#42
「たしかに、それなら何とかできそうだね」
黒田が俺を見て微笑んでいる。男に微笑まれても気色悪いだけだが、とりあえず敵意は感じない。
「ここからは、俺のプランに従ってもらおうか。この船を吹き飛ばすから、全員、降りてくれ」
「はいよ」
全員を見回してそう言うと、真田が返事をして伊達と明智の肩を叩いて歩き出そうした。
「待ってくれ」
「まだ何か注文があるのか?」
黒田が声をかけてきたので、刺のある口調で返す。
「瑠美ちゃん達を置いては行けない。私は残るよ」
「勝手にしろ。巻き込まれても知らないぞ」
悪いが、黒田まで守る義理は無い。
「先輩、私は先輩の側に居ます。自分の身は守れますし、飛べますから」
「分かった。それなら、なるべく斜め後ろに居てくれ」
「はい!」
返事をしたと同時に、アリスの猫の様な瞳が深紅に輝く。真祖の力を開放したのだ。
「私も残りましょう。異世界の精霊なんて反則の力を放置はできませんから。他の皆さんは港に転移させてあげますね」
「随分とサービスが良いな」
「今回だけですよ。」
アリシアは、そう言って微笑むとパチンと指を鳴らした。その途端、俺、アリス、アリシアを除く全員が光に包まれる。黒田だけは光に包まれたまま空に浮き上がったが、他のメンバーはその場から消えた。
「さぁ、いつでもどうぞ」
「了解」
アリシアに促され、俺は背に虹色の光の翼を生やして、天へ舞い上がる。
アリスとアリシアは、純白の翼を背に生やし、俺について来た。アリシアは天使だし、アリスはヴァンパイアと天使のハーフだから、翼を持っている可能性はあったのだが、実際に見ると不思議だ。
黒田は光に包まれたまま、アリシアの足下に浮いている。
「いくぞ」
アリスとアリシアが頷くのを確認して、右手を天に掲げた。
右手の手刀に力を集中する。段々と右手に光の粒子が集まりだし、手刀を核に全長十メートル程の巨大な光の刃が完成した。金色に輝く斬馬刀の刀身が、そのまま手首から生えている様な感じだ。
「喰らえ!」
光の刃を上空から幽霊船に降り下ろす。斬撃が光の帯となり、船の胴体を真っ二つに斬り裂いた。
幽霊船は、斬り裂かれた部分から光の粒子に分解され、消滅していく。
「終わりだ」
右手に生えた刃を光の粒子に分解してから、右手を一振りした。居合いの血振りの様なものだ。
「おお……」
黒田の方を見ると、涙を流しながら、消え行く船を凝視していた。仲間を失い、二十五年もこの時を待っていたのだ。気持ちは分からなくもない。
「あれは……?」
アリスの声に視線を船へと戻すと、船から無数の光の玉が空へと昇って行くのが見えた。
「パイレーツセブンの犠牲となり、捕らえられていた人々の魂が解放されたのですね」
アリシアが、優しげな眼差しで光の玉達を見守っている。天使に見守られているのだから、きっと彼らは天国へと誘われているのだろう。
そんな事を考えていると、急に目眩がしてきた。たぶん、無理矢理、力を開放して大技を使ったせいだろう。浮いているのもキツくなってきた。
「先輩!ダメ!」
アリスの叫び声が聞こえる。どうやら、俺は海へ向けて落下し始めたらしい。目眩と眠気が酷くて、よく分からない。
「大丈夫ですか!?」
耳元でアリスの声がする。落下していた俺を、彼女が助けてくれた様だ。彼女の腕が背中から胸の辺りに回されていた。何だか、とても温かくて気持ち良い。
「先輩!先輩!」
このまま眠ってしまえたら、幸せかもしれないな……。




