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死に損ないの諧謔  作者: 荒島 直宏
高校事変編
1/10

濃霧



挿絵(By みてみん)




気付けばいつも風景の中に一人、何かしらの光景を眺めている人間がいる。

それは紛れもない自分自身であることを昔から理解していた。“友人達”との会話が何時の間にか“友人達”の会話へと変化し、それを眺めることが多い。それに対しての不満は特になく、静かに流れに身を任せるばかりだ。それが元々の自分の日常なのだから仕方が無い。

そんな日常の一部である“今日”をまた過ごすのだ。今日も黒い学ランを身に纏い、学校生活を送り、今こうして帰り道を歩いている。横断歩道の信号が赤であることを確認し、立ち止った。ぼんやりと何処を見る訳でもなく待った。この何気なく待っている時間は自分にとっては今日の出来事を整理する大事な時間である。とはいっても、ほぼ毎日同じことなのだが。……いや、同じことと表現とするよりは、いつもハッキリ答えが出ない、と表現する方が正しいのだろう。

単純に、今日は楽しかった、憂鬱だった、昨日と変わらなかった、と纏めれば良いのだが、素直にそうすることが出来ない。頭の中に霧がかかったような気分だ。何とか霧を晴らそうとするのだが、中々できない。一体自分は何に対して悩んでいるのだろうか。皆目見当がつかない。……もしやなにかの病気にでも掛かってしまったのだろうか。自分の中の推測でしかない事に僅かながらも恐怖を感じ、手が震える。いや、自分は今こうして健康に過ごしているではないか。病気なはずが無い。そう言い聞かせ、手の震えを止めた。

ふと周りを見れば先程まで共に信号待ちをしていた人間達が歩いていた。信号機を確認すると既にピコ、ピコと音を立てて赤から青に変わっている。自分は出遅れた気分になり、少し足早に歩を進めた。

遠く、いや割と近くからパトカーのサイレンの音が聞こえる。止まりなさい、止まりなさいと叫ぶ声が音割れして混じっていた。世間は物騒なものだなぁと呑気に考える。サイレンの音は徐々に近くなり、耳障りだと左を向けばすぐ、明らかにスピード違反であるグレーのワゴン車が目の前まで走ってきていた。

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