愚者が世界を恨んだ日
愛しい愛しい彼女は世界を愛せなかった。
否、世界を憎んでいた。
彼女に手を差し伸べたのは俺でも、その時からもう既に彼女の生きる世界は壊れていたんだ。
綺麗なままの世界で、もう二度と壊れることのない世界で生きようとした彼女は俺の前から消えた。
俺の目の前で死ぬということで彼女は自分の世界を守ったのだ。
俺と彼女が出会ったこの屋上で彼女はその命を絶った。
美しい黒髪が風に遊ばれゆっくりと落ちていく瞬間、彼女は俺の中で永遠になったのだ。
『永遠に、愛してる』
彼女の声が今でも蘇る。
あぁ、あぁ…俺も愛してるよ。
だから一緒にいよう。
そしたら俺は一人で君が愛せなかった世界にいることはないんだ。
君の隣で笑っていられる。
今俺は君が飛び降りたところにいるよ。
もう直ぐ会いにいく。
「俺も永遠に、愛してるよ」