思い出
不良と優等生とは相容れない関係であるのだろうか。
時折そんなことを考える。中学は市立を選ばなければ自分が属している地域の中学へ入学することになる。それは寄せ集めのようなもので、一番クラス内、校内が荒れることを体験する時なのではないだろうか。
その中で、不良という者はいるもので、まるで自分の縄張りであるように校内を歩き回る。
一方で常に好成績である優等生もいる。俺の知っている優等生は、課題はすぐ終わらせていて、何事であっても余裕な様子でクラスにいた。運動神経もそこそこ良くて、先生から気に入られている存在。だが、その優等生が会話していたのは1人だけであった。その相手も成績は良い方である。
ただ、その二人の違いといえば性格にあった。その相手は物腰が柔らかで、誰とでも気さくに会話するような人間。反対に優等生は口数が少ない上に、目つきが悪い。そのせいか誰も優等生には話しかけようとはしない。どこか浮いていた人間。
そんな彼であるから、不良にはよく絡まれていた。当の本人は特に気にしていない様子でいたが。
彼らが典型的な机への悪質な落書きや、噂話、本人にわざわざ嫌味を言いに行ったりとしょうもない事をしていたのはよく見かけた。それでも優等生は何も反応を示さないわけで、これには俺も少し引いた。嫌がれば更にやられると考えて無視しているのかもしれないが、そうとは思えない。だからどうした、と本当に興味のなさそうにしていた。
暫くは続いたが、不良もさすがに気味悪がって嫌がらせは終わった。それに、飽きていたのだと思う。あれではストレス発散にもならない。
その後、嫌がらせはヒートアップして再発するのだが、優等生の反応はあいも変わらずだった。
そんな優等生と久しぶりに(といっても、話したこともないのだが)顔を合わせることになった五月上旬である。