわ」

「冗談ではなくて、本気です」

 私は、黙り込んでしまった。ルビが困った表情をしている。

「少し、考えてみて下さい」

 ルビは、私の頬に指で触れた。そこから熱が出るように熱くなるのを感じる。

 私の髪を撫でて、優しく微笑んだ。

 そうしているうちに、時間は過ぎていった。


 自宅のマンションに帰ると、ダイヤが帰ってきていた。

 夕飯の用意をしている。

「おかえり」

 ダイヤは、ルビほど背は高くないが、スリムでバランスのとれた体型をしている。

「ねぇ、ちょっとこれから出掛けない?」

 ダイヤが、私に声を掛けてきた。

「どこに行くの?」

「いいから、いいから」

 ダイヤは、強引に私の手を握って連れて行こうとする。

「でも、ルビが一人になるじゃない」

 ルビは、それを聞いて薄く微笑んだ。

「行っておいでよ」

 ダイヤは、私の手を引いて外に出た。

「ねぇ? どこに行くの?」

「面白いところさ」

 そう言うと、どんどん先へ先へと進んで行く。

 どこからか、笛の音のような音が聞えてきた。

「もしかして、この近くの神社のお祭り?」

「正解! 会社の帰りに見つけたんだ」

 ダイヤと二人で歩いて行くと、幾つかの人並みに揉まれた。

「この世界は、面白いね。こんなものがあるなんて」

 ダイヤは、嬉しそうに私に話し掛けた。

 色んなお店が出ていて、私達は見て回った。

 ダイヤが、金魚すくいをやりたいと言い出した。

「取れても、金魚は連れて帰れないよ」

「それでいいんだよ」

 楽しそうに金魚をすくう彼の横顔を見て、可愛いと思った。

 まるで、子供みたいだと思った。

 ダイヤは、私に綿菓子を買ってくれた。

「これなら、夕飯前でも食べれるだろ」

 二人で、お祭りを楽しんだ後、ずっと手を握られている事に気が付いた。

「あのさ……」

 ダイヤが、急に真剣な顔をした。

「あの……実は、俺の后になって欲しいんだ」

「え? なんて……?」

「だから、俺の嫁さんになって欲しい」

 何だか聞いた事のある内容だと思った。

「え……と、ルビからも同じ事を言われたのだけど」

 ダイヤは、一瞬驚いたようだが、平静さを保とうとしている。

「そうなのか……」

「うん、今日言われたの。というか、さっき……」

「選んでくれるか?」

 ダイヤは、私の前に跪いて、私の手の甲にキスをした。

 私の手から感じるダイヤの唇の感触……胸が強く締め付けられる感じがした。

「どうしていいか……分からない」

 私は、正直に自分の気持ちを言った。

 まさか、同じ日に、二人の王子から求婚されるとは思わなかった。普通は思わないだろう。

「急がないから、考えてみて」

 ダイヤは、立ち上がると私の頭を優しく撫でた。

 その日は、なかなか眠れなかった。

 ルビとダイヤは、もう一部屋に二人で寝ている。

 今日は、色んな事があって逆に眠れないと思ったが、そのうち私は眠りに落ちた。


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