#36
「……というわけで、この船を封印したんだよ」
男は、大袈裟に両手を広げて、話を終えた。その顔には、満足そうな表情が浮かんでいる。
「随分と長い昔話だったな」
男の話を聞いているうちに、ビリガーが二本、灰になった。つい先程、三本目に火を着けたところだ。
「それで?肝心の封印の件は?省略か?」
左手に持ったビリガーを男の方へ向け、円を描く様に先端を回す。
男は微笑みを浮かべるだけで、口を開かない。
「それに、あんたは誰だ?」
今度は、話を聞く間、ホルスターに収めていたベレッタを取り出し、男に銃口を向けてハンマーを倒す。
「私は、黒田彰人だよ。さっきも言ったが、君達の先輩だ。同じ東の神殿に召喚された、ね……」
「その証拠は?」
自称だけで、『はい、そうですか』と納得するわけにはいかない。銃口を向けたまま、重ねて質問をする。
「さっきも話したウィンドウ機能を使えるというのは、証明になるだろう?」
男が、何も無い空中で左手を動かすと、突然、学ランが現れて、男の左手に収まった。手品の様にも見えるが、ゲームの世界を舞台としたアニメ等で見られる現象でもある。
「そして、この学ランが証拠だよ」
「おいおい、マジで先輩じゃん……」
男が掲げた学ランを見て、真田が呟いた。学ランの襟には、見覚えのある校章が付いていたからだ。それは、俺達の卒業した中学の校章だった。
「まさか、中学の先輩が先代の勇者だったとはね……」
伊達も目を見開いている。
「俺達は、オッサンになってから召喚されたけどね」
明智の声も、若干、上擦っているみたいだ。
俺も、とりあえず銃を下ろして、ハンマーを戻す。敵ではないと納得したわけではないが。
「あなたが『黒田先輩』だとして、あなた一人が生き残ったんですか?他の八人はどうしたんですか?」
今度は、伊達が黒田に質問をする。
「そうだよ。彼らは、この船を封印するために人柱になった。私は、敵の攻撃を受けて、海に落ちてしまってね。そのおかげで、逆に助かってしまったんだよ………」
黒田は、悲しげに目を伏せながら、質問に答えた。その表情を見る限り、演技には見えない。
「せっかく生き残ったのに、元の世界には帰らなかったんですか?それに、何故、今ここに現れたんですか?」
伊達が、新しいタバコに火を着けながら、再び疑問を投げ掛ける。
「瑠美ちゃんを置いては帰れないよ。彼女の魂は、ここにあるんだからね……。それから、今、ここに現れたのは、私が祠を壊して、パイレーツセブンを呼び出したからだよ」
黒田は、言い終えると寂しそうに笑った。




