#28
「ここまでは特に何も無かったね」
腹拵えと小休止を終えた俺達は、甲板まで上がって来ていた。真田の言う様に、敵と遭遇するどころか、トラップ等も何も無く、怪しかったのは食堂に用意されていた料理くらいだ。
「アケチ様が、全て倒されてしまったのでしょうか?」
「それなら楽でいいんだけどね」
アレックスの問いに、伊達が苦笑いしながら答える。
「明智が全て始末したなら、連絡くらいはあると思うんだが……」
スマホを確認しても、メッセージは着ていない。
「戻って、下を探すしかないか……」
甲板は前後が少し高くなっていて、階段を昇って移動するようにはなっているが、船室や操舵室の様なものは無かった。唯一の扉は、俺達が昇って来た階段へと続いている。操舵輪は後方の一段高くなった場所に付いていたが、そこにも人影は無い。
「そうだね。マストの上まで登るわけにはいかないしね」
真田はそう言って、マストを見上げながらアメリカンスピリッツの箱を取り出す。
「じゃあ、降りますかね」
伊達は、すでに火の着いたタバコを咥えていた。甲板に出て、すぐに火を着けたやつだ。
俺もビリガーを一本取り出して火を着け、ついでに真田のタバコにも火を着ける。
「誰!?」
突然、シーナの声が響いた。彼女が視線を向けている方向へ、全員が目を向ける。階段のある扉の方だ。俺と真田は、扉へと銃を構える。
「待て待て、俺だよ!撃つなよ!」
声と共に扉から出て来たのは、両手を挙げた明智だった。続いて、ミナも扉から出て来る。
「無事だったのか」
明智とミナの姿を確認して、俺と真田は銃を下ろした。明智も両手を下ろす。
「船に乗り込んだまでは良かったんだけど、全然、敵と遭わないんだよ」
明智は、肩を竦めて苦笑いした。
「ハァ……、お前さ、単独行動した奴は死ぬっていうホラー映画のセオリー、知らないわけじゃないだろ?敵のテリトリーへ単独で乗り込むなよ……」
溜め息を吐きながらドライシガーの紫煙を吐き出し、明智にツッコミを入れる。伊達も真田も呆れ顔で明智を見ているが、明智本人はあまり堪えていない様だ。
「すまんすまん」
明智は一応の謝罪を口にすると、懐から葉巻を取り出して、ヘッドを歯で噛み千切り、ペッと足元に吐き出した。それから葉巻を咥え直し、掌に発生させた魔法の炎でフットを炙って着火する。
「ところで、エミリーちゃんとロッキーは、一緒じゃないの?」
葉巻の紫煙を一息吐いてから俺達を見回し、明智は首を傾げた。




