第10話
”アオカラス”の誘導魔法に従い、羽の指し示す方向に向かって二人は進む。だが、指し示す方向は目的地そのものだ。
「ぐえぇ、また草むら!」
つまり、回り道があっても真っ直ぐ進むしか無い。
「というか、なんで私が先頭なんですか!?」
「つべこべ言うな!追跡魔法を切らさないようにするためにはな、高い集中力が必要なんだ。ほら、さっさと進め!」
先頭で草むらをかき分ける”アカネコ”は文句が絶えない。”アオカラス”はそれを急かすように背中を押す。
「はいはい、わかりましたよ。まったくもう」
”アカネコ”は文句を言いながらも先に進む。
……暫く進むと、見覚えのある場所にどもってきた。
「ここは……」
「ああ、事件現場の廃墟だな」
二人は奇妙な違和感を感じた。犯人は現場に戻るというが、しかし、それは現場の調査状況が不安からだ。だが、今逃げているクサにとってはそれどころではないはずだ。むしろ、現場からより遠くに逃げたくなるはずだ。
戸惑う二人に、声を掛ける者がいた。
「あれ?もう戻ってきたのか?」
その声は、事件を管理する警部のものだった。
「あ、いや、まだ犯人を追っているところで……むぐ!」
”アオカラス”が”アカネコ”の口をとっさに塞いだ。
「ほう……犯人を追って……」
警部の雰囲気が変わる。
「むぐぐ……ぷはっ!」
”アカネコ”が”アオカラス”の手から逃れ、口を開く。
「いきなり何するんですか!」
「お前が馬鹿正直に話すから、バレちまったんだよ」
「え?」
何が何だかといった”アカネコ”をよそに、”アオカラス”は手に持った魔道具を懐にしまい込む。
「そこの男の言う通り。キミさえ話さなければ、まだ私に不意打ちを食らわすチャンスはあったかもしれないのだがね」
いつの間にか警部の手には、拳銃が握られていた。