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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

後悔は後の祭り

作者: 夢野 碧海

注意事項


・暴力沙汰や流血表現が苦手な方はご遠慮ください。

・フィクションではありますが、軽いいじめのような描写があります。

・…人を殺すなどの表現が苦手な方もご遠慮ください。


合言葉は、「親殺し、子殺し」です

 何故、僕だけがこんな思いをしなければいけないのだろう。

 目の前には見知った顔の人が寝転んでいる。

 足を少し浮かすと、ピチョンと音を立てた。

 「また、派手にやったなぁ」

 誰かが僕の後ろから姿を現した。

 「満足した?」

 笑顔で聞いてくるそいつに僕は返す。

 「いや、後悔ばかりだ…っ」

 泣くことのない僕の目には涙が浮かぶ。

 「あ~らまぁ~」

 おちゃらけたそいつを余所目に僕は薄暗い倉庫から出た。

 手に持っていた小さなメモ用紙をくしゃりと握りしめた。


 昔の話し。

 母親はヒステリックに叫ぶ人で、酷いときは僕に暴力を振るった。

 父親は母にも僕にも見向きもせず、ホテルのように家を出入りしていた。

 母親が感じたストレスは全部僕に降りかかってくる。

 たまに家の廊下ですれ違ったとき、父親に言われた。


 『すまないな、母さんを任せてしまって』


 父も気がめいっていたらしく、母に関わらなくなった。

 そんな父と母を見るたびに嫌になる。

 僕には表情というより、感情がかけている。

 物心ついたときにはあったとは思うが、今の生活に問題ない。

 …いや、問題はあった。

 「お前、マジで気持ち悪い」

 「何で生きてんの?」

 「早く死ねよ…」

 学校中から嫌われ、先生にもストレスの捌け口とされていた。


 「お前らが死ねや」


 僕の呟きは青い空に消える。

 僕の心とは裏腹に、空は見事な晴天だった。

 「すべて、消えてしまえばいいのに」

 屋上を出て教室に戻る。

 授業中もヒソヒソと僕への悪口が聞こえた。

 「本当に消えてしまえればいいのに…」

 でも、嫌いな奴の為に死にゆくのは尺に来る。

 そうだ…、


 「あいつらを殺してしまえばいいんだ」


 僕の心は既にボロボロで、何も感じなくなっていた。

 壊れた心の修復は難しい…。


 僕は復讐を決意してから夜中に出かけることが多くなった。

 母親も父親も眠った頃に家を出る。

 立ち入り禁止区域とも呼ばれる夜の世界の路地裏。

 スリや犯罪者が数多くいると噂されていた。

 僕にとっては解放空間であった。

 「さて、何をしよう」

 毎日毎日遊びに来ては何もしないで帰る。

 今日こそ、何かしたいと思っていた。

 街灯も家の明かりも何もないところに、お店の看板が点灯してる。

 僕はフードを深く被って店内に入った。

 人はそこまでおらず、真っ直ぐにカウンターに行く。

 「新顔だね、何が望みだ?」

 流石に復讐とは言えず、

 「アルコールがないもので」

 「じゃあ、炭酸な」

 そう言われて出されたのは瓶の炭酸飲料。

 一口くいっと飲むと、口の中に炭酸のシュワシュワが広がる。

 「…美味しい」

 「そうかい、そりゃよかった。お金は500円だけどあるかい?」

 「ああ」

 そう言って僕はズボンのポケットからお金を取り出した。

 「毎度あり、また来てな」

 まだ中身が入った瓶を持って外に出る。

 空が少し明るくなってきた。

 急いで両親が起きる前に家に帰る。

 面白い、と僕は久々に胸が高鳴った。


 何事もなかったかのように振る舞う。

 本当につまらないと感じた。

 授業も退屈だ、面白いとさえ感じない。

 いつものようにいじめられるが、興味がないので反応はしない。

 「はぁ、退屈だ…」

 何されても、何をしても暇でしかない。


 何故、こんなことをされたのか。

 いつされたのか。

 そんなのは明白である。


 「10分も待ってらんないのかよ」


 机と椅子、そして鞄に荒らされ跡があった。

 クラスを見渡せば、ニヤニヤとクスクスという声が聞こえ、表情が見えた。

 自分の中で苛立ちが溜まっていく。

 ついには、


 ガンッッッ!!!


 自分の机と椅子を蹴り飛ばしてしまった。

 クラス全体が静かになった。

 そして聞こえてきた言葉。


 「何様のつもりだよ」


 お前がな、とは思ったが口にはしない。

 鞄を手に取り教室を出た。

 黒と迷彩柄の服を身に纏って外に出る。

 誰にも気づかれないように屋根や塀を伝ってお店を行く。

 「あ、来た。ミナト」

 「…学校は?」

 「「全員サボり!!」」

 「またか…」

 いつの間にか崩れた口調で話せる奴らも出来た。

 「ミナトもサボり?」

 「いや、行ったけどムカついたから出てきた」

 「あー…クラスの奴らな」

 ここに集まる奴らは僕と同じ境遇の人もいたりする。

 「関わりたくなかったら、話しかけてこなければいいのにな」

 「あのビビってる態度が気に食わん」

 いつも飲んでいる飲み物を口にしながら和気藹々と話す。

 「ミナト、今日もやるのか?」

 「ああ、頼む」

 「「がんばえー」」

 店の奥から出てきたのは、格闘技が得意なマサキ。

 何もできなかった僕に戦う術をくれた人だ。

 棒読みで声をかけるのは、カナデとカエデ。

 双子だが得意なことは違ったりする。

 運動神経が抜群なカエデは何故か暗殺スキルが高い。

 カナデは頭が良く回転が速い。

 特異体質のせいか「化け物」と呼ぶ奴がいるとカエデから聞いた。

 カエデからは暗殺スキルを、カナデからはナイフの扱いを教えてもらった。

 マサキとカエデとカナデから聞かれた質問がある。


 「この力を、お前は何に使うの?」


 僕は素直に答えた。

 「復讐と、自己防衛の為だよ」

 3人と一緒にいても相変わらず笑えない。

 楽しいのに、過ごしやすいのに何故だろうか。

 マサキと手合わせ中の休憩時間。

 「もう、いいと思う」

 「そうか、ありがとな」

 「ああ…。お前は、家族と話さないのか」

 3人と店のマスターは僕のことを知っている。

 「話そうとしても会話にならないよ。母親は僕を見るだけで大声で叫ぶし、父親は…もう何がしたいのか分からない」

 つい先日、父親に言われた。

 「最近、どこに行っているんだ?」

 夜中に家を抜け出していたことがバレてしまった。

 今更、どうにかしようとしているのか。

 「コンビニに行ってるだけだよ、母さんが寝てる時間しか外に出れないからね」

 どんな態度を取られようとも僕は文句も言わず家事のすべてを熟してきた。

 これぐらいは許してほしい。

 すべてを放棄した父親に、すべてを認めない母親。

 何となくでいじめてくる学校の奴ら。

 僕は既に狂っていた…。


 「本当にするの?後悔するよ、絶対」

 マスターが僕に心配しているような面持ちで言う。

 「それでも、もう手遅れなんです。どう足掻こうとも昔の僕はもう戻ってこない」

 失われた心は2度と…。

 「でも、一番辛そうな表情してる」

 「分かりませんよ、僕には既に感情も表情もないから…」

 僕はいつも通りフードを被って店を出た。

 マスターは不安そうな表情で店を出て行く弱々しい背中を見つめた。


 僕は夜、倉庫に向かった。

 母親も父親も家にはいない。

 さて、どうしたものか…。

 「やあ、皆。ご機嫌はいかがかな?」

 目を細めて偽物の笑みを浮かべる。

 「何してんのよあんた!!縄、解きなさいよ!」

 誰よりも先に声を上げたのは、やっぱり母親だ。

 「うるさいなあ…」

 貼り付けた笑顔から真顔に戻る。

 父親も学校の人達も状況を理解できていなかった。

 先生は怯え、クラスの人達も少し震えている様だった。

 父親が口を開く。

 「ミナト、俺達はどうしたらいい」

 「は?」

 父親の言葉に僕が理解できなかった。

 「お前にしてきたことは十分に分かっている。」

 分かっているなら…。

 「どうすれば、許される…っ」

 どうしてあの時…。

 「ミナトっ…!」

 「僕が叫んだとき、やめてくれなかったの…?」

 自分でもびっくりするほど幼く震えた声。

 「僕、やめてって叫んだ。だけど…父さんも母さんも喧嘩をやめてはくれなくて。挙句の果てには僕を殴った」

 その場の空気が重くなる。

 「…僕は僕を殺してきた。僕の心を壊したのはあんたらなのに、許されると思ってんの?」

 「許したら返してくれるの?許したら元に戻ってくれるの!?」

 「できもしないこと、言わないでよ…」

 僕は学校の人達に歩み近づく。

 「楽しかったですか、僕をストレスの捌け口にして…。どうしてお前が大人なんだろうな」

 「お前らも…っ」

 言葉が喉の奥で詰まる。

 「これは、僕の復讐劇なんだよっ!」

 僕は狂ったように笑い声をあげる。

 誰もが怯み、逃げ出そうとしてる人もいた。

 だけど、逃がすわけない。

 「ははは、、、さ・よ・う・な・ら」

 同じクラスメイトだった人達が次々と倒れていく。

 僕の足元に赤い水たまりができた。

 間近で見た教師は僕から距離を取って逃げる。

 「ねえ、先生。僕ね?少し期待したんだよ。…先生は僕の言葉を聞いてくれたから」

 数本のナイフを投げて追い詰める。

 「でも先生は、裏切った。それだけでなく、僕を標的になしあげたよね…だからさぁ!!」

 「僕の標的【ターゲット】になってよ」


 先生から離れて両親と向き合う。

 「……」

 何も言わずに母親の喉を掻っ切る。

 この人に何か話したところで変わらない。

 武器も持たずに父親に近づく。

 そして聞くんだ。


 「ねぇ、僕の事…愛してた?」


 父親はコクリと頷く。


 「じゃあ、息子で良かったと思ったことは?」


 次もまた頷く。

 父親は言葉を話す。

 「お前は自慢だったよ。変化にも気が付いていた、だけど…俺自身が弱かった」

 最期だ、話を聞く。

 「母さんも、最初はお前を可愛がっていた。失うことが怖いくらいに」

 じゃあ何故…。

 「…どこで」

 「何処で間違えたんだろうな、俺にも分からない」

 父親は僕に申し訳なさそうな顔で言う。

 「母さんを止めることができなくて悪かった…」

 命乞いをしているようには見えない。

 「だけど、これだけは忘れないでくれ…」

 「――っ」


 父親の最後の言葉を聞いて心臓を貫く。

 「あららぁ~、派手だねぇ。好きだよ?こーゆーの」

 カナデが歩み寄ってくる。

 「でも、これはやりすぎだ」

 カエデが静かに言う。

 「ミナト…」

 マサキが僕の肩に触れる。

 その時気が付いた。

 自分が泣いていることに。

 愛されていた、望まれていた。

 今までの思いが涙で出てくる。

 ああ、終わってしまった。

 全部、、、全部全部全部!!!

 自分の過ちに今更気づく。

 あの時、マスターの言うことを聞いていれば。

 あの時、マサキの言う通り、会話をしていれば。

 あの時、面倒臭くても何か言っていれば。

 それらすべて、後の祭りだ。

 父親が手渡ししてきた小さなメモ用紙を開く。

 そこには母親の字で、、、


 【ごめんなさい、愛してる】


 と昔に見た覚えのある字で書かれていた。


サイコホラーなのか良く分からないが、グロテスクなのは間違いない。

昔に書いた小説を少しだけアレンジして掲載!

いや、本当…。書いてて鬱になるよ、これ。

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