#41
「誰?」
力を開放して目を開けると、目の前の真田から疑問を投げ掛けられた。
「誰って、俺だよ、俺」
「オレオレ詐欺か?」
真田は、首を捻っている。
「いきなりどうしたんだ?」
訳が分からない。力を開放した途端、まるで俺が俺ではない様な扱いになった。
「見た目はかなり変わっていますが、ユウさんですよ」
「はぁ!?マジで!?」
アリシアの説明に、真田が大声を上げて驚く。そんなに見た目が変わっているのだろうか?
「何て言うかさ、日本人ですらないじゃん!」
伊達は、半笑いでそう言うと、ラッキーストライクのパックから新しいタバコを取り出した。
「本当に武田なのか?」
明智も目を細めて、俺の顔を眺めている。
「先輩、これを」
アリスが、コンパクトミラーを差し出してくれた。
「ありがとう。アリスは、俺だって分かるのか?」
「はい。魔力の気配が同じですから」
「なるほど」
アリスから手渡されたミラーを覗いてみる。
「……誰?」
そこには、普段見慣れた自分の姿ではなく、プラチナブロンドの西洋人が映っていた。
「これじゃ、誰だか分からないよなぁ」
視線の高さを考えると、身長も高くなっている様だ。服装も変わっていて、白いマントとローブになっている。
他のメンバーを見回すと、原田も本田もシーナも目が点になっていた。黒田も何が起きたか理解できていないようだ。そして、何故かミナとアレックスは跪いている。
「何してるんだ?」
ミナとアレックスに問い掛けるが、二人とも返事をしない。まるで、何かを怖れているみたいだ。
「一体、どうしたって言うんだ……?」
「彼らは神官ですよ?その彼らの前に、高位の精霊が現れれば、彼らは神官としての礼節を尽くすのが当然でしょう?」
アリシアが肩を竦めて、俺に言う。たしかに、俺は精霊の転生体で、力を開放している今は精霊そのものなのだが、この二人の態度はおかしい。
「いやいや、彼らの信仰対象は天使だろ?それに、精霊って召喚して使役する対象じゃないのか?」
「それは下位の精霊や妖精の話です。高位の精霊ともなれば、畏れ敬うべきものと考えられていますから」
「そうなのか……」
「その力を使う事、私達は止めましたからね?」
アリシアが、悪戯の成功した子供の様に笑う。
そんな理由があったなら、早く話して欲しかった。
「とりあえず、ミナ、アレックス、顔を上げて、今まで通りにしてくれないか?」
「申し訳ありませんが、その様な畏れ多い事はできません」
ミナが、顔を上げずに答える。
「いや、俺は異世界の精霊だし、こっちの精霊と同じに考えなくても……」
「そう言われましても……」
どうにも面倒な事になってしまった。まぁ、パイレーツセブンを倒したら元の世界へ帰るわけだし、気にしなくてもいい気もするが。
「記憶までは戻ってないんですね」
「記憶?」
「ええ。精霊としての記憶です。その様子だと、戻っていない様に見えますが?」
アリシアの言う通り、力は開放したが、何かを思い出したという事は無い。力を開放できたのも、この世界に満ちている濃いマナを呼び水にしたからで、本来の開放の仕方ではないだろう。
「たしかに、そういうのは無いな。でも、とりあえず、これで何とかできるだろう」




