エピローグ3
「やっぱり、あんたはこっちに残ったんだな」
目覚めた翌日、俺とアリスは、明智達を追って西を目指して旅立つ事になった。その俺達を見送りに来たのが、黒田とエミリーだったのだ。
「二十五年も経って、今更向こうに帰ってもね」
「クロダ様には、風の神殿でお手伝いしていただく事になりました」
たしかに、今更帰るには時が経ち過ぎている。家族には死んだと思われているだろう。友人達にも忘れられているかもしれない。職に就いて、生活できるかも怪しい。それに、恋人も仲間も、この世界に眠っている。
「手伝い?神官にでもなるのか?」
「いやいや、まさか」
俺の問いに、黒田は顔の前で手を振って答えた。以前の険しい感じは、もうしない。
「クロダ様には、先代勇者様として、モンスター退治や勇者様へ依頼を出す時のアドバイスをいただいたりするんです!」
「勇者への依頼……?」
まだ俺達に何か依頼するつもりなのか?勘弁して欲しいと思うが、明智はすでに新しい依頼のために旅立っている。俺達も、後を追って旅立つわけだから、ある意味、手遅れだ。
「何でもかんでも君達に頼むわけにはいかないから、依頼を選別するのさ。それから、君達への連絡係も兼ねている」
黒田はそう言って、ポケットから黒い二つ折りの携帯電話を取り出した。今時珍しい、スマホではない携帯電話だ。しかし、彼が召喚された二十五年前、携帯電話は中学生の手に入るような代物ではなかったはずだ。
「どうしたんだ、それ?」
時代遅れのガラケーとは言わないでおく。余計な事を言って、スマホに興味を持たれても面倒臭い。
「アリシアに貰ったんだが、これ、携帯電話って言うんだろ?便利な時代になったものだね。もう君達の連絡先は登録してある。僕の連絡先は、メールで送っておいたから、後で確認してくれ」
「ハァ……。マジかよ……」
思わず、溜め息が出る。まさか、これからも黒田と関わる事になるとは思わなかった。パイレーツセブンの一件が終わったら、二度と会う事も無いと思っていたのだ。
「そう嫌そうな顔をしないでくれよ。僕には、この世界で二十五年分の知識とコネがある。君達は、それを利用してくれて構わない。君達には感謝しているからね」
黒田は、笑顔で俺に右手を差し出した。
「先輩……」
アリスが心配そうな目で俺の方を見るので、仕方なく握手に応じる。そうしないと、彼女に余計な心配をかけそうだからだ。それに、先輩が居るってのも悪くはないのかもしれない。あまり真面目に部活動をやってこなかった俺には、よく分からないが。
「しょうがないな……。よろしく頼むぜ、先輩」




