#34
「瑠美ちゃん!」
角を曲がって細い通路へ入り、別な大きい通路に出たところで、瑠美ちゃんを見付けた。瑠美ちゃん一人で、玲雄くんの姿は見えない。瑠美ちゃんは床へ座り込んで震えている。
「瑠美ちゃん、大丈夫?玲雄くんは?」
近付いて、再び声をかけてみるが、反応は無い。
「瑠美ちゃん?」
肩に手をかけると、瑠美ちゃんが振り向いた。目が真っ赤に腫れる程泣いていて、何かを抱き締めている。
「彰人くん、玲雄が、玲雄が……」
そう言って、瑠美ちゃんは抱き締めているものを僕に見せた。
「……!」
それは、僕が着ているのと同じ学生服の腕の部分だけ。袖からは手首から先が見えている。上腕の辺りから千切れていて、大量の血が瑠美ちゃんのスカートを汚していた。
「玲雄が……」
瑠美ちゃんが抱き締めていたのは、玲雄くんの左腕だった。
「そんな……」
あまりの衝撃に頭がうまく働かない。玲雄くんは、瑠美ちゃんと逃げたはずなのに……。
「玲雄を守れなかった……」
瑠美ちゃんは、玲雄くんの腕を抱き締めて、また俯いてしまう。
「お前達、無事だったのか」
後ろから声がしたので、顔を上げて振り向くと、スラッとした長身の黒いスーツ姿の男の人が立っていた。彼は、南の火の神殿に召喚された勇者の一人で、朝倉さん。たしか、陰陽師だと言っていた気がする。
「朝倉さん……」
「他の仲間は?」
僕は、朝倉さんの問いに、首を横に振って答えた。
「そうか……。よく頑張ったな」
朝倉さんが僕の頭を撫でてくれた事で、思わず涙が溢れる。
「とにかく船から出よう。そっちのお嬢さんも立てるかい?」
瑠美ちゃんは、朝倉さんの問いかけに全く反応しない。まるで聞こえていないみたいだ。俯いたまま泣き続けている。
「弱ったな……」
朝倉さんは困った表情で、腕を組んで溜め息を吐いた。
「僕が連れて行きます」
瑠美ちゃんの代わりに僕が答える。瑠美ちゃんは僕が守らなきゃいけない。
「分かった。入って来た出入口の周りは敵が溢れてて近付けないから、甲板へ出て海へ飛び込むよ。甲板まで案内するから、付いて来て」
朝倉さんはそう言うと、スーツの内ポケットから折り紙で折られた鶴を取り出した。




