合間
面接の終わったあと、花道さんは歩きながら話しかけてきた。
「また予定を合わせて顔合わせしましょう。といっても、同じ学校の人ばかりだけど」
「わかりました。……あの」
ずっと気になっていたことを尋ねようとして、花道さんは首をかしげた。
「花道さんが僕を推薦した理由って結局何なんですか」
「……理由はふたつ。一つはあの事件当日の御守君についての話を聴いて、私たちへの更なる戦力になることと能力の伸び代の可能性を感じたこと。もう一つは……」
もう一つを言おうとして花道さんは立ち止まる。僕も少し遅れて立ち止まり、彼女の答えを待ったが
「ま、こっちの方はまた今度で」
と、流されてしまい、また彼女は歩き出した。
自分の可能性を期待されたのは初めてのことで、どこかむず痒さを感じながらも、応えれるだけ応えてみようとこの時僕は決めた。
5月2日 17:00 喫茶店
ジャズの音楽が流れる空間。サラリーマンはコーヒーを片手にノートパソコンを開き、学生ではノートを開いて課題を終わらせる者もいる。そんな彼らを邪魔するような騒がしい男女の集団もまたそこにいた。
「原山君!スマホなんかより、私の事みてよ!」
「なによ、アンタだけのいっくんじゃ無いのよ」
「あ、ごめんごめん。ちょっとバイトの連絡があってさ」
といって少年はスマートフォンをカウンターに置いた。
少年ひとりと彼を挟んで同年代の女子2人がカウンター席に座っている。原山くん、と呼ぶセミロングの少女は頬を膨らませた。
「あの警察絡みの?また何かあるの?」
「新入りがいるから、顔合わせするってさ」
「どーせいっくん、この間みたいにサボるんでしょ」
と、奇抜な見た目をした少女が言ってオレンジジュースを飲む。
それに少年は少し怪訝そうに反論した。
「だーかーら、あの時はスマホ忘れてきたんだから仕方ないだろ?」
「またゴリゴリにシメられるよ?」
奇抜な少女が笑いながらそういうともうひとりの少女もつられて笑った。少年はため息をひとつつく。
「その呼び方はやめとけってば」
「だってさぁ、あんな怪力女みたことないんだもん」
とまた奇抜な少女が言って、もうひとりの少女が笑う。
そんな中、少年は苦笑いを浮かべるが、内心は決して穏やかではなかった。
ほんと性格の悪い女
そんな、少年の心とは裏腹にジャズは穏やかに延々と流れ続けた。