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【花言葉 】

作者: 華水希リコ


幼馴染み


あみ4才・コウガ5才


「ねぇーねぇー。あみはね大きくなったら、お花屋さんになるのー。」

「ねぇーコウガはー? コウガは大きくなったら何になるの?」

コウガは、ぶっきらぼうに

「そんなこと知らねぇーよ。」

と言い走り出した。

「あーん…コウガ待ってよー。」

あみの手にはライラックの花(紫色)を持っていた。


コウガとあみは幼馴染み…

二人が小学校へ入学とともコウガは父の仕事の関係でアメリカへ行ってしまった。


あれから18年…

あみは高校を卒業して花屋でバイトをしながら色々な花の名前を覚えたりして、いつかは自分の店を出す為にコツコツと貯金をしていた。


あみ22才

やっと念願の夢が叶って自分の店がオープンした。

小さな店だけど、あみにとっては嬉しかった。


「あー 今日も暑くなりそー」と言いながら空を見上げて

お店の前を掃除していた。

「そうだ!水撒きでもしょう。」

あみはホースを持ち出し蛇口を捻った。

ホースの先から水が出てくるのが太陽に照らされて虹になりキラキラしていた。

「うわー キレイ。」

あみはホースから出てくる水をボンヤリと眺めていた。

「うぉぉー 冷てぇー」

いきなり大きな声に、あみはハッとした。

「あー… ごめんなさい。」

あみは急いで蛇口を閉めタオルを持ってきた。

「ごめんなさい。 これ使って下さい。」

「あー いいよ!いいよ!… 暑かったから涼しくなったよ。」と男性は笑いながら言った。

「あ…でもー」

「ホント 大丈夫だから。この陽気じゃ、すぐ乾くしね。」

あみはクスっと笑った。

「へえーこんな所に花屋があったなんて気づかなかったなー。」

「あ… ごめん。ごめん。変な意味で言ったんじゃないよ!」

あみのブスっとした顔を見て男性は慌てて言い訳をした。

「いえ… ホント小さな店だから…」

あみは、そう言って下を向いた。

「へぇー 俺、花屋って入ったことないから…

今まで興味なかったし… けど、こんなに綺麗な花があるとは知らなかったよ。」

男性は目をキラキラさせて店内を見渡した。

「あ…俺、玲。北崎玲 キミは?」

「あ…私は あみです。杉原あみ」

あみは照れくさそうに言った。

あみは、これまで男性と関わる事がなかったから

どう接していいか、わからなかった。

「あーっ しまった。俺、用事があったんだった。」

玲は、慌てて あみに伝えた。

「あみちゃん またきても良いかな?」

「はい。もちろんです。また、ゆっくり見に来て下さい。」

玲は、ニコりとして

「あみちゃん、じゃーまたね。」

と言って走り出した。

「あ… 服。」あみは声を出し呼び止めたけど

もう、玲の姿はなかった。


数日後…


あみが花の手入れをしていた時

店の前を小さな男の子が「おい。カオル、おいてくぞ」

その後から、小さな女の子が花を大事そうに持って男の子に「じゅんまってよー。」と言いながら男の子の後を追いかけてた時…

「あっ。」

女の子はつまずき、転んだ。

「あーん、痛いよー じゅん まってよー。」

あみは女の子に近づき

「大丈夫? うん。血も出てないし大丈夫だね!」

女の子は泣きじゃくりながら、持っていた花を、あみの顔の前に差し出した。

『あ… ライラック…』

あみは心の中で呟いた。 『初恋かー』

あみは女の子に

「ねぇ…この花の名前、知ってる?」

女の子は顔を横に振り「しらない。でも、きれいでしょ?…」

あみは女の子に「あのね。この花はライラックっていう花だよ。」「花言葉って、しってる?」

女の子は首を傾げた。

『あ。私、なに言ってんだろう。こんな小さな子に…』

あみは女の子に「お花、きれいだね。」

男の子が走ってきて「カオル なにしてんだよ!ホントにおいてくぞ。」

女の子は「あー まってよー。じゅん…」

と言って女の子は走って行ってしまった。


あみは、ふと、自分が小さい頃の時を思い出した。

「うふふ…」あみは1人で笑いだした。


〈わぁー コウガ、みて… お花が、いっぱいだよ。〉

〈あみはねぇー おおきくなったら、おはなやさんになるんだよ!〉

〈コウガは? ねぇーこうがは、おおきくなったら、なにになるの?〉

〈そんなの、わかんねぇーよ。 それより、はやく、かえるぞ。〉

〈あーん こうが、まってよー〉

〈こうが… こうが…〉


「あのーすまんが。どなたか…」

あみは、ハッと気づき涙を拭った。

「あ… ごめんなさい。いらっしゃいませ。」

「なんだか、起こしちゃったね…」

「あ…いえ。こちらこそ…」

お客は花を買って帰って行った。

「ありがとうございました。」


あみは、「ハァー」とため息をついた。

「何故、小さい頃の夢、見ちゃったんだろー」

「コウガ… コウガどうしてるのかなー…」

あみは空を見上げて、幼い頃の時を思い出していた。

あみは、顔をブルブルっと横に振り

「あー…なに考えてんだろう。」

と、店の中に入っていった。


「プップー」

車のクラクションが鳴った。

「あみちゃん おはよう!」

と、花を配達してきてくれる高木が入ってきた。

お店の外に、もう1人、男性が立っていた。

「おい。そんな所に、突っ立ってないで入ってこいよ!」

外に立っていた男性が店に入ってきた。

「あみちゃん、急で悪いんだけど… 俺、辞めるんだ。」

「で…コイツが明日から俺の代わりの海堂。」

「えっ? 高木さん辞めちゃうんですか?… 」

「どうして、急に…」

あみは不安そうに高木に問いかけた。


「あー… うん。オヤジが倒れちゃって… 跡を継がないといけなくなったんだよ。」

「俺は高校の時から家の店を継ぐのが嫌で、こっちに来たんだけどさー。 仕方ないよなー。」

高木は、ちょっと、ふさぎ込んだが、すぐいつもの高木に戻り

「おい。海堂ーちゃんと挨拶しろよ!」

海堂の声は小さく何を言ってるか、わからなかった。

あみは、それより高木が辞めちゃうことが気になっていた。

「で、これにサインしてもらうんだぞ!海堂、わかったか?」

すると海堂が

「その前に検品が先だろ!」と、偉そうに高木に言った。

高木はテレ笑いしながら

「おう!そうだ、お前、完璧じゃん。俺わざとに言ったんだぞ。」

海堂は「フン…」と鼻で笑った。

つられて、あみも「クスッ」と笑った。

「じゃーあみちゃん、元気で…」

「おい、海堂…お前、あみちゃんに手を出すなよ。」と冗談ぽく言った。

「高木さん、今まで、ありがとうございました。」

ペコリと頭を下げて

「高木さんも元気で…」

高木と海堂はトラックに乗り込むとクラクションを「プップー」と鳴らして去って行った。

あみはトラックが見えなくなるまで手を振っていた。



あみは、これから起こることを、まったく予想もしてなかった。




あれから1週間…


海堂は相変わらず、無愛想で荷物を渡し伝票にサインをもらい何も言わずに帰って行く。

「あー。もう調子狂っちゃうんだよね… 挨拶しても『あぁ…』『あぁ…』ばっかりで…」

「何か話すことないの?」

あみはイライラして足をドンドンと地面を叩いた。

「よし!明日こそは喋らせてみせる。」

あみはニャりと笑った。


お店の中を片付けてると外から男性が入ってきた。

「こんにちは」とニコリと笑う男性。

「あ。いらっしゃいませ。こんにちは」

あみはスッカリ忘れていた。


「あのー 彼女さんへのプレゼントですか?」


「えっ? あれー…忘れちゃったの? てか、俺が夢でも見てたのか?」

あみは首を傾げて…


「あーっ!!」と大きな声で叫んだ。

男性はビックリして 「思い出してくれた?」「水も滴る、いい男…」と言って笑った。

「は、はい。 あの時は本当に、すみませんでした。」

あみはペコリと頭を下げて 「えーっと…名前はー…」


「あー…名前も覚えてないんだー。ガッカリだなー」

と男性は笑いながら言った。

「俺は、ちゃんと覚えてるぜ。 あみちゃん。」

「ごめんなさい…」


「いや。謝らなくていいよ! 玲。北崎玲だよ。

今度は、ちゃんと覚えててよ。」

「あ… そうだ。何か書くものある?」


「は、はい。」と、あみはメモ用紙とペンを渡した。

玲はメモ用紙に大きな字で『北崎玲』と書いて花のポスターに貼った。


「えっ? ちょ、ちょっと…」

あみは店のポスターにメモ用紙を貼ったことに少しムスッとした。


「あー ごめん。ごめん。あみちゃんが、ちゃんと俺の名前、覚えてくれないから…」

玲は、バツが悪そうにメモ用紙をはがした。


「あ… いえ。」

玲はメモ用紙に電話番号も付け足し、あみに渡した。


「あみちゃん…今度、デートしよ。」

あみは、その言葉に、驚き『私、男の人とデートなんかしたことないのに…』

心の中で呟き 「えっ? ど、どうしてですか?」

「私、まだ玲さんのこと何も知らないのに。」


「だからー これから知ってもらうの! ね!良いだろ?」

「あみちゃんに水かけられちゃったから、そのー…」

「そ、それは…」あみは、あの時のことを思い出した。

「わかりました!」あみはほっぺたを膨らし答えた。


「ホント? ヤッター」

玲は、まるで小さな男の子のようにはしゃいで喜んだ。

「あみちゃん、お店いつが休み?」


「日曜ですけど…」

「じゃー今週の日曜ね! ん… 何時にする?」


「玲さんに、お任せします。」あみは、どーでもいいや!と思い適当に答えた。


「じゃー… 10時に駅前ってどう?」

玲は嬉しそうに言った。

あみは子供みたいな玲にクスッと笑い

「はい。 10時に駅前ですね。」と言った。



そして日曜日…


初めてのデートで、あみはドキドキして寝れなかった。

「どうしょう…約束しちゃったし。服は?デートの時って、どんな服?」

焦れば焦るほど時間は迫ってくる。


「あー。もう、こんな時間…」

あみは慌てて家を出た。

駅に着くと、玲は、もう待っていた。


「玲さん、遅くなって、ごめんなさい。」

「あみちゃん、おはよー。いや俺も今、ついたとこだよ。」

「さてー あみちゃんどこ行く?」

「玲さんに、お任せします。」

「そう。じゃー行こうか。」

玲は、あみの手を取り電車へ乗り込んだ。


「玲さん、どこ行くんですか?」

「それは着いてからの、お楽しみ。」と玲はニコニコして、あみに言った。


着いた場所は水族館だった。


「あみちゃん、ちょっと待ってて。」といい玲はチケット売り場へ向かった。

あみは水族館を見渡し『へぇーこんな所に水族館があったんだ。』


「あみちゃん、お待たせ。はい。チケット…」

「玲さん、ありがとうございます。あのーチケット代…」

「それより、あみちゃん早く早く。」

玲は、あみの話も聞かずに手を引き入場門へと向かった。

中に入ると、大きな水槽に、たくさんの魚達が気持ちよさそうに泳いでいた。

あみは水槽に駆け寄り

「うぁー。凄い。お魚さん達が気持ちよさそう」と目をキラキラさせて言った。

「どう?気にいってくれた?あみちゃん…」

玲は嬉しそうに言った。

「はい。凄く気にいりました!」

「あ。見て見て鮫だよ。」玲は鮫を指差し、あみに言った。

あみが水槽に近づいて見ていると鮫が突進してきた。

「キャー」あみはとっさに玲に抱きついた。

しばらく2人は抱き合っていた。

あみはハッと気づくと玲を突き飛ばしていた。

「痛ぇー」玲は立ち上がりオシリをさすりながら

「あみちゃん、大丈夫?」

「玲さん、ごめんなさい。玲さんこそ大丈夫ですか?」

「私…私、男の人とデートとかしたことなかったし。」

あみは泣きそうになりながら話した。

「あみちゃん、ちょっと座ろうか…」

ベンチに座ると玲は飲み物を買ってきてくれた。

「はい。」と、あみに渡した。

あみは1人ごとのように話し出した。

「私…学生の頃から花の本ばかり読んでて…

仲の良い友達もいなくて、男の子なんかと話したことなくて、周りの女の子達は彼氏の話とか話してて… でも心の中では自分も、そんな話に憧れてて」

玲が横から「もういいよ!あみちゃん…」

「あみちゃんは本当に花が好きなんだね。」

「そんな女の子いてもいいと思うよ」


「あ!あみちゃんイルカショーが始まるよ。」

玲は、あみの手を取りイルカショーの場所へと向かった。

席がもう、いっはいで空いてるところが1番前しかなかった。

「あみちゃん濡れちゃうかもしれないけど、ここでも良い?」

「はい。大丈夫です。」

2人が座るとピーと笛がなりイルカ達が泳いできてジャンプしたりしていた。

「あ。見て見て可愛い」あみは、さっきの事など忘れていたはしゃいでた。

イルカが、あみ達のそばまで来てジャンプすると水がかかる。

2人はキャーキャーと嬉しそうにはしゃぐ。

玲がフト「これで同じだね。あの時と…」

「えっ?」あみは考えた。

イルカがジャンプする度に水しぶきがキラキラ光る。

「あーっ!!」2人は顔を見て笑いだした。

あははははは…

2人の笑い声がいつまでも響く。

玲とのデートが終り、いつもの生活へ戻った。



「おじさん。おはようございます!」

「あみちゃん、おはよう…

今日は冷えるねー。」


プップーッ

クラクションの音が響いた。

『あ。アイツだ。今日こそは何か話させてやる。』

あみはニャリと笑った。


「おはようございます。」

「あぁ…」

相変わらずの海堂…


「これ、伝票。検品しろ。」

海堂は偉そうに言った。


「あのー…」 「なんだ。」


「海堂さんは無口なんですか?」

「はぁ?…」

海堂はムスっとした。

あみは、海堂の顔が怒ってるのがわかりながらも

問いかけた。

「いつも『あぁ…』とか、同じ言葉ばかりで飽きないんですか?」


「お前、何 言ってんだ?」「俺に何を言わせたい?」


あみは、ふてくされたような顔で

「別に… あまりにも喋らないから…言葉、知ってるのかなーと…」

「お前、馬鹿にしてんのか?」

「馬鹿にしてるんじゃないです!」

海堂は「チッ」と言って伝票を渡した。


今日の荷物は重い荷物ばかりだった。

あみは必死で荷物を店の中に運ぼうとするけど

もたもたするばかり。


すると、帰ったと思ってた海堂が

「お前、こんなのも運べないなら店なんか辞めちまえ。」

あみはムスっとした顔で

「誰もアナタに頼んだ覚えはありません!」

「アナタに私の何がわかるんですか?…」


「素直な女じゃないなー。だから女は嫌いだ。」

あみは、カチンときて

「なによー。私だって無愛想で喋らないアナタなんか大嫌い。」

と荷物を運びながら叫んでたら足元がよろつき転んでしまった。

「キャー。」「パリン…」と植木鉢が割れた。

「どんくさい女だなー。」


あみは『なんで、そこまで言われなきゃなんないのよ。』

と思いながら割れた植木鉢を片付けていた。


「あ、痛っ…」

あみの指から血が流れてた。

海堂が近寄ってきて

「何やってんだ…」と、あみの手を取り血が出てる指をハンカチで巻いてくれた。

「ちゃんと消毒しとけよ。」

あみは呆然と『なんだ…この人、意外に優しいとこあるんだ。』

あみは、思わず…

「あ、ありがとう。」

二人は顔を見合わせたが海堂は、あみの手を払いのけた。

『痛っ…なによ。やっぱり、冷たい男じゃん』

あみは心の中では思ったが素直に

「ありがとう。」と言った。

海堂は照れくさそうに頭をクシャクシャとして帰って行った。



数日後…


「だいぶん寒くなってきたな。夏って1番、短い季節だよなー。」


あみは、ふと玲の事を思い出した。

「あれから玲さん、こないし…どうしたのかなー?…」

「私が嫌な思いさせたから嫌われちゃったかな。」

あみは、少し寂しくなった。


初めてのデート…


「あー もう時期ハロウィンだなー。」

「そろそろ、お店にもハロウィン飾らないと…」

「お店閉めたら、ちょっと見に行ってみよ!」

数時間後…

「ガラガラ」シャッターの閉める音。

「あー今日も疲れたな。さて、ハロウィングッズ見に行こう。」

あみは駅前のデパートへと向かった。


「あっ。ここ…玲さんと待ち合わせした場所だ。」

「ハァ…なんで玲さんの事が頭に浮かんでくるんだろう。」

あみはブツブツ独り言を言いながら歩いてると近くから女性の大きな声が聞こえた。

あみは、その声が聞こえた方を見ると、そこには玲と女性が言い合いをしていた。


「みき、お前しつこいぞ。しつこい女は嫌われるぞ。」

「だって、玲が答えてくれないからじゃない。あの日、どこへ行ってたのか私は聞いてるの!」

「お前には関係ない事だ。もう、いいから帰れ。」

と玲は携帯を取り出し何処かに電話をしていた。


あみは木の陰に隠れて見ていた。

「やっぱりね。玲さん彼女いたんだ。」

「でも何故?何故、玲さんは私をデートに?からかわれてたのかな…」

「そうだよ!きっと、そうだよ。」と、あみは悲しい半面、怒りが込み上げてきた。

あみはブツブツ言いながらハロウィングッズも見ずにアパートへと帰った。

あみは湯船に浸かりながらため息をついて

「私、なに浮かれてたんだろう。」

あみは湯船の中へブクブクと顔を沈めた。


次の朝

「あー今日は、お店に行きたくないな。」

ベッドの中でグズグズとする、あみ…

いきなりガバっと起き上がり

「あー今日は大事な納品があったんだった。」

あみは絆創膏を剥がした指を見て

「あーもう。」と言いながら支度をして店へと向かった。

店に着いたら、もう海堂が待ち構えていた。

「おい!おせーぞ!」

壁にもたれ偉そうに言う海堂。

あみは昨日の玲のことでイライラしてたのもあり

「なによ!ここは私の、お店です。何時に来ようと私の勝手です。」とイライラを海堂へぶつけた。

海堂は、あみが、そんな強気で言い返してきたことに何も言わず荷物を下ろし伝票を渡した。

「今日、これだけだよな?」「重いけど大丈夫か?」

海堂は、さっきの、あみの態度が気になり少し優しく言った。


「これくらいの重さ大丈夫です。」


「何かあったのか?お前らしくないぞ。」

「貴方には関係ありません。」

海堂は気にしつ無言で帰って行った。


「はぁー。やってしまった。別に海堂さんが悪いわけでもないのに…」

「明日、謝っておこう。」

あみは、そう呟き重い荷物を店の中へと運ぼうとするけど重くてなかなか進まない。

すると帰ったはずの海堂が現れ

「ほら、見ろ!無理するな…」と言って荷物を中へ入れてくれた。

あみはドキッとして

「あのーさ、さっきは…ごめんなさい。ちょっと嫌なことがあって…貴方に当たってしまいました。」

あみは、海堂に頭を下げた。

「あのー 暇なら中で、お茶でもどうですか?」

あみは海堂に言った。


海堂は照れくさそうに

「あぁー…」と言い、お店の中へと入った。


二人は何を話していいのか、わからずコーヒーを飲んでいた。

あみは『あー何か話さないと…』と勇気を出して喋りだした。

「あのー海堂さんは、この仕事、長いんですか??」

海堂がボソッと話だした。


「いや… 俺、今までアメリカにいたんだ。今年、帰ってきた。」

「そうなんですか…」『アメリカ?』『まさかね。』

あみは、何故だかコウガのことを思い出した。


「俺 そろそろ行くわ。」

海堂が立ち上がろうとした時、ポケットから財布を落とした。

財布の間に写真が一枚はみ出てたのを、あみはドキッとして写真を取り出した。

その写真には小さな男の子と女の子が…

『えっ?なんで?なんで海堂さんが、この写真を?』

『まさか…』

あみはドキドキしながら海堂に聞いた。


「あの… この写真…海堂さんですか?」

「あぁーそうだ。」と言いながら、あみが持っていた写真をとった。

海堂の言葉に、あみの目から涙が溢れた。

「おい!どうした。」

あみは海堂の声が聞こえなかった。

『嘘…海堂さんがコウガ?』

「おい。どうしたんだよ。」「おい。おい。」

あみは海堂が持っていた写真を奪い握りしめた。

「こ、コウガ…コウガなの?」

海堂はビックリした。

「お前…まさか? あみ?お前、あみなのか?」

あみはコクリと頷いた。

その時、店の中に玲が入ってきた。

玲は、あみが泣いてるのを見て…

いきなり海堂の胸ぐらを掴み

「お前、この子に何した。」

あみは「違うんです。玲さん違うんです。」

玲は、あみの話も聞かずコウガを殴った。

鋼牙は唇から血を流しながら何も言わず店から出て行った。

「コウガ…コウガ、待ってよ。」

あみは叫んだが鋼牙の姿はなかった。

「あみちゃん何なんだよ。何があったんだよ。俺サッパリわかんねぇーよ。」

「玲さん、ごめんなさい。今日は何も聞かないで帰って。ごめんなさい…」

あみは店の中へと入って行きドアを閉めた。


あみは椅子に座り手に握りしめてた写真を見ながら

「コウガ…私に何も言わずいなくなったコウガ…」

あみは、その日、店で一晩中、泣き明かした。



次の朝…


店の前でトラックが止まった。

あみは急いで外に出たが、トラックから降りてきたのはコウガじゃなく知らないオジサンだった。


「コウガ…」

「あのーコウガ…じゃなくて海堂さんは?…」

オジサンは「あーあの兄ちゃんか…」

「アイツなら昨日、辞めたよ。ったく…今の若いもんは。」

あみは取り乱し、オジサンに言った。


「か、海堂さんは?海堂さんは、何処へ行くって言ってましたか?住所わかりますか?」

オジサンは「なんだ。なんだ。いきなり…

住所は今わかんねぇーよ。」

「早く。早く会社へ電話して下さい。」

オジサンは、慌てて「あ、あぁ…」

と言い会社へ電話した。

あみは待ちきれずにオジサンから携帯を取り

「あのーすみません。海堂さん、海堂は辞めて、どちらへ行くと言ってましたか?」

電話口の向こうから

「キミは誰だね。」

「お願いします。急いでるんです。教えて下さい。」


「仕方ないなぁー。アイツは地元に戻ると言ってたよ。」

「地元?それは静岡ですか?」

「あ…確か。」

「ありがとうございました。」

あみは、オジサンに携帯を渡し駅へと急いだ。

駅につくとホームにはコウガがベンチに座っていた。


「コウガー。」

あみは叫んで階段を上りコウガのいるホームへ走った。

「コウガ…待ってよ。どうして逃げるの?」

コウガは動揺しながら

「別に逃げてはない。」

コウガは何かを話そうとしたが黙り込んだ。

電車がホームに入ってきたがコウガは乗らずに二人はベンチへ腰掛けた。

黙り込む二人…

すると、コウガが話し出した。


「あみ…すまない。今は話せない…」

「えっ?…何を話せないの?何を隠してるの?」

「あの時、何故 コウガは、いなくなったの?」

あみは今まで思ってたことをコウガに伝えた。

コウガは「すまない。」と言うばかりだった。

コウガは立ち上がり、あみにメモを渡した。

メモには住所が書かれていた。


「あみ…すまない。今は何も聞かずに12月24日…そこへきてくれ。」

あみはメモをみつめて「12月24日?…どうして?」

「あみ…ホントすまない。」と言い、コウガは走り出した。

「コウガ…待ってよ。こ、コウガー。」

あみは叫んだが、もうホームにはコウガの姿はなかった。

あみは泣きながら店に戻ると、玲がいた。

「あみちゃん…どうしたの?お店開けたままで…」

「玲さん…」

玲は、あみに聞いた。

「アイツとは、どういう関係なんだ?」

「何があったんだよ。」


あみは幼い頃の話をした。


「幼馴染み…そうだったのか。」

「でも、何故いきなりアメリカへ…」

「それは、わからない。」

「そっか…よほど知られたくない事情があったんだな。」

あみは、深いため息をついた。



11月に入り

あみはコウガの事を忘れはしなかった。

しかし、あみの傍には玲がいた。


「おはよー。あみちゃん…」

「あ。おはようございます。玲さん」

「あみちゃん、今度 紅葉でも見に行かない?気晴らしに…」


玲は、あみに気を使っていた。


「あ!そういえば玲さん、あの時の彼女さんは?」

玲はなんの事か考えていた。

「ほらーハロウィンのちょっと前に、駅前で彼女さんと言い合いしてたでしょ?別れたんですか?」

玲は「ん?」「あーアイツか…アイツは彼女なんかじゃないぜ。」

「えっ?でも…」

「アイツは俺のダチの彼女。ほら、あみちゃんと水族館に行った日。」「あの日、約束してたんだ。三人で遊ぶ。でも、なんか俺一人じゃない?なんか、つまんなくて…ブチしたんだよ。それで…」

あみは「うふふっ。玲さんらしい。」と言って微笑んだ。


「じゃー明後日の日曜日はどう?」

「はい。いいですよ。」

あみも、また玲に気を使っていた。

「じゃー、また10時に駅前で…」

「はい。了解しました。」と、あみは玲に向かって敬礼をした。

それを見た玲は「アハハハ」と笑い、あみの頭をクシャクシャとした。

玲は気づいた。

『俺は、この子が好きだ』『ずっと側にいて守りたい。』

『あみ…』



日曜…

あみは、前のデートの時と違い、嬉しそうに駅へ向かった。


「あみちゃん おはよー。」

「玲さん おはようございます。」

「玲さん、何処の紅葉ですか?」

「それは秘密…」

あみは、頬をプクっと膨らまし玲の後に着いて行った。

二人は電車の中で楽しそうに会話していた。

あみの頭の中からは、すっかりコウガの事が消えていた。

小さな駅に着き二人は降りた。

「あみちゃん、こっちだよ。」

そこは都会とは違う風景。

「あみちゃん、ここから少し歩くけど大丈夫?」

「はい。大丈夫です。田舎育ちなんで…」

「じゃー行こうか。」

玲とあみは自然と手を繋ぎ歩きだした。

30分くらい歩くと展望台へ着いた。

「わぁー綺麗…」あみは目を輝かせて喜んだ。

「だろ? ここは俺しか知らない場所なんだ。」

「あみちゃん、ここはね…俺が育ったとこ。」

「えーっ?そうなんですか?私はてっきり玲さんは都会育ちかと…」

「俺の親は、俺が5歳の時に離婚してオヤジに引き取られたんだけどオヤジは若い女と出て行ったよ。それからはオヤジのばあちゃんに育てられたが、ばあちゃんが亡くなって俺は、ここから出たんだ。」


「そうだったんですか…ごめんなさい。嫌な事、思い出させちゃいましたね。」

「いや。大丈夫だよ。」「こっちこそ、ごめんな。」

二人は黙り込んだ。

「そろそろ帰ろうか。冷えてきたし。」

玲は自分が着ていた上着を、あみの肩に掛けた。

駅へ着くと最終の電車が行った後だった。


「しまった!ここ小さいから本数が少なくて最終も早かったんだ。」

「えっ?」あみは心配しながら玲の顔を見た。

「んー…困ったなー。 この先に、ばあちゃん家があるんだけど、そこへ行くしかないな。」

あみは思った。『誰もいない?玲さんと二人…』

あみはドキドキしながら玲に着いて行った。

「おぉー変わってねぇーな。」と玲は家の中へ入った。

「あみちゃん、おいでよ。汚いけど…」

「あ… はい。お、お邪魔します。」


そこで二人は一晩中、色んな話をした。

あみは、いつの間にか寝てしまっていた。

あみがハッと目を覚ますと、玲も寝ていた。

玲の顔を見ながら「なんてキレイな顔してるんだろ。玲さんも苦労してきたんだよね。」

あみは玲に毛布を掛けて散歩へ行った。

ひんやりとした風が吹いていた。

少し進むと辺り一面にライラックの花が咲いていた。

「わぁー綺麗…」

あみはライラックの前に座りコウガの事を思い出した。

『ライラック…花言葉は初恋』

すると、後から「あみちゃん、こんな所にいたのか。探したよ。」

「あ…玲さん、ごめんなさい。玲さん起こしちゃいけなっと思って。」

玲は、あみの心使いにニッコリと笑い、あみの頭をポンポンとたたきながら

「あみちゃんは優しいね。」と言い

「そろそろ始発が来るから行こうか。」




あみは家に戻ると「はぁー」とため息をついた。

「コウガに会える日まで、あと半月…」


月日が流れ…




12月24日…

あみは約束の場所へと急いだ。

約束の場所へ着いた、あみはドキドキしていた。

そこにはコウガが待っていた。


「コウガ…」

あみは駆け寄りコウガに抱きついたが

コウガは、そっと、あみの腕をほどき

「あみ、すまない。」と一言、言った。

「何でよ。何でなの?私は、ずーっと小さい頃からコウガを見てた。コウガが好きだったのよ。」

「でも、何も言わないまま、コウガは、私の前からいなくなった。何故なの?」


「俺も、ずっと あみが好きだった。いつも、あみの事ばかり考えてた。あみに会いたかった。」

「でも、オヤジから、あの話を聞くまで…」

「えっ?何の話?」


「あみ…俺は今でも、あみが好きだ。大切にしたいと思ってる。でも…」

「でも、何なのよ。私もコウガと同じ気持だよ。」

「わかってる。でも、俺と、あみは血の繋がってる兄弟なんだよ。」

コウガは、いきなり大きな声をあげた。

「えっ? き、兄弟って…」

あみは何がなんだかわからず呆然としていた。

「オマエ、俺のオヤジ知ってるよな。」

「うーん…」

「俺のオフクロがいなくなったの覚えてるか?」

「わかる訳ないか。あみは、まだ産まれてなかったからな。」

「ねぇーコウガは何が言いたいの?」

「だから、俺のオヤジと、あみのオフクロさんとデキてたんだよ。」

「それが俺のオフクロにバレて、あの日オヤジと俺はアメリカへ逃げた。」

「俺が高校に入学した時、話を聞かされた。」

あみの目からは涙がポロポロこぼれ落ち小さな体は震えていた。

「じゃ…コウガは私の、お兄ちゃんって事?ねぇー答えてよ。」

あみはコウガの胸を叩きながら

「ねー答えてったら。 コウガのバカ…バカバカバカ…」

コウガは、あみを抱き締めたが、すぐに離し

「あみ…幸せになれよ。」と、あみの頭を撫でた。

あみは、コクリと頷き

「コウガ…これで本当にサヨナラだね。」

「あぁー。」

二人は、お互いに「元気で…」と言い二人は別れた。




12月31日 大晦日…

テレビから流れるカウントダウン…


ハッピーニューイヤー…

部屋の窓の外からは花火の音が響いてる。

夜空にキラキラ光る花火。


「わぁーキレイ…虹みたい。」

「あぁーそうだな。あの時の虹みたいだな。」

あみは「うふふっ」と玲の顔を見て笑った。

玲と、あみは目を見つめあい二人は、そっと口づけをした。


部屋のテーブルには、綺麗なライラックの花が1輪…


ライラックの花言葉…

それは… 「初恋」


END

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