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ゴーストモンスター ヒビキ  作者: ネコパンチ
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悲しい夢

俺は外に出て周囲を見渡す。

森林。

月明かりもなく、闇夜に覆われた景色にも関わらず森林だとわかったのは、見えるからだ。

暗いのは暗いんだが、昼間のように遠くまで見える。これもゾンビ化の影響なのだろうか。

それに、この景色は見に覚えがある。


この間仲間達と、ビッグボアの狩りのときにこの森で出くわした気がする。

ビッグボアとは大きな猪である。兵士5人で辛うじて仕留められるレベルの魔物。

俺たちはそれで死にかけた。今となってはバカみたいだなと思う。


おっと、思い出に浸ってる場合じゃない。ここに見覚えがあるならこっちのものだ。

あとは俺達の住処に帰るだけ。戻って仲間と再会できる。

だが、俺のこの姿を仲間達はどう思うだろう?もしかしたら俺は殺されるのかもしれない。

不安を残しつつも、帰り道を歩いていく。



それにしても…腹がへった…肉が食べたい…尋常じゃないくらいに食欲が増す。

まあ、何日も食べてないのかもしれないしな。でも、ゾンビでも腹が減るんだな。

お!チキンバードだ。うまそうだぁ…焼く時間ももったいない!生のまま、頂こう。


「待ぁてぇやぁぁ!そんなうまそうな肉ぶらさげやがってよぉおお!」


俺は食欲の赴くまま、チキンバードに襲いかかる。


「コケェェェ!!」

俺は瞬時に胴体を両手で押さえ付け、食らい付く。

うまい。うまい!

俺は夢中になり、チキンバードを骨ごと平らげる。気がついたら飛び散った血しか残ってなかった。そして、なぜか全く空腹感が満たされていない。

不安がよぎる。

なぜか食事中の記憶が無い。考えている間にも凄まじい程の食欲が押し寄せてくる。頭の中が次の獲物でいっぱいだ。

もしかしてこの体は、尽き果てるまで生き物を貪り続けるようになっているのではないか…?


どんどん意識が薄れていく。凄まじい食欲によって。次の獲物、次の獲物と思考はそれだけになっている。そして、俺は気を失ってしまうのだった。



「おいフィンズ!あいついねえぞ!迷子になっちまったか!自分の住処もわかんなくなっちまったのか!?だとしたらあいつの仲間もうやめるぞ」


「落ち着きなよシキ。ここにピノの木のナイフが落ちてるよ。ヒビキはいつもナイフを持参してるから…多分…」

「さらわれたってことか…?」


フィンズは頷く。


だが誰がさらったのか?少なくともこの街の者ではないだろうとフィンズは考える


勿論この付近にも盗賊や人さらいなどの人もいる。だからといって簡単に捕まるような人じゃない。

「とにかく街の中を探してみよう!」

フィンズとシキは街の中を探し回った。



「ああ!?俺の財布がない!?」

働き手が見つからない俺はムシャクシャして、スリを行っていた。

…これは?ああ、夢か。昔の…。

「あいつ、ヒビキだ!!ただの平民ならいざ知らず、普段から盗みなどを行っているから働き手が見つからないのは当たり前だし自業自得なのに、逆ギレして盗みを働くことで有名だ!2つ名を、逆ギレのコソドロ!!この街で奴に敵う奴なんかいない!警備は何をやっているんだ!!」


「ああ悪かったな逆ギレで!!だがな、学歴で採用基準がきまる仕事しかないこの街もどうかしてるぜ!!しかもその学校も金が無いと入れない!!俺のような孤児はどうすればいいんだよ!」


「冒険者でも目指せばいいじゃねえかよ!その腕っぷしなら、それなりの収入は期待できんじゃねえのか?え?」


こいつらは魔物の恐ろしさをわかってない。最弱のチキンバードと言われる魔物でさえも、兵士3人で倒せるかどうかだ。

増してや冒険というのは1人で行うには自殺行為だ…。

この街の人間にとって、俺みたいな孤児はどうでもいいんだろう。腹が立ってくる。


キャンディを買おうとしている男の子が目に映る。

…こいつもぬくぬくと生きてるんだろうな。学校にも普通に行けて。

俺はそいつの財布を奪う。


「え!ちょっとまってください!僕の財布を帰してください!」


「やなこった。話しかけんなよ。うるせえガキだな」


「それには、僕の3ヶ月分のお小遣いが入っているんです!お願いします!返してください!」


…俺はそれを聞いて心が痛む。

俺は振り返り、男の子を見る。悲しそうな表情。わかってるよ。俺が不幸だとしても、この人には関係ない。いや、街の人には…。


俺は男の子に財布を返し、この街から去る。

俺が孤児となる直前、母も悲しそうな表情をしていた。

「ごめんなさい。私はあなたを不幸にしかできないの。これを持って親戚の家でお世話になりなさい。ね?」諦めも含めたその言葉は、五十万ゴルを残し、両親は大人達に囲まれて、一瞬のうちに消えてしまった…



俺は目を覚ます。


そこには、ビッグボアを今にも噛みつきそうな体制を保っていた。


俺はビッグボアと目が合う。それは驚きと恐怖を含んだ目。俺を心底恐れているようだ。




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