#33
「ハアハア……」
あれから、僕達は振り向かずに走った。船内に侵入した入口までは、そんなに複雑な道のりでは無かったから迷う事も無いし、そう時間はかからずに船から出られるはずだった。
「そんな……」
しかし、現実は甘くはない。五分も走らないうちに、骸骨の群れが目の前に現れた。
瑠美ちゃんは、息を切らせて屈んでいる。玲雄くんも、心が折れた様子だ。
急いでウィンドウを開き、魔力の残量と使える魔法を確認する。残念ながら魔力はあまり回復していない。しかし、火の玉なら一発撃てるだろう。
「僕が魔法を放つから、その隙に走って逃げて。少し戻ったところに、脇道みたいのがあったでしょ?そこから逃げて」
二人にそう言って、骸骨の群れの方へと向き直る。
「先輩、魔力が回復したんですか?」
「火の玉を一発撃てるくらいにはね」
不安そうに尋ねる玲雄くんに、微笑む。
「ダメじゃないですか!あの数ですよ?」
「そうだね。でも、隙ぐらいはできると思うし、僕も撃ったらすぐに逃げるよ。さぁ、急いで!」
玲雄くんと話してるうちに、骸骨の群れが近付いてきたので、二人を急かす。あまり近付かれたら、魔法で隙を作る事も難しくなってしまう。
「いや……。私……」
瑠美ちゃんが、僕の方を見て、震えながら首を横に振っている。
「大丈夫だから。僕もすぐに逃げるから」
「それなら一緒に……」
「それはダメだよ。みんなで走り出したら、あいつら、一斉に追いかけてくるよ」
今、こちらへ迫ってくる歩みが遅いのは、向き合っているからだろう。全員で背を向けて走り出すのは危険だ。隙を作るか、気を引くかしなければ逃げられない。
「でも……」
「今、魔法を使えるのは僕だけなんだから、僕に任せてよ。瑠美ちゃんは、玲雄くんを守ってあげて」
「分かった……。私、彰人くんを信じる!」
そう言って顔を上げた瑠美ちゃんの瞳には、強い光が戻っていた。
「玲雄、行こう!彰人くん、帰ったらデートの続きだからね!」
「先輩、すぐに追いかけて来てくださいね!」
僕は、瑠美ちゃんと玲雄くんに向かって力強く頷く。時間は稼ぐけど、もちろん死ぬつもりはない。
瑠美ちゃんは、玲雄くんの手を引いて走り出した。玲雄くんも分かってくれた様だ。
「喰らえ!」
骸骨の群れに向けて、炎の魔法を放つ。バスケットボールくらいの火の玉が、骸骨達の方へ飛んで行った。当たったかどうかは確認せずに、僕も振り向いて走り出す。




