プロローグ
私は、自分の預金通帳を見て、溜息をついた。
そこには、もうほとんどお金は残されていなかった。
「買いすぎたかな……」
私は、買い物依存症だった。欲しい物は買わないと気が済まない。
欲しいと思ったものは、頭から離れなくなり、日常生活にも支障をきたした。
会社、自宅……どこにいても、常にその事が気になり集中出来ない。
「ピンポーン」
自宅のインターホンが鳴った。
宅配便が、ネットで注文した商品を配達してきたのだろう。
案の定、これが注文した最後の商品だった。
「指輪買ったんだった……もうお金ないのに」
綺麗に梱包された箱が、目の前にある。
中身を出してみた。
「わぁ! 綺麗な指輪!」
私は、お金がないのを一瞬忘れるくらい喜んだ。
自分の指にはめてみた。
ダイヤとルビーがはめ込んである指輪だ。
キラキラと輝いたと思ったら、目眩がした。
「あれ? なに……これ?」
指輪から、人影が浮き出たように見えた。
(え? 誰なの? というか何なのよ?)
目の前に、二人の男性が現われた。
「だから、俺の方が綺麗に決まってるだろ!」
「こちらだって、女性に人気なんですよ!」
目眩で、頭がボーとしている私の前で、二人の男性が言い合いをしている。
「あの……」
私は、二人に話し掛けた。
二人は、驚いたようで、私に近づいてきた。
「なに? 俺達の事が見えるの?」
「お嬢さん、いい目をしていますね」
あまりにも、近すぎて息が出来なくなる。
「ちょっと……離れて」
私は、二人から逃れるように身体をずらした。
「見えるわ。あなた達何なの?」
私は、深呼吸して、自分を落ち着かせた。
「自己紹介するか。俺はダイヤ。ダイヤモンド王国の第二王子だ」
もう一人の男性も、自己紹介する。
「私は、ルビーと申します。ルビー王国の第一王子です」
(この人達、本気で言っているの? 大丈夫なのかな?)
「俺の事は、ダイヤでいいぞ。そう呼んでくれ」
そう言ったダイヤは、綺麗な黒髪に大きな瞳と紅を差したような唇をしていた。
「私の事は、ルビと気軽に呼んで下さい。どうぞ宜しく」
ルビは、一礼すると顔を上げた。
長髪の栗色の髪に、色白で涼しげな目元と形の良い唇が印象的だった。
二人は、にこにこ微笑んでいる。
「お……王国って何ですか?」
私の質問に、二人は速攻で答える。
「国だな。俺達のような宝石は、それぞれ国があって」
続けて、ルビが答える。
「私達は、それぞれの国の王子なのです」
「何をする為に、ここに来たの?」
私は、用心深く聞いた。
「特に用事はないのですが……何かの理由で呼び出されたようで」
ルビが、困ったように言う。
「俺達にも分からないんだ」
ダイヤは、飄々とした感じで言ってくる。
ダイヤが、私の部屋を見渡した。
「それにしても、物が溢れてるな……」
「そうですね。この部屋の大きさには合わないようですね」
ルビも、私の部屋をしつこいくらいに見ている。
「ちょっと、あんまり見ないでよ!」
買い物依存症の私の部屋は、買った物で溢れかえっていた。
最初は、棚に入るだけだったのが、その後もどんどん増え続けた。
洋服・靴・帽子・貴金属・化粧用品……とありとあらゆる物がある。
「少し、片付けた方がいいのでは?」
ルビは、栗色の髪をかき上げながら言った。
「俺、手伝ってやるよ」
ダイヤは、大きな目を輝かせながら言う。
「勝手に触らないで」
私の言う事も聞かずに、二人は私の部屋の掃除を始めた。
「これ、どこに置きますか?」
二人は、とても手際が良かった。
どんどん、今まで片付けられなかった物が、片付けられてゆく。
「王子なのに、掃除が上手いなんて」
私が、嫌みのように一言添えながら、一緒に手伝う。
「王子たる者、その場に対応出来ないといけないのですよ」
ルビは、長髪の髪をゴムでまとめている。横顔も綺麗だった。
「そうそう、何でも対応出来ないとダメだな」
ダイヤが、奥の方から声を掛けてくる。
三人で、掃除が完了し、休憩する事にした。
「で、これから王国に帰るの?」
私は、二人の王子に聞いた。
「戻れないよ、そう簡単には」
ダイヤが、普通に答えてくる。
「そうですね。どうやって来たかも分からないので」
ルビも、特に困った様子もなく答える。
「そんな……これからどうする気なの?」
「出来れば、ここに」
と、ルビ言おうとした瞬間
「ダメよ!」
「そんな事言わずに、置いてくれよ」
ダイヤが、哀願してきた。
「自分達の事は、しっかりやりますから、お願いします」
「この世界に、適応して生きていくからさ」
二人に、頼み込まれて、もう断れなくなっていた。
「分かったわ。だけど、しばらくだけよ」
「有難う!」
「有難うございます」
なぜか、二人に抱きつかれて身動きが出来なくなる私。




