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ゴーストモンスター ヒビキ  作者: ネコパンチ
5/13

レッドウルフとゾンビの出会い

俺は、ビッグボアを虚ろな瞳で凝視する。

怒りと恐怖の入り交じった表情をしている。

今から喰われることへの絶望感が、捕食者である俺の空腹が満たされることを実感する。


「プギィィィィィィ!!」

ビッグボアは俺の顔面に蹴りを入れ、俺がよろめく隙に逃走する。追いかけるつもりはない。空腹は少しだけ満たされたのだから。


俺は自分の住処へ帰るのだった。





「ダメだ。いねえ。」


シキは街でヒビキを隅々まで探していた。


「一旦、住処まで戻ろうよ。今日の所はここまでにしてさ。それに日が暮れちゃった」


街で長居するのも危ないと思い、フィンズはシキを帰るように言う。

ヒビキ、シキ、フィンズ。この3人は言うなれば底辺住民である。盗みなどを行うときは姿形を変えて行う。今は普通の格好だが、長居すると衛兵にバレて捕まる可能性がある。


「それもそうだな。」


二人はとりあえず帰宅しようと歩き出す。

街を出る。自分達の住処は街を出てしばらく歩いた森にある。そこには狂暴なレッドウルフが生息しており、人間は気安く近寄ることはできない。そのレッドウルフに育てられたのが、シキである。


街を出て少し歩いた所で、子犬がシキに寄ってきた。ベビーウルフである。レッドウルフの子供であり舎弟。小さい体で素早いため、偵察に優れるらしい。その子犬がシキに何かを伝える。シキはレッドウルフに育てられた為か、言葉がわかるのだろう。


「なに!? ゾンビ!? 奴は強い!? 今の住処は捨てて逃げろだと!?」


シキは驚愕した表情で話を聞いている。シキが慌てるなんて珍しい。相当な深刻なことが起こってるんだろうとフィンズは察する。だがシキの気持ちはわかる。なにしろ…


「ゾンビなんて、この辺りに生息するなんてありえない。そもそも日が出た時点で消滅するんだからね。だからはるか東の孤島、デスノイズにしか生息できない筈だよ?」


「それがよフィンズ、あのゾンビは全身を布に覆ってて、日光を遮断しようと試みてるらしいぜ!」


ええっ…!と僕は驚く。ゾンビは基本知恵を有さない。それ故にゾンビ、スケルトン、ゴーストなど、アンデットモンスターの生息地は限りなく限られる。日が当たらない場所にたまたま生まれてからずっと居ること意外は地表に出てくることなんてありえないのだ。


「だからってよぉ、ピン!俺がお前らを見捨てると思ってんのかよ!?安心しな。お前は隠れてろ。俺とフィンズがなんとかしてやるぜ!」


ええっ…!と僕は驚く。僕に選択肢はないんだろうか…ピンとは子犬のことである。シキとピンは特に仲がいい。


「わ、わかった。僕も行くよ。でもその前に作戦を考」

「よっし!いつまでもノンビリしてられねえ!今すぐ親父達を助けにいくぞぉ!フィンズ!」


…僕の意見は無視である。まあわかってたことだ。。シキはこうなったら止められない。いくつかの困難があったが、僕らはお互いに支え合ってきたんだ。いつものように僕は慎重に行動しよう。



「俺だよ俺! ヒビキだよ! 今はゾンビだけど、色々あって大変だったんだよぉ! 信じてくれよぉ! オヤジィ!」


「グルルルルルル…」


ダメだ全然話を聞いてくれない。ヒビキは嘆く。別になりたくてなったわけじゃないのに…

匂いでわかると思ったのに…やっぱり俺には腐臭しか漂ってないみたいだ。このままじゃ、心も腐ってしまう…

とは言っても、オヤジ(レッドウルフ)は一向に襲ってくる気配はない。迷っているのだろうか。俺はその思いに応えなければならない。この俺だという証拠を必死に考え、訴えるしかないのだ。



「グルル…(なんという腐臭だ…鼻がひん曲がる…ゾンビごときに遅れをとる我ではない…爪や牙で奴を殺すことは簡単にできるのだが…)」


爪が臭くなったり、増してや牙などで攻撃すれば、牙や、口が臭くなるのではないかとレッドウルフは考える。尋常じゃない程の腐臭なのだ。ゾンビを撃退したとて、今後、この森の長として君臨するにあたって爪や口がうんこ以上に臭かったらと考えてしまう。


「ア…アア! アアア!」


ゾンビが不快に唸る。気味が悪い。ゾンビと相対するのは初めてだが、こんなにも臭いのか。嫌になってくる。この森を捨てたい。部下のウルフ達も森を出ている。

ゾンビが変なポーズで近寄ってくる。もう限界だ。逃げるしかないな。


スッと、ゾンビとの距離を取る。

するとゾンビはダッシュでこちらとの距離を縮めてくる。

…このゾンビは俊敏性に長けているようだ。もしかしたら我との実力は五分なのかもしれない。それに加えてあっちは臭い。もう勝てないなこれは。逃げるか。よし、もう逃げよう。1秒でも早く逃げよう!



レッドウルフはゾンビから退却を決断するのであった。






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