捕まった後
「ぐああああああああああああああ!!」
ゾンビパウダーを飲んだ瞬間、全身に激痛が訪れる。必死に暴れようとするが、手足は縛られたまま。全身の痛みを和らげることさえもできずに、苦しむ。
助けてくれ!!と、俺をこんな状況にさせた連中に命乞いをするが、高笑いを続けたまま、俺を見ていた。
許せない。俺が何をした…痛みと、怒りの気持ちによって復讐心が出てくるが、そこで意識が途絶えてしまった………
「あれ?おっせぇーなぁー!ヒビキの奴!何してんだよー!お腹でも下したか?」
シキはあの店の前で待っていた。
あの店とは、焼肉店である。新しく仕入れたオークの肉がおいしい!と評判のお店。
「僕がいながら、雑草でお腹を下すわけないよ。僕の雑草管理は完璧さ。きっとヒビキは迷子なんだよ。ほら、この間だって森で迷ってさ、散々な目に合ったじゃん」
フィンズは肩をすくめる。
「でもよ、入り口の近くだぜ?この店。迷う要素あるか?あるとしたら方向音痴の話どころじゃねえよ。頭やばすぎる。俺だったら人生やめちゃうね」
「…確かに言われてみればそうだね…。何かあったのかな?一旦戻ってみる?」
「そうだな。ホントなにしてんだよヒビキの奴!ああ!オークの肉、早く食い逃げしたかったのによぉ!」
こうしてヒビキの仲間は自分の住処へ戻るのだった。
俺は目が覚める
見知らぬ天井。
「目が覚めたかね。実験体1号クン。イーッヒッヒ!」
そこにはゾンビがいる。
ああそうだ。俺、変な研究所に連れ去られて、ゾンビパウダーとかいうやつを飲まされたんだ。
全身の痛みは消えている。体もだるくない。むしろ軽い。なんだこれ。手足の固定具も簡単に破壊できそうだ。
周りを見る
この部屋にはゾンビがいる。ん!?ゾンビ!?
そこで自分の体を見てみる。
全体的にドロッとしてて、腐ってるみたいだ。
側にいるゾンビと同じ容姿をしていたのだ…
ああ…俺は死ぬのか…何も果たせずに…せめて結婚はしたかった…
「お目覚めですかな?おやおや…どうやら自分の容姿にお困りの様子…説明して差し上げましょう。イーッヒッヒ!ゾンビになる原因は、肉体の機能が停止したとき、精神がごく希に肉体に定着してしまうことなのですよ。とくに強い未練や憎しみがあると起こりやすくなる…この私のようにね…イーッヒッヒッヒ!」
「俺はまだ死んでいない!」
俺は逃げる機を伺う。こいつ動きがトロそうだ。いけるぞ。
「待ちなされ。ヒヒ…精神が定着した肉体は…例えどんなに破壊されようとも、死ぬことはありません。ですが、弱点があります。いかに肉体に定着した精神といえども、太陽の光に晒されれば、解き放たれてしまうのですよ。未練が弱ければ弱いほどにね。つまり、太陽の光が弱点なのです。」
「じ、じゃあ俺も…日の光を浴びたら、死んでしまうのか…」
なんてこった。これじゃあ逃げても意味ないじゃないか。一生日の当たらないところで過ごすというのも嫌だ。俺は旅や冒険をしたい!どうすればいいんだ…
「イーッヒッヒッヒ!最後まで話を聞きなさい…あなたの場合、肉体の機能がまだ生きている途中で、ゾンビになった。これの意味がわかりますか?イッヒッヒ…イーッヒッヒッヒ…イーッヒッヒッヒ!」
「日の…光を…浴びても…死なな…」
「不正解!!あなたはバカですか?早とちりにも程がありますよ。いいですか?肉体の機能は生きていると言いましたが停止しています。しかし脳は生きているのです。つまり、考え、覚えられるゾンビなのですよあなたは。日光を遮断する魔法も習得できるのです…!!ゾンビパウダーとは!!無敵の生物を作る化学兵器なのですよ!!イーーーーーーッヒッヒッヒッヒ!!!!」
「ということは…ということは…俺が最強の生物になったということに…」
「その通りですよ…なんと羨ましい…私も生前にこのゾンビパウダーがあれば…まあ過ぎたことは置いときましょう。では、洗脳を始めさせて頂きますよ…イヒヒヒヒヒ…闇に紛れし哀れな子ひつ…」
!!!まずい…逃げないと…でもどこに…
仕方ない!とにかく出口を見つけないと!!