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ゴーストモンスター ヒビキ  作者: ネコパンチ
12/13

真実の記憶

俺は穴の中で、仲間にどうやって布を取ってきてもらうように伝えるか…

それを考えていた。


「リカバ草どこだよぉぉぉ!!」


「うっさいよ!シキ!!すぐに見つかるわけないじゃん!街を出てすぐに見つかるんだったら、依頼なんて出ないよ!もう、ホント…ちょっと頭痛いんだからさぁ…」



よかった。フィンズもいた。

フィンズとは話し合いたいことがある。

腹を割ってね。


思わず自分のお腹を触る。

…そこには背骨しか無かった。

割る腹なんてなかったんだ…


ゾンビ、いや、スケルトン?になってからブラックジョークが上手くなった気がする。

ま、それを伝える口なんて無いんだけどね!


よし、落ち着いてるな俺。


俺は土の中にある小石を真上に投げる。


「フィンズさんよぉ!便秘だからってイライラすんのは良くないぜぇ!!30分くらいかかってたよなぁ!!うんこは5分出なきゃ諦めるのが鉄則よぉ!!」


「朝から下品なこと言わないでよ…もうホント…昨日の話ちゃんと聞いてたよね!?リカバ草の特徴」


「おう!要はこの草と同じものを見つければいいんだよなっ!?」


「そう。だけど似てるものが多いから、注意深く見るんだよ!」


「わぁーってるって!」


ダメだ。気づいてくれない。

俺は大声を出す。

「アーーーーーー!!!」


「お!?ヒビキか!?どこにいんだぁ?」


よし、反応してくれた!

もう一回、小石を真上に投げる。


「お!なんだなんだ、穴空いてるぞフィンズ!!こっち来てみろよ!!」


「う、うん」


気づいてくれたシキに、ジェスチャーで伝える。


ババッバババババババババババババババ


「おい!なんだぁ!?そこに穴空いてたのかぁ!?それで、誤って落ちちまったのかぁ!?ハッハッハッハ!!…って、おい!!お前骨見えてるぞ!!お!?病気か!?フィンズの便秘が移ったか!?」


布だよ布!事情は後で説明するから!!

フィンズ!頼む!伝わってくれ!!


「布だよね?ヒビキ!今持ってくるね」


コクコクコクコクと俺はフィンズに首を上下に動かす。

流石フィンズ!もう絶対離さないからな。


「なんかよくわかんねえけど、俺ぁ先に、リカバ草探してくるからなー!!依頼達成したら、焼き肉と酒だぜ!!!ヒビキにも持っていくからよ、楽しみにしてろよなぁ!!」



そうか。シキがご機嫌な理由がわかった。温かい奴だなシキは…

そうだよな。俺達は冒険者だ。これで食っていくんだ。

これからなんだよな俺達は。



しばらくするとフィンズが布を持って戻ってくる。


「あれ?シキは?」


俺はジェスチャーする。


「ああ、先に行ったんだね」


俺は布を全身に巻いて穴から出る。

ふう。助かった。


「僕達も行こっか。って、ヒビキ?」


俺はすかさず足元の木板をフィンズに渡す


[あの護衛達には俺らの事を秘密にするように言っておいた だから安心してくれ]


「…気づいてたんだね」


俺はコクッと頷く。


「……僕が憎くないの?殺したくないの?」

フィンズが下を見て、小刻みに震えている。

俺は首を横にふる。


「なんで!?出会ったときから僕はヒビキを監視してたんだよ!?盗賊に襲われたよね!?大金を奪われて!!僕、それを見て見ぬふりしてたんだよ!?」


フィンズは泣きながら俺に訴えかける。俺の肩を揺らしながら。


わかってるよ。でも本意ではなかったんだよね。監視に徹底するんだったら、俺を…憎しみと罪悪感を持つように促すはず。



だってそれが


ゾンビ化への効力を


最大限に活かせる方法なんだから





俺は木の板をフィンズに渡す。


[でもいっぱい助けてくれた 逆なんだ 俺はフィンズにお礼とか言えてなかった]


「なん…でだよ…僕は…ゾンビ化なんてさせたくなかった…!命令だったんだ…!!科学組織ジャスミンの…!!!」


俺は諭すように、フィンズの背中を叩く。


うん…!

うん…!!

わかってる。


科学組織ジャスミン。


俺をゾンビ化させた研究所。

赤衣。


俺は今まで吸収してきた感情の力を使って、過去を思い出そうとしていた。

自力では無理だった。

なぜか肝心なときに、モヤモヤが膨らみ、遮るように。

でもいけた。





「いやぁぁぁぁ!!離して!!!ヒビキ…ヒビキ…!!!」



「ねえお母さん?この人達、誰?」



「なんだお前らは!離せ!離せぇぇ!!」


「この子供を実験体とする。」


「とても素直な子だ。さぞ、憎しみと罪悪感を染み込ませることができよう。ククク…」


「生きながらにして、…世を憎み、他を憎み、親を憎む…そして全ての悪事を肯定し、人としての本質をねじ曲げる。それがゾンビパウダーの効力を最も引き出せるのだ。」


「今後が楽しみというものだな。」



「大人しくしろ!」

怒声を放つ赤衣は、ヒビキの両親の頭に手をかざす。両親は力なく項垂る。


母親は戸棚から、五十万ゴルを出すと、力なく、ヒビキに言う。


「ヒビキ…」

「フン!今ここにあるものを失えば憎しみの糧に成ろうと言うもの!消し去ってやろう!」



グシャっ


「お母さん………お母さん?ねえお母さん!ねえってば!!お母さあーーーーーーん!」

「あっあああっ…ああああああああ…」

子供は頭を掻きむしる。執拗に。頭皮が破けるのではないかと思う程に。


「む!子供の様子が…大丈夫なんだろうな?」


「ふむ、壊れたか。催眠をかけておけ。この程度なら問題ない。」


……


「わかったよお母さん。コウロ街だよね?このお金、大事にするから!だから…いつかまた戻ってきてね!」


子供が、自分の母親と話しているであろう目線の先は、満面の笑みを浮かべた赤衣であった。


……


その子供は、笑顔でコウロ街へ出発する。





フィンズ、シキ、オヤジ、ピン

その他にも俺を助けてくれた人達がいる。


ずっと1人だったら俺は…

科学組織ジャスミンの思惑通りだったら…

力の限り、暴れ尽くしていただろう。



心の黒い渦は、拡散して、俺の全身に行き渡る。

俺のこの体は、感情の100%を力に変えられるんだろう。


俺のこの力は、仲間を守る為にあるんだ。


さっさと赤衣野郎共を倒して、冒険の続きといこうか!!



『フィンズ、俺は大丈夫だよ!お前の方が辛かったんじゃないか?ずっと隠してて…』


俺は喋れるようになっていた。だがそれはどうでもいい。

「え?僕が…?そんなことない…僕は…僕は…」


なんか、湿っぽくなってしまった。

まあ俺のせいでもあるんだが…よし!


『とにかく、依頼をさっさとクリアして、シキと3人で不幸自慢でもしよっか!!焼き肉食って酒飲んで!!』


「…え?この依頼での報酬では、高価な物は買えないよ?シキは冗談のつもりで言ったんじゃないの?」


『え?』


「え?」















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