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#32

「う、うわぁ!」


 玲雄くんが、右の掌を骸骨へ向けて、左手でウィンドウを操作しているみたいだけど、何も起きない。魔法も発動されなかった。魔力切れだ。


「マズイ……」


 僕もウィンドウを操作して、残りの魔力をチェックする。残りは僅かで、小さめの火の玉を一発撃てるかどうかというぐらいだった。魔力は時間が経てば回復するけど、さっき倒した一体との戦闘からそんなに時間が経っていないのに、あれだけの魔法を使ったのだから、魔力切れにならない方がおかしい。


「クソッ」


 毛利さんがタバコを投げ捨て、骸骨達に斬りかかった。光の壁は現れなかったけど、毛利さんの攻撃は、骸骨達が手にしているナイフや剣で弾かれてしまう。


「どうしよう?私も魔力残ってないよ……」


 瑠美ちゃんが青ざめた顔で、そう言った。声も震えている。

 一体でも全員で協力して倒したのに、僕ら三人は魔力切れで戦えない。今は、毛利さん一人が戦っているけど、不利なのは誰の目にも明らかだ。段々と、相手の攻撃を防ぐので精一杯になっている。


「お前ら、逃げろ!」


 毛利さんが、船長の骸骨の三日月みたいな剣を受け止めながら、振り向いて叫んだ。


「いや、でも……」

「ここはオレが何とかする!いいから、早く!そんなに長くは保たない!」


 玲雄くんの言葉を遮って、毛利さんが再び叫ぶ。船長の剣は押し返したみたいだけど、よく見ると着ているジャケットは所々、破れて血が滲んでいた。防ぎ切れなかった攻撃もあるのだろう。


「行こう、瑠美ちゃん、玲雄くん。今の僕らじゃ足手まといだから」


 いくら毛利さんが強くても、パイレーツセブンを三体も相手にするのは無理がある。それは毛利さん自身も分かっているはず。それでも、魔力が切れて戦えない僕らが逃げる時間を稼いでくれようとしているのだ。


「でも……」

「僕らが早く逃げないと、毛利さんも逃げられないから」


 瑠美ちゃんの肩に手を置いて、その瞳を真っ直ぐ見つめる。僕らがいつまでもここから動かなければ、毛利さんの気持ちを無駄にするばかりか、毛利さんが逃げるチャンスも無くなっていく。


「分かった……」


 瑠美ちゃんが頷いてくれたので、視線を玲雄くんへ向けると、玲雄くんも小さく頷いた。唇を噛み締めて、悔しそうにしている。僕だって、同じ気持ちだ。でも、今は仕方がない。


「毛利さん!外で待ってますから!」


 悔しさを飲み込んで、声の限りに叫んだ。


「ああ。後でな」


 毛利さんが、振り向いて微笑むのが見えた。それを見て視界が滲んだが、顔を袖で拭って、強引に視線を元来た方向へと向ける。


「行こう……」


 僕は二人に声をかけ、重たい足で駆け出した。

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